交通事故防止 ユニーク資材で貢献 倉敷の松井さん、アイデア次々

 児島署で「シルバーセーフティーサポーター」を20年以上務める松井和子さん(70)=倉敷市=が、ユニークな交通安全の啓発資材を次々と考案している。お年寄りの生活習慣に着目し、薬袋風の入れ物に標語をちりばめるなど、グッズとして使いやすい工夫も。「事故防止にアイデアで貢献したい」。願いを込める。

 松井さんは地元学区の交通安全母の会副会長だった2000年、当時の同署交通課長に熱心さを買われサポーターとしてスカウトされた。当初は児島交通安全協会の広報紙作りを担当。「一度読んだ後も手元に置いてもらえるように」と、折り畳むとペン立てや小物入れなどとして使える形で配った。「警察官は取り締まりなどで、私たちはソフトなアプローチで啓発に取り組もうと考えた」と振り返る。

 今では交通安全の啓発資材作りにも活動が広がった。啓発資材としてはティッシュやしおりなどが一般的だが、昨夏に考案した「薬袋」は、高齢者の日常的な投薬習慣に着目。表面には架空の新薬「愛コンタクトE PLUS」の情報を掲載し、事故抑止に大切な歩行者とドライバーが視線を交わすことを目を引く形で訴えた。

 新薬に入っている成分にも「ブジワタレール(無事渡れる)D」「マナーアップエキス」といった標語をふんだんに使い“効能”を高めた。袋は夜光たすきなどを入れて免許返納者に手渡している。

 1月には、正月遊びにちなんだ「交通事故防止サイコロ」を来庁者に配った。「手先を使うことでお年寄りの運転機能の維持につながればと考えた」という。交通安全の用語などがデザインされた面が15もあり、立方体を完成させるのは至難の業だ。

 取り組みの背景には、約3年にも及ぶ新型コロナウイルス禍がある。月数回のペースで行ってきた集会での講話がままならず、思いを伝える手法を試行錯誤してきた。

 今でも交通事故が多発した「重点地区」の高齢者宅への戸別訪問を続ける松井さん。「一人一人の啓発には時間がかかるが、少しでも関心を持ってもらえるようアイデアを出していきたい」

 心の中にじわり、じわりと。地域の安全を支える「発明」への意欲は尽きない。

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