あなたの街の男女格差は?「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」 政治、行政、教育、経済の4分野で課題を分析

国際女性デーのシンボル、ミモザの花

 3月8日の国際女性デーに合わせ、上智大の三浦まり教授らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」が2023年の「ジェンダー・ギャップ指数」を試算し、公表した。世界各国の男女間格差を測る“本家”のジェンダー・ギャップ指数とほぼ同様の手法で統計処理したもので、都道府県での男女平等の度合いをデータで映し出している。「政治」、「行政」、「教育」、「経済」の4分野ごとに、背景や課題を掘り下げた。(共同通信都道府県版ジェンダー・ギャップ指数取材班)
 指数公表は昨年に続き2回目。算定には、内閣府などの統計から4分野の計30指標を選んだ。指標ごとに男性1人に対し女性が何人いるかを見るため「女性の人数÷男性の人数」を計算。1に近いほど男女平等を示し、格差が大きいほど0に近づく。1を超える場合は1としている。

 都道府県ジェンダー・ギャップ指数のサイトはhttps://digital.kyodonews.jp/gender2023

 ▽首長の男女比、均衡まではほど遠く
 政治分野の指数は47都道府県の平均値が0・161で、平等を示す「1」から大きく離れている。行政、教育、経済を含めた4分野の中で最も低い水準にある。4月には統一地方選があり、今後の変化が注目される。
 政治分野の6指標のうち、首長に関する数値は特に厳しい。市区町村長の男女比は、トップの栃木でも0・136に過ぎない。他に0・1を超えたのは東京、千葉だけだ。女性ゼロは23県に上り、昨年より1県増えた。
 歴代知事の在職年数の男女比は、そもそも女性知事が在任したのは7都道府県に限られており、指標に「0」が並ぶ。
 市区町村議会の男女比は、41都道府県で数値が上がった。女性地方議員は少ないながら徐々に増えているようだ。女性議員が1人もいない女性ゼロ議会の指数は25道県で改善。全ての市区町村で解消されたのは6府県となり、昨年の3府県から倍増した。
 政治分野全体の1位は2年連続で東京。指数は0・310と高くはないが、小池百合子知事が在任を重ねたほか、杉並、品川で女性区長が新たに誕生し、数値を上げた。
 鳥取は昨年2月に県内初の女性首長が就任し、昨年の38位から23位へ順位を押し上げた。昨年最下位だった島根は女性ゼロ議会を減らしたことで、34位へと伸ばした。
 昨年夏の参院選も反映された。三重、岩手、広島は女性新人が当選し、衆参両院選挙区議員の男女比の順位を2桁上昇させた。一方で女性現職が落選した山梨は下落。この指標は定数が少ないほど上下しやすい。
 衆院は「1票の格差」を是正する10増10減が次の解散・総選挙から適用される。時期は見通せていないが、新しい区割りで女性候補が選ばれるか否かは、政治分野の指数に大きく影響しそうだ。

 ▽男性の育休取得増、副知事に女性任命で順位上昇
 行政分野では、昨年43位だった秋田が28位になるなど、順位の急上昇が見られた。男性で育休を取得した都道府県職員の増加や、女性副知事の任命などが要因だ。鳥取、徳島、滋賀のトップ3に変動はなかった。
 秋田の15ランク上昇は全国最大。警察などを含む男性県職員の育休取得率が2021年度は42・3%で、20年度の11・5%から大きく伸びたのが影響した。人事課長が出産を控える男性職員に直接連絡する取り組みを開始。同僚らに気兼ねせず育休を取るよう働きかけたのが奏功した。
 下から2番目の46位から38位になった鹿児島も男性県職員の育休が増えた。昨年10月には、育休経験者や取得中の男性職員によるオンライン座談会を初めて実施し、管理職ら約300人が視聴。育休への理解を促す狙いがあり「さらなる改善が期待できる」と話す。
 26位から14位に改善した富山は、民間出身で20年に就任した新田八朗知事が女性副知事を任命した影響が大きい。部局長への女性登用も進めており、人事担当者は「目立つ地位に女性がいると職員の励みになる」と指摘した。
 副知事の男女比は、今回の分析で追加された新指標。増やすのに時間がかかる女性管理職とは異なり、知事の意向次第で女性比率を高められる特徴がある。
 12位から7位へアップした高知は、県職員採用の指標が最大値の1。大卒程度試験を経て21年度に採用された女性が全国で唯一、男性を上回った。募集のパンフレットやPR動画に登場する管理職らをほぼ男女同数にして、働きやすさを強調した。
 岩手は県が設置する各種審議会の女性委員割合が39・9%になった。目標の40%に迫り、29位から21位に上昇。候補者リストを毎年更新し、各部署への働きかけを続けた効果が出たようだ。

 ▽女子進学率、30%台が8県 比重変更で高知県がトップに
 教育分野は男女別の大学進学率(四年制)や、校長ら管理職の男女比などにより「教育を受ける側」と「教育を提供する側」の双方から分析した。子ども側の指標である進学率の比重を高めて指数を算出したため、女子進学率が男子より高い高知が昨年4位からトップに躍り出た。進学率の全国平均は、女子47・7%、男子52・8%と開きがあり、女子が30%台にとどまるのは8県だった。
 高知は「教育委員会事務局の管理職」の男女比で全国2位となるなど7項目のうち六つが10位以内。高知県教委は「育児支援の視点だけではなく、時間外勤務を減らすなど働き方全体の改革を進めている」と説明した。
 女子の進学率が30%台にとどまる8県は岩手、秋田、福島、山口、佐賀、大分、宮崎、鹿児島だが、男子は全都道府県で40%を超えた。女子の最高値は東京の75・4%で、最も低い秋田の37・0%と比べると2・04倍。男子で最高の東京が最下位岩手の1・89倍だったため、女子の方が地域格差が大きい。
 また、女子が50%を超えたのは大都市圏がほとんど。地方は平均所得が低く、大学が少ないことが進学率に影響したとみられる。
 同じ都道府県内で女子が男子を上回ったのは鳥取、徳島、高知の3県のみ。山梨は男子74・3%、女子58・8%でそれぞれ全国平均より高いが、格差は1・26倍となって全国最大だった。
 政府は、特に理工系学部への女子の進学を促したいとしており、こうした分野で女子枠を設ける大学への財政支援を検討している。
 校長の女性比率では、中学と高校が小学校より低い結果が出た。小学校の全国トップは石川で、男性と同等以上の割合であることを示す指数「1」。高校の女性比率は1位の神奈川でも指数「0・203」だった。

 ▽沖縄が2年連続トップ 家庭の役割で性別格差課題
 経済分野の分析で男女格差が最も小さかったのは沖縄で、2年連続トップとなった。2位に徳島、3位には鳥取が入った。沖縄は「社長数の男女比」と非正規など「フルタイム以外の仕事に従事する男女間の賃金格差」の指標で最も差が小さかった。家庭での役割を巡る性別格差の解消が重要な課題になっていることも示された。
 ただ、賃金の男女格差が小さい順に並べると、沖縄など上位は地域別最低賃金の額が低い傾向があった。女性が収入の高い男性と同等に稼げているわけではなく、男性の賃金が相対的に低いため、女性との格差が小さい可能性がある。
 44位の福井は「企業や法人の役員・管理職の男女比」や「農協役員の男女比」で下位に沈んだ。福井県立大の塚本利幸教授(社会学)は「共働き率が高く、女性が家事に育児、介護も担って多重負担になりやすい中、仕事のキャリアアップへの意識を維持しにくい」との見方を示した。
 社長の男女比は、沖縄のような観光や飲食などサービス業が盛んな地域で差が小さい傾向が見て取れた。調査した東京商工リサーチは「新型コロナウイルス禍で金融機関が小口融資に積極的になり、元手が少ない女性も起業しやすかったのでは」と指摘した。
 企業や法人の役員・管理職の男女比は徳島が最も差が小さかった。地元経済同友会の関係者は「阿波女活躍サミットの開催など官民で機運を醸成している効果が出ている」と述べた。「フルタイムの仕事に従事する男女間の賃金格差」は鳥取が最小だった。
 「共働き家庭の家事・育児などに使用する時間」の男女差は、最も小さかった新潟を含む47都道府県で男性が担う時間が女性の1~2割台にとどまった。(取材・執筆は池田知世、石沢芙蓉子、川南有希、徳光まり、若林美幸)

 「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」については、音声でも記者が解説しています。以下のリンクの共同通信Podcast番組「きくリポ」で、ぜひお聞きください。
https://omny.fm/shows/news-2/09

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