海上自衛隊の最新鋭たいげい型潜水艦2番艦「はくげい」就役――呉基地に配備

By Kosuke Takahashi

3月20日に就役した最新鋭たいげい型潜水艦2番艦「はくげい」(写真:海上自衛隊)

海上自衛隊の最新鋭潜水艦「はくげい」が3月20日、就役した。兵庫県神戸市の川崎重工業神戸工場で同日、引き渡し式と自衛艦旗授与式があった。同工場で建造された潜水艦ははくげいで戦後30隻目。

はくげいは、日本の主力潜水艦そうりゅう型の後継となるたいげい型潜水艦の2番艦となる。広島の呉基地第1潜水隊群第1潜水隊に配備される。

たいげい型は、これまでの海自潜水艦の「しお(潮)」「りゅう(龍)」に続く「げい(鯨)」の艦名を持つシリーズとなっている。

はくげいは、全長84メートルと全幅9.1メートルは、そうりゅう型と同じだが、深さは10.4メートルとなり、そうりゅう型より0.1メートル大きい。これは海自最大の潜水艦となる。基準排水量も3000トンとなり、そうりゅう型より50トン多い。建造費は717億円。乗員は約70人。軸出力は6000馬力。水中速力は約20ノット。

現在、昨年10月に進水したたいげい型3番艦じんげいが来年3月の就役に向け、艤装中だ。2020年度計画艦の4番艦からは大型化したエンジンと関連装置を有する高出力の新機関が搭載される見込みとなっている。

●たいげい、試験潜水艦に種別変更へ

防衛省・海自は昨年3月のたいげい型1番艦たいげい就役によって、2010年12月の防衛大綱(22大綱)で初めて定められた潜水艦22隻体制(=そうりゅう型12隻+おやしお型9隻+たいげい型1隻)を完成した。はくげいの就役でたいげいの試験潜水艦への種別変更が近く見込まれる。これまで新装備の試験は作戦用の潜水艦が持ち回りで実施してきたが、今後はたいげいが試験潜水艦となり、将来型のソーナー装置や雑音低減の最新の水中発射管など様々な試験を実施し、日本の潜水艦の技術研究開発に向けた「尖兵」となる。その分、他の潜水艦は本来任務に集中でき、稼働率が上がる。

なお、呉基地では1998年に就役し、現役最年長だったおやしお型ネームシップのおやしおが3月17日に除籍したばかりだ。おやしおは2015年3月に練習潜水艦に種別変更されていた。

就役した最新鋭潜水艦はくげい(2021年10月の命名・進水式時に高橋浩祐撮影)

●世界唯一のリチウムイオン電池搭載潜水艦

航続能力や潜航能力に優れた原子力潜水艦を持たない日本にとって、いかにして通常動力型潜水艦の能力を向上させるかは大きな課題だ。日本はそうりゅう型の11、12番艦から従来の鉛電池に代わってリチウムイオン電池の搭載を始めたが、たいげい型は初めからリチウムイオン電池搭載を前提に設計された潜水艦だ。リチウムイオン電池の蓄電量は鉛電池の2倍以上といわれ、水中航行能力が高くなり、潜航時間も大幅に延ばすことができる。韓国もリチウムイオン電池搭載の潜水艦を開発建造中だが、今のところ、日本が世界初で唯一のリチウムイオン電池搭載潜水艦の保有国となっている。原潜を増強する中国も、通常動力型潜水艦へのリチウムイオン電池搭載を目指している。

●次世代潜水艦

日本で潜水艦を建造できるのは三菱重工業と川崎重工業の2社だけとなっている。両社が神戸の造船所で隔年で建造し、日本全体では毎年1隻のペースで新たな潜水艦がデビューしている。これまで海自が約10隻の同型艦を建造している事実を踏まえれば、次世代潜水艦も今後10年程度での就役が見込まれる。

日本を取り巻く安全保障環境を見渡せば、中国とロシアが原潜戦力を増強し、北朝鮮も原潜の保有を目指している。日本列島を射程に収める1500キロ以上の巡航ミサイルを搭載する新型潜水艦を実戦配備しようとしている。台湾有事も現実味を増す中、海自の潜水艦が担う作戦任務と海域は拡大している。

昨年12月に策定された防衛力整備計画では、「水中優勢獲得のための能力強化として、潜水艦(SS)に垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載し、スタンド・オフ・ミサイルを搭載可能とする垂直発射型ミサイル搭載潜水艦の取得を目指し開発する」と明記された。このほか、探知能力向上のための最新ソナーや各種UUV(水中無人機)、そして、これらすべてを搭載するための船体の大型化が避けられない。その分、さらなる電力供給能力の確保がますます重要になるだろう。

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