初陣で2台とも完走果たしたニッサンZ GT4。S耐第1戦で浮き彫りになった課題と今後の伸び代

 3月19日に三重県の鈴鹿サーキットで行われたENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Powered by Hankook第1戦『SUZUKA S耐』。GT4規定マシン11台がエントリーしたST-Zクラスに今戦からデビューを果たしたニッサンZ GT4勢は、26号車raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4がクラス2位、20号車ナニワ電装TEAM IMPUL Zがクラス5位でフィニッシュし、新型Z GT4の初陣で2台とも完走を果たした。

 ライバル車両もいるなかでの実戦をひとつ終えたことで、車両について現状の課題と、今後への伸び代がみえたようだ。

■エンジンや直線スピードには満足も「コーナリングは少し厳しい」と富田竜一郎

 ST-Zクラス3番手からスタートした26号車raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4。決勝では反則スタートがあり、序盤からドライブスルーペナルティを受けて後退してしまったが、スタートドライバーの富田竜一郎から、Aドライバーの大塚隆一郎、後半には名取鉄平、篠原拓朗と着実に繋いでいき、ST-Zの2番手に浮上。残り50分を切ったところで他クラスで大きなクラッシュがあった影響で赤旗中断となり、そのままレースが終了したため、ニューマシンのデビュー戦で見事クラス表彰台を獲得した。

 しかし、内容面でみていくと、課題も露呈したレースウイークになった模様だ。26号車のBドライバーとしてチームを牽引する富田は、こう語る。

「Z GT4は良い部分がすごく分かりやすいのですが、逆にウイークポイントもすごく分かりやすいです。エンジンのフィーリングやトルク特性、ストレートスピードなどはすごく良いのですが、まだ発展途上のマシンになるので、コーナリング面では少し厳しい部分があります」

「今の状態としてはストレートが速いクルマだと思っています。富士やもてぎはすごく速いですけど、鈴鹿やオートポリスでどうなるか? という部分は、これから僕たちで少し煮詰めていかないといけないかなと思います」

「ドライブスルーペナルティを受けたので後方に下がってしまいましたけど、レースペース的には2位をキープできるくらいのスピードはありました。逆に『ここからどうしようか?』というのが、ちょっと悩みですね」

 今季からTEAM ZEROONEに加入した篠原拓朗にとってニッサンZ GT4は初めての経験となるが、「ST-Zクラスは激戦区なので、難しいですけど、楽しいですね」と笑顔をみせていた。

 ただ、ニッサンZ GT4の現場での仕上がりについては「正直、まだまだ厳しいなと感じる部分もあります。そのなかで運もありながら2位で終えられたので、そういった意味でも良いシーズンのスタートを切ることができました。ここからしっかりと進化を続け、シーズン中に優勝するなど、良い流れで進んでいけたらいいなと思います」と、次戦にむけての改善に取り組んでいきたいと語っていた。

2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 ST-Zの隊列で争うraffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4(大塚隆一郎/富田竜一郎/名取鉄平/篠原拓朗)
2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4(大塚隆一郎/富田竜一郎/名取鉄平/篠原拓朗)

■一発の速さと燃費を課題に挙げる星野一樹。レースペースでは「戦える」

 一方、予選7番手からレースに臨んだ20号車ナニワ電装TEAM IMPUL Zは、第1スティントから平峰一貴が積極的に前を走るマシンの隙を突いてポジションを上げていった。レース中盤も安定したペースで周回を重ね、表彰台も狙えそうな雰囲気があったが、レース終盤に起きたクラッシュの影響で赤旗が出され、そのままレース終了。最終的に20号車はST-Zクラス5位で開幕戦を終えた。

「スーパー耐久のレースはいろいろなハプニングがあり、その部分をくぐり抜けていかないといけません。コース上での速さというよりも、いかに戦略でうまくタイミングを掴めるかなので……、本当に課題だらけですね」と語るのは、TEAM IMPULの星野一樹だ。今季のスーパー耐久には自身もDドライバーとして参戦する一方、スーパーGTや全日本スーパーフォーミュラ選手権と同様に現場での陣頭指揮もとっている。

 開幕戦でドライブを担当する機会がなかった星野だが、レースを客観的に見て、ニッサンZ GT4の良かった要素や改善点などを分析できている様子だった。

「コース上ではすごく速かったので、ペースでは負けていなかったと思います。まずは初戦をしっかりと完走できて良かったと思います」

「一発の速さに関しては、けっこう厳しいなと感じています。ですが、うれしいことを言えば、レースペースではもっと負けているかもしれないと思っていたので、そういった部分での“戦える”という実感は、この1レースを戦ってみて掴むことができました」

2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 BRP★SUNRISE-Blvd718GT4RS/ナニワ電装TEAM IMPUL Z/SUN’S TECHNO AudiR8LMS GT4

 さらに星野は、ライバルとの“燃費差”を開幕戦で痛感していたようだ。

「あとは燃費ですね。ポルシェ勢が(僕たちでは)あり得ないタイミングでピットに入ったので『あれで(燃料が)持つのかな?』と思ったのですが、結局持たせることができていました」

「特に19号車(BRP★SUNRISE-Blvd718GT4RS)は、最終スティントがすごく長かったはずなのですが、あれでいけてしまうということは、おそらく第2戦の富士SUPER TEC 24時間レースでは、もっと(僕たちは)厳しくなると思っています。そういった部分については、ポルシェは一歩二歩進んでいる感じがします。もう少し燃費を良くしないと厳しいですね」

 デビュー戦でいろいろと感じた部分はあるようだが、Z GT4はでき上がったばかりで発展途上にあるクルマということを加味すると、星野も前向きに考えている様子。「伸び代はたくさんあるので、次戦もがんばります!」と意気込んでいた。

 また、この20号車にBドライバーとして参加している2022年スーパーGT GT500王者である平峰は、ニッサンZ GT4のペースの良さを感じつつも、改善点は多いと語った。

「正直、まだやるべきことは多いと思っています。コース上でのパフォーマンスが悪いわけでないですが、やはりハンコックタイヤの特性があるので、タイヤに見合ったセットなどを含め、いろいろと見直さないといけない部分があります」

「このクルマでのレースは今回が初めてでしたが、それでも走り出しから良いクルマだったと思いました。ここからの伸び代はいっぱいあると思うので、そういった部分を自分たちでしっかりと見直していきたいと思います」

 ライバルとのパフォーマンス差に関しては性能調整などが影響している部分もあるため、実際のところは何とも言えないが、いずれにしてもニッサンZ GT4はでき上がったばかりのマシンということで、セットアップの熟成などが進めば、ST-Zでも一目置かれる存在になっていきそうだ。

2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 大木一輝/平峰一貴/田中優暉(ナニワ電装TEAM IMPUL Z)

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