再審制度改正 訴え 「大崎事件」弁護士と冤罪被害者 長崎でシンポジウム

再審制度の問題点について話す鴨志田弁護士(左)と西山さん=長崎市桜町、県勤労福祉会館

 県弁護士会(濵口純吾会長)などは20日、再審制度について考えるシンポジウムを長崎市内で開いた。第4次再審請求が行われている「大崎事件」の弁護団事務局長・鴨志田祐美弁護士と、冤罪(えんざい)被害者の西山美香さんが登壇。検察側の抗告により審理が長期化するなど現状の問題点を挙げ、再審制度改正を訴えた。

 シンポジウムの開始直前、1966年の静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審開始決定に対し、検察側が特別抗告を断念したとの一報が飛び込んだ。鴨志田弁護士と西山さんは袴田さんの姉ひで子さんに電話で祝福。ひで子さんは「すごくうれしい。絶対に勝つ」と話したという。鴨志田弁護士は「感激しているが、喜んではいけない。袴田さんの失った歳月はもう返ってこない」と語った。
 1979年に鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかった「大崎事件」は再審開始決定が出されたこともあったが、検察側の抗告などで審理が長期化している。鴨志田弁護士は冤罪事件が起きた背景として▽捜査機関の決めつけ▽不適切な取り調べ▽弁護活動の誤り-などを列挙。戦前からほとんど法改正がなされず、他国と比べ法整備が遅れている現状を問題視した。
 西山さんは滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年にあった患者死亡を巡り再審無罪が確定。当時の捜査について、最初は暴力的な取り調べを受けたが突然優しくなり「私の気持ちを理解してくれると勘違いした」ことで虚偽の自白を誘導されたという。
 西山さんは「袴田事件」の抗告断念については「諦めずいろんな人が抗告するなと発信したから。(制度改正には)市民の力が必要だ」と語った。

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