佐賀バルーナーズ、虎視眈々と狙う最高のエンディング

B2の首位争いで3月始めまで一歩先行してきた佐賀バルーナーズが、ややペースダウンしている。1月27日・28日の越谷アルファーズとのアウェイゲームから、3月4日・5日にホームのSAGAブラザで戦ったライジングゼファー福岡戦までは11連勝。しかし翌週、同じくホームで行われた西宮ストークス戦、さらにその翌週千葉に遠征してのアルティーリ千葉戦で4連敗を喫した。

この結果、3月20日時点で佐賀は通算成績がA千葉と並ぶ38勝11敗(勝率.776)ながら、直接対決の結果によりB2全体の首位の座をA千葉に明け渡すこととなった。

4連敗を喫した佐賀バル―ナーズだが、自信を失う理由はどこにもなさそうだ(写真/©B.LEAGUE)

西地区では佐賀の首位は変わらない。しかしB2全体の上位争いは3ゲーム差の中に両チームと越谷アルファーズ(東地区2位、36勝13敗、勝率.735)長崎ヴェルカ(西地区2位、35勝14敗、勝率.714)を含む”4強“がひしめく混戦。王座獲得もB1昇格も、どのチームにもイーブンなチャンスがあるように思える。

そんな中で、A千葉との首位攻防戦に連敗を喫した佐賀だが、戦いぶりを見る限り、悲観するべき理由はあまり感じられなかった。ここは我慢の時期であり、プレーオフでのジャンプに向け一旦しゃがみこんで準備しているような状態と捉えられそうだ。

首位攻防戦に見るポジティブ要素

A千葉との2試合は、GAME1が72-67、GAME2が82-80という最終スコア。どちらも佐賀は、前半から中盤に一時優位な形勢を作り上げたが、終盤にA千葉が流れをつかんで逆転勝ちという展開だった。

見応えのある試合になることが期待できた両日は、合わせて6000人を越えるファンが来場。連日第4Q残り1分を切ってから1点差、あるいは同点という局面がある大接戦で、両チームが戦った8つのクォーターのうち、GAME2の決勝弾となったレオ・ライオンズのレイアップを含め、A千葉がクォーター終了間際のブザービーターを3度成功させるというエキサイティングなゲームに会場は大いに沸いた。相当部分、A千葉にホームコート・アドバンテージも働いていたことだろう。それらのどれか1本、特にGAME1の第1Qにブランドン・アシュリーが成功させたハーフコート・ショットだけでも外れていたら、結果は真逆だった可能性さえある。

GAME1後の会見で、宮永雄太HCは、「全体的に、我々が準備していたディフェンスは遂行できたと思います。ただ、細かいところのローテーションやリバウンドは改善できる」と話していた。

アルティーリ千葉戦GAME2後の会見での宮永雄太HC(写真/©B.LEAGUE)

このコメントはGAME1だけではなく、2試合に共通して適用できそうな内容だ。A千葉はこの対戦前の時点で平均得点が87.5(リーグ2位)だったが、佐賀は平均77.0と約10ポイント低いレベルに抑えることができた。一方ローテーションに関しては、A千葉の岡田優介や大塚裕土らショットメイカーを追いきれなかったこと、杉本 慶や大崎裕太らに一瞬の隙を突かれてタイムリーなショットを決められたことを、宮永HCは言葉にしているものと思われる。

リバウンドを見ると、佐賀はGAME1で31-43、GAME2でも31-40と連日上回られていた。これも宮永HCの言葉どおり、この修正が効かなかったことが連敗につながったことがうかがえる。

この部分は連動する結果として、特にGAME2でペイント内での得点差(24-44)、セカンドチャンスでの得点差(11-15)につながった。「単純にセカンドチャンスでもったいないのを拾われたのと、ピックアンドロールの後の処理が大きな原因だと思います。我々がコントロールできる部分。特にフリースロー後のプットバックとか、2本くらいあったか…。ああいったところはもったいなかったので、まだまだ修正できると思います」と宮永HCはGAME2を終えた後に分析を聞かせてくれた。

ただ、首位攻防戦での連敗にも宮永HCは前向きな姿勢を崩していない。GAME2に敗れた後、会見で最初に出てきたのも「昨日に引き続きプランに対して選手たちがトライしてくれたので、すごく良い試合ができた」という言葉だった。

「最後の勝ち方はまだまだ学べるところがありましたし、自分たちがコントロールすれば勝ち切れたのではないかというシーンも多々ありました。そのようなところは一つ学びとして、今後もし(A千葉と)プレーオフで当たる機会があれば、自分たちのプレーで勝つことができるのではないかというビジョンは持てました」

チーム状況を考えると、ここにきての4連敗にも関わらずプレーオフに向け強気な姿勢を保てる理由が見えてくる。

自信の源の一つは、レイナルド・ガルシア(身長187cmのキューバ人ポイントガード)とミカイル・マッキントッシュ(身長201cmのスモールフォワード)という主力外国籍プレーヤー二人を故障で欠いた状態で、A千葉に対してアウェイでここまでの戦いができたということだ。プレーオフ進出も決まっている中で、宮永HCは両者を欠く終盤戦を、チームの成長を促す前向きな機会と捉えているようだ。

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ガルシアは2月4日のライジングゼファー福岡戦で左足関節を捻挫。3月17日にインジュアリーリスト登録を外れ、遠征にも帯同していたが、A千葉戦出場には至らなかった。

レイナルド・ガルシアは終盤戦からプレーオフにかけてインパクトの大きな活躍を期待できるタレントだ(写真/©B.LEAGUE)

ガルシアは今シーズン平均20.8得点、6.3リバウンド、5.5アシスト、2.5スティールのアベレージ。欠場続きで試合数が規定未満だが、平均得点とアシストはリーグ3位相当、スティールはトップ相当の数字だ。

受傷の前週、越谷に連勝を収めた2試合では平均22.5得点、フィールドゴール成功率51.5%(3P成功率は33.3%)、5.0リバウンド、6.5アシスト、3.0スティールを記録し、一人で越谷に16個のファウルを犯させた。仮にA千葉戦で出場できていれば、オフェンスのファーストオプションとして相手を相当苦しめたはずだ。

マッキントッシュは、2月25日に右足部舟状骨疲労骨折による離脱が発表され、27日からインジュリーリスト入りしている。トロント・ラプターズのGリーグチーム、ラプターズ905に所属した当時は地元ファンの人気者だったプレーヤーで、今シーズン平均15.9得点、5.3リバウンド、1.4アシストのアベレージだ。合わせて35得点、10リバウンド、8アシストを平均で叩き出していた両者を欠く中、バルーナーズはプレーオフの時期にフルロスターで戦える望みを持ちつつ、現状のロスターでできることを試し、個々のステップアップを期待している状況なのだ。

ミカイル・マッキントッシュに関しては復帰時期が未定のまま。状態が気になるところだ(写真/©B.LEAGUE)

宮永HCは両者の離脱前の越谷戦の頃にはスタイルが見えていたとも話していた。二人の復帰時点で、その頃よりもレベルアップしたチームになれることが重要であり、現在は勝敗の結果以上にその兆候が見られたことに意義を感じているのかもしれない。

その意味で、2月11日の青森ワッツ戦からチームに加わった身長198cmのフォワード、テレンス・キングが17.3得点、5.7リバウンドと力を発揮して戦力をつないでいることは大きい。また身長196cmのフォワード、西川貴之が、同じ青森戦以降12試合中10試合で20得点越え(うち2試合は30得点を越え)と、目に見えるステップアップぶりを示している。西川の通年アベレージは13.7得点だが、その間に限ると22.1得点とリーグ全体でもトップレベル。A千葉戦もGAME1こそフィールドゴール9本中成功1のみの2得点に封じられたが、翌日には終盤同点に追いつくクラッチジャンパーを含む32得点を奪って意地を見せた。

その西川が苦しんだA千葉とのGAME1で、地元佐賀北高から白鷗大を経てバルーナーズ入りした若手ポイントガードの角田太輝が活躍したのも好材料だ。角田はこの試合で、シーズンハイの26得点(キャリアハイにもあと1得点で並ぶところだった)と奮起した。

終盤戦は、角田太輝のさらなる奮起にも注目だ(写真/©B.LEAGUE)

佐賀はA千葉のディフェンスに対して、西川にしても角田にしても、小気味良い1対1の駆け引きからプルアップ・ジャンプショットを積極的に放ってきていた。宮永HCによれば、「基本的にはショットセレクションは選手に任せているので、一番打ちやすいポジションであればどんどん打っていけというスタイルです」と話す。

ペイントアタックからキックアウトしてフィニッシュというパターン、サイドチェンジを多くする中でキックアウトという、キャッチ&シュートを生み出す状況を増やす考えはあるという。しかし、ボールを持った状態での1対1にも長けた個の力をいかんなく発揮させるのも、ビッグゲームでビッグプレーを自信満々でやり切るマインドセットを導くプロセスかもしれない。

千葉ポートアリーナでの激闘2連戦を振り返る宮永HCの会見では、「最後まで戦ってくれた選手たちは成長をしっかり見せてくれたと思います」とチームに対する手応えも語られた。B1の舞台へステップアップする"最高"の姿を披露しようという意欲を込めたシーズンスローガン、「SAGASAIKO」が実を結ぶか。勝負のときが近づいている。

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