無人月着陸船の月周回軌道投入に成功! 民間月探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1

【▲ 月面に着陸したispaceのランダーの想像図(Credit: ispace)】

【2023年3月22日10時58分】株式会社ispaceは2023年3月21日、同社の月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1について、ランダー(月着陸船)の月周回軌道への投入に成功したと発表しました。月周回軌道で予定されている全ての軌道制御マヌーバを完了した後、ispaceはいよいよランダーの月面着陸に挑むことになります。

【特集】月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1

民間初の月面着陸を目指すHAKUTO-Rミッション1のランダーは、2022年12月11日16時38分(日本時間・以下同様)に米国フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地からスペースXの「ファルコン9」ロケットで打ち上げられました。同ミッションは「ランダーの設計及び技術の検証」と「月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証及び強化」を目的としており、ランダーは月の「氷の海」の南東に位置するアトラス・クレーターに着陸する予定です。

【▲ ispace「HAKUTO-R」ミッション1のマイルストーンを示した図(Credit: ispace)】

ispaceによると、ミッション1ランダーによる月周回軌道投入マヌーバは2023年3月21日10時24分に開始。数分間の主エンジン噴射は問題なく完了し、前述の通りランダーは月周回軌道に投入されました。HAKUTO-Rミッション1では打ち上げから月面着陸までの各段階に応じて10のマイルストーンが設定されていますが、今回のマヌーバ完了によってSuccess 7「月重力圏への到達/月周回軌道への到達」までが完了したことになります。月周回軌道投入に先立つ2023年3月18日には、Success 6「LOI(※)前の全ての深宇宙軌道制御マヌーバの完了」が完了していました。

今後は月周回軌道上で予定されている全ての軌道制御マヌーバが完了し、着陸シーケンスを開始する準備が整っていることが確認された後、2023年4月下旬にミッション1ランダーによる月面着陸が行われる予定です。

※…LOI:Lunar Orbital Insertion=月周回軌道投入の略。

【▲ 東京・日本橋のミッションコントロールセンターで月周回軌道投入マヌーバ完了を喜ぶispaceのエンジニアたち(Credit: ispace)】

また、ispaceは今後実施を予定しているミッション2(2024年)およびミッション3(2025年)のランダー開発や顧客との契約を進めています。ミッション3では月の裏側にある着陸地点との通信を行うために2機の中継衛星も月周回軌道に投入することを同社は計画しており、ミッション1で得られたデータやノウハウがミッション3でも活用されるということです。

関連:ispace、東証グロース市場に上場 ミッション1のランダーは順調に月へ飛行中(2023年3月16日)

なお、HAKUTO-Rミッション1ランダーに搭載されているペイロードは以下の通りです。

・日本特殊陶業株式会社(HAKUTO-Rコーポレートパートナー)の固体電池
・アラブ首長国連邦(UAE)ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC)の月面探査車「Rashid(ラシード)」
・株式会社タカラトミー等が開発した変形型の月面探査ロボット「SORA-Q(LEV-2)」
・カナダのMCSS社が開発した人工知能(AI)を用いたフライトコンピューター
・カナダのCanadensys社のカメラ
・HAKUTOのクラウドファンディング支援者の名前を刻印したパネル
・サカナクションの「SORATO」(HAKUTO※応援歌)の楽曲音源を収録したミュージックディスク

※…HAKUTOは民間初の月面無人探査を競うコンテスト「Google Lunar XPRIZE」に日本から参加したチームで、HAKUTO-Rの前身にあたる。Google Lunar XPRIZEは勝者がないまま2018年に終了。

【▲ 変形型月面ロボット「SORA-Q(LEV-2)」。左は変形前、右は変形後の様子(Credit: タカラトミー)】

【▲ UAEの月面探査車「Rashid」の想像図(Credit: MBRSC)】

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  • Image Credit: ispace
  • ispace \- ispace、ミッション1マイルストーンのSuccess7を完了 月着陸船が月重力圏/月周回軌道へ到達
  • ispace \- ispace、ミッション1マイルストーンのSuccess6を完了 月周回軌道投入前の全ての深宇宙軌道制御マヌーバを完了

文/sorae編集部

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