金銭の詐欺か、嫌がらせか 巧妙な「不審文書」が相次ぐ

「犯罪データ」の購入を持ちかけ

 2022年末から、FAXや文書などを企業に送り付けるケースが相次いでいる。警察や弁護士会では注意を呼び掛けている。
 2022年12月頃から、都内の郵便局の消印がある差出人不明の文書が都内や他県の企業に届いている。文書には「20年以上の経験豊かな経済記者として、あなたの犯罪データを調査しました。これらのデータは(保有する株式の)株価、家族、社会的地位を含むあなたの名声に影響を及ぼします」などと記載。
 さらに、「手元にある資料をBitcoinで販売します。Bitcoinを以下の口座に送金してください。購入を望まないなら、私はこれらの違法行為を公表します」と書かれ、二次元コードを添付している。
 ただ、二次元コードは有効ではなかった。だが、仮にアクセスできた場合、悪意あるサイトに誘導され、機密情報の詐取や不正なファイルをダウンロードさせられる恐れもある。

不審文書

実在しない裁判

 別のケースでは、実在する弁護士の名前を騙り、損害賠償金を請求するFAXが企業などに届いている。FAXは「最終警告 損害賠償請求お支払いのお願い」という件名で、「東京地裁にて請求が認められた損害賠償金が未払いになっている」とし、「当職が原告代理人を務めた東京地方裁判所令和4年(ワ)第○○号(TSR加工)にて貴社に対する金300万円の損害賠償請求が認められ、令和5年3月10日現在支払いいただけていない」と記載されている。「3月18日までに指定の当法律事務所の銀行口座まで支払わない場合は、同地裁に強制執行を申し立てる」と続き、振込先口座番号と実在する弁護士名が書かれている。
 名前を騙られた弁護士は東京商工リサーチ(TSR)の取材に、「社会を混乱させる行為に名前を利用され、憤りを感じている。現在、弁護士会、警察に相談している。犯人が特定され、法的に処分されることを強く望んでいる」とコメントした。
 TSRの調査では、記載された事件番号は実在しない。東京第一弁護士会は「当会において調査したところ、(該当する)弁護士が当該文書を作成及び送付した事実はなく、何者かが、同弁護士の名前を騙って虚偽内容の文書を送付した、悪質な事案であると考えている」とコメントしている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年3月20日号掲載「取材の周辺」を再編集)

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