北海道 急成長のリユース企業トップが出演 けいナビ下期総集編

今週のけいナビは、下期の総集編。去年10月からことし3月の中から、番組MC・コメンテーターが印象に残った回を選び、振り返る。

番組コメンテーターの2人

【“たれ”だけじゃない ベル食品】

札幌のベル食品。たれやレトルトカレー、鍋用スープなど幅広い商品を手掛けている。

中でも有名なのが、ジンギスカンのたれ。1956年から販売している、ベル食品の看板商品だ。

ベル食品の工場には、砂糖や塩など、連日大量の原料が届く。その数、全て合わせると…なんと800種類!届いた原料にはすぐにシールを貼っていく。シールにあるQRコードによって、賞味期限などの情報を管理している。

入れる順番まで細かく指定され、順番を間違うとQRコードを読み取る機械にエラーが。入れ忘れや、2回入れてしまうことを防ぐ。こうしたデジタル化によって、昔ながらの味を守り続けている。

ベル食品の前身の会社「北共化学」が誕生したのは1947年。北大農学部出身の7人が立ち上げた。1954年には、日本初の家庭用ラーメンスープの素、「華味(かみ)」を販売。2年後の1956年にジンギスカンのタレを販売した。

そしてこのジンギスカンのタレも「家庭用の焼き肉のタレ」としては日本初のもの。今ではすっかりベル食品=ジンギスカンのタレというブランドイメージにつながっているのだが、売り上げに占める割合はわずか5%程度なのだという。

今、大きな柱となっているのは、調味料やレトルトカレーの開発技術を生かした商品だ。そして、ベル食品には新たな動きが。おととし9月、東京の食品メーカー「アルプス食品工業」を買収した。

これを機に、プリンの製造を始めた。新たなジャンルに挑戦をしようと、「アルプス食品工業」が元々扱っていたスイーツに目を付けた。消費拡大が叫ばれている北海道産の生乳を使うのがこだわり。

パンに付けるスプレッドも開発。これも、北海道産のバターを25%以上含むものだ。ベル食品の売上高はこの5年間、右肩上がりで増え、特にコロナ後は巣ごもり需要でその勢いが増している。ただ、人口減少が続く中、既存の商品の需要は先細る可能性が大きい。こうした状況に先手を打ち生き残っていくため、スイーツやスプレッドなど日常食を調味料、レトルトに続く新たな柱に育てる考えだ。

【趣味品の中古買い取りで急成長 アンドトランク】

札幌の「アンドトランク」。楽器・オーディオ・カメラに特化したリユース企業だ。

この日札幌店に、買い取ったオーディオ機器が運び込まれた。ターンテーブルやアンプ、スピーカーなど14点。オーディオ愛好家が、長い間、愛用してきたものだ。市場価値の高いものも少なくない。気になる買取価格は、全体で300万円にも上る。シニア世代が、収集していたものを生前整理などで売りに出すことも多く、まだまだ「お宝」は眠っているという。

アンドトランクの創業は2015年。当初は、自動車のタイヤやミシンを中心に家具、家電など幅広く扱っていたが、創業から3年目に、現在の業態に転換した。この業態転換が見事に当たり、売り上げは右肩上がりに。店舗網の拡大で、買取品の数は年間10万点にも上る。

買い取りから販売までの流れを見てみよう。まずは出張査定。売却を希望する客の家を査定士が訪問する。札幌店は、北海道全域が出張エリアだ。査定士は、使用期間や保管状況を聞き取り、メーカーや型番のチェック。写真を撮影して、本部に情報を送る。値付けは、現場の査定士ではなく、本部の担当者が行う。査定士によって値付けの基準にばらつきが出ないようにするためで、リユース業としては珍しい方法だ。

買い取った商品は動作確認などの検品をして、きれいに清掃して写真を撮影。そしてインターネットのオークションサイトに出品、という形で販売する。アンドトランクの戦略の特徴の1つが、「店頭販売しない」こと。出張にかかる経費はかさむが、店舗の維持コストよりははるかに安上がりだ。

もう1つが、DXの導入だ。スタッフが手入力していた、オークションサイトへの出品業務なども自動化。こうした取り組みで業務の大幅な効率化を実現した。 

このDXの導入により、業績も急成長した。仕入件数は急増しているが、ここ数年で増えたバックヤードの人員はわずか3人だという。

スタジオには木原社長が出演した。北海道大学の平本教授は、「中小企業はDXの導入でつまづくことが多い。導入がうまくいった理由はあるか」と質問。木原社長は「最初に時間をかけようと決めた。どの工程が効率化できるか細分化してまず社内でしっかりと分析した。そして、複数社に相談してどんな方法で効率化するか決めていった」と話す。

札幌新陽高校の赤司校長から今後の戦略について問われると、「エリアの拡大と、商材を増やしたい。趣味の物は、カードゲームやフィギュア、釣り具、酒などまださまざまなジャンルがある。商材を増やすとそのジャンルに精通したスタッフが集まることもあり、今後も事業を拡大していきたい」と話した。

【けいナビアワード大賞 オンリーワンの保護帽 特殊衣料】

札幌にある「特殊衣料」。転倒などの衝撃から頭を守る保護帽を作っている会社だ。

製造のきっかけは約30年前。脳障害がある女の子の家族から、洗って緩衝能力が高い帽子がほしいという電話があったことだ。その女の子に実際に会ってみると、F1レーサーのヘッドギアのようなものをかぶっていたという。重さで頭がふらついているのを見て、“保護帽”の製造を決めた。

そうして出来上がったのが、「愛帽」という名前の保護帽だ。衝撃吸収性に優れ、軽くて洗える使い勝手のよいものではあったのだが、見た目はヘッドギアと変わらない。やぼったく、売れ行きも良くなかった。そこで2000年に産学官連携のプロジェクトに加わり、札幌市と札幌市立高専の協力を得てデザイン性を高めていった。

そうして2年後に生まれたのが、アボネット。日常生活でも違和感なく使えるデザイン。頭を守りつつもおしゃれな特殊衣料が目指してきた保護帽だ。

アボネットのデザインは約60種類。外出用、室内用がありそれぞれ特殊な緩衝材を組み合わせつくる。商品づくりはすべて従業員の手作業だ。2011年には研究機関に依頼し衝突実験を実施。アボネットを被ることで脳や頭蓋骨の損傷リスクを減らせることを実証し、これが客観的な評価へとつながった。

この保護帽、活躍の場が広がっている。札幌・豊平区の日糧製パン。毎日工場で生産、出荷されるパンはトラックで北海道各地のスーパーやコンビニなどに運ばれる。ここで活躍しているのが、なんとアボネットだ。

日糧製パンの担当者は、「冬の早朝作業で、凍った路面で誤って足を滑らせて転倒するという事故が続いた。頭だけは守りたいと考えた」と話す。おととし特殊衣料に連絡を取って注文。何度も試作重ね、約1年かけて完成した今は配送や車両整備担当の従業員約200人が使用しているという。

障害がある人以外にもアボネットの評判は広がり、今では年間約1万個を生産する。売り上げはこの10年、ほぼ右肩上がりだ。事業を率いるのが、池田真裕子社長。4年前に母親で現会長の啓子さんから経営を引き継いだ。

池田社長は「客からのニーズありきの商品づくりが多い。ほかに作るところもなく感謝されているので、そういう商品づくりは会社として意義があると思う」と話す。

番組では、ことしから「けいナビアワード」を制定。優れた経営に取り組む北海道の企業・団体を対象に、番組が大賞を選ぶ。今年度は特殊衣料を大賞に選び、記念品を贈呈した。

池田社長は「これからもお客様の細かなニーズをキャッチして、障害者の人と社員と一緒になって、皆様の生活に役立てるような、ものづくりを継続していきたい」と話した。
番組では、これからも北海道の経済を盛り上げる企業・団体を応援していく。
(2023年3月25日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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