広島カキが空を飛ぶ! 空港から最短でお届け 海外マーケットを狙え 輸出大作戦

広島空港の一角に完成した、この施設。水槽があって、中にはカキがあります。

関係者たち
「梱包から飛行機まで、日本で一番早いんじゃないですかね」
「カキを空港施設で蘇生させて輸出するのは、おそらく初めてだと思います」

目指すは、海外のマーケット! 広島特産カキが空を飛ぶ!

「県としても、最大限バックアップしていきたい」

きょうのテーマは、『広島の味覚を最短でお届け! 広島空港発!カキ輸出大作戦』。

カキの生産は、広島が全国で6割のシェアを誇っていますが、国内市場が収縮する中、いま、世界のマーケットをにらんだ動きが加速しています。カキの輸出額は、2019年が7億円、21年には10.1億円。今後、2025年は12.6億円、30年には23億円に伸ばしたいとしています。目標の達成を後押ししそうなのが、先週、広島空港内に完成したこの施設です。

カキ出荷施設は、広島空港の貨物ターミナルに設置されました。70平方メートルの敷地には、生きたカキを入れる3トンの水槽などが置かれています。

カキの販路を海外へ拡大させることを目的に、カキ養殖会社と水産加工会社が設立しました。その名も「HIROSHIMA Oysters」。

HIROSHIMA Oysters 佐々木猛 社長
「飛行機が飛ぶところから近いところにあるのが、最大のメリット。元気に蘇生させたカキをここからダイレクトに需要者のみなさまにお届けする」

広島県産品の輸出の中でカキを最重点品目に挙げる県も、施設のオープンを歓迎しています。

広島県 観光課 観光魅力創造担当監 矢野真治 さん
「海外のマーケットの方が大きいということもこの事業の着眼点でもあります。国内マーケットが縮小していく中、より大きな効果があるのが、広島カキです」

仕掛け人は、12年前から大崎上島の塩田跡地でカキ養殖を手掛けている「ファームスズキ」の鈴木社長です。

ファームスズキでは、これまで7割を海外に輸出していましたが、コロナ禍でその量は減り、さらに輸出額の4割を占めていたロシアへの輸出もストップ。事業に暗雲が立ち込めていました。

こうした中、鈴木社長が目を付けたのが、食材のほとんどを輸入に頼っていて、生カキの消費量が多いシンガポールです。1年前、出荷を始めました。

ファームスズキ 鈴木隆 社長
「シンガポールは世界的にも一番衛生基準が厳しい国なので、そこで通用するカキを出すのは大きな第一歩と思います」

鈴木社長にとって「HIROSHIMA Oysters」は、輸出事業を軌道にのせるためのカギが備わっています。まずは、衛生管理への対応。

広島県 観光課 梅崎真見 主任
「広島県が開発したシステムで、紫外線を当てて浄化することによって4月からでも生食用として食すこともできますし、輸出も可能になる」

ファームスズキ 鈴木隆 社長
「世界的にカキの衛生基準は厳しいので、それに準じてこのレベルの浄化ができれば十分対応できる。広島県は、そういうノウハウがいろいろできているので、ここでフルに生かせたらいいなと思います」

そして、出荷施設が空港内にあることにより、鮮度を保つための輸送時間を大幅に短縮しました。

渕上沙紀 アナウンサー
「こちらの出荷施設からわずか30メートルで通関、そのすぐ向こう側が飛行場となっています」

国際便のフライト時間に合わせて水揚げすることができ、新鮮な状態での輸出を可能にしています。

ファームスズキ 鈴木隆 社長
「梱包から飛行機まで日本で一番早いんじゃないですか。すごいです。広島空港だからできること」

海外では生で食べられる小粒なカキが人気で、年間を通じて同じ品質が求められます。

ファームスズキ 鈴木隆 社長
「カキの海外の基準は60~80グラム。小粒のカキなので、人工採苗から中間育成、養殖を上手に組めば1年以内で出荷までもっていける。これは、みんなにとってメリット。1年でお金になるわけですから」

出荷するカキは、冬場だけでなく、年間を通じて生のまま出荷できるよう広島県が改良した品種です。

仕組みを紹介すると、県が開発した品種の1.0ミリのタネをファームスズキで1~3センチまで中間育成します。

それを県内のカキ生産者が80~100グラムまで育成し、広島空港に持ち込みます。

ここで紫外線を照射し浄化させて、海外に出荷する流れです。

生産者の反応もよいようです。

カキ生産者「音戸海産」 栗原単 取締役
「漁場をちょっと移動させることでいい反応が起きていて、身入りも早くなり、甘みも一気に上がったので、各漁場に届いたときにいろんな反応の変化を見せると思う」

HIROSHIMA Oystersでは、シンガポールのほか、直行便のある台湾を経由して東南アジアを中心に販路を拡大し、初年度は1億円、3年後には2億円の売り上げを目標としています。

ファームスズキ 鈴木隆 社長
「今まではアジア市場の主流の産地はアメリカやオセアニア・ヨーロッパで、10時間以上、輸送してきている。広島空港からだと3時間・4時間。十分勝負になる。経済が伸びているのは、なんと言ってもアジアなので」

◇ ◇ ◇

― 海外でカキを流通させるためには3つの条件が必要です。生カキであること、小粒が好まれること。年間通じた出荷が求められること。日本では大粒なカキが好まれ、焼いたり、カキフライにしたり、鍋にしたりしますが、海外では違うんです。

― 今回の取り組みでは、新鮮な生カキを空港から短時間で輸送できます。小粒なカキはわずか1年で出荷可能で、広島県が開発した紫外線を照射するシステムなどを使ってフルシーズンで輸出ができます。海外の需要に応える体制が整ったといえるかも知れません。広島の味覚を世界で味わってほしいです。

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