剥ぎ取られたガスが触手のよう。クラゲ銀河「JW100」

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した渦巻銀河「JW100」(右下)と楕円銀河「IC 5338」(左上)(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team)】

こちらの画像の、中央やや右下に位置するのは「ペガスス座」の方向約8億光年先にある渦巻き銀河「JW100」(IC 5337)の姿です。JW100は銀河団「A2626」を構成する銀河のひとつで、周囲には左上の巨大な楕円銀河「IC 5338」をはじめ、同じ銀河団に属する他の銀河も写っています。

中心部分とその周りを取り巻く渦巻腕(渦状腕)が明るく輝くJW100を、私たちはほぼ真横から観測しています。よく見ると、JW100から画像の下方向へと流れていく斑(まだら)模様の連なりのような構造が幾つも写っていることがわかります。画像を公開した欧州宇宙機関(ESA)はその様子を、銀河円盤から滴り落ちるペンキのようだと表現しています。

同じような構造を持つ銀河はJW100の他にも見つかっていて、触手を伸ばしたクラゲの姿にも見えることから「Jellyfish Galaxy(クラゲ銀河)」と呼ばれています。こうしたクラゲ銀河の“触手”は、銀河からゆっくりとガスが剥ぎ取られたことで形成されたと考えられています。銀河の集合体である銀河団では、銀河と銀河の間が銀河団ガスで満たされています。銀河団の中を移動する銀河がこのガスから動圧(ラム圧)を受けて自身のガスを少しずつ剥ぎ取られた結果、“触手”が形成されたのではないかというわけです。

この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(近紫外線・可視光線・近赤外線のフィルター合計6種類を使用)をもとに作成されています。ESAによると、ハッブル宇宙望遠鏡によるJW100の観測はクラゲ銀河の“触手”にみられる星形成活動に関する研究の一環として行われました。こうした“触手”は極端な環境における星形成の一例を示しており、天文学者が宇宙の他の場所における星形成の過程を理解するのに役立つ可能性があるということです。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2023年3月20日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team
  • ESA/Hubble \- Portrait of a galactic jellyfish

文/sorae編集部

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