<西九州新幹線 開業半年・上> 『交流人口』 沿線活性化に地域差

西九州新幹線開業5カ月間の利用状況

 地域浮揚の起爆剤として西九州新幹線(武雄温泉-長崎)が開業して23日で半年。利用者数が100万人を突破したが、いまだその経済効果や利便性を実感できていないという声も少なからず聞こえる。沿線を中心に地域の変化と課題を報告する。

 JR九州によると、開業した昨年9月23日から今月15日までの利用者数は113万9千人。開業前の在来線特急諫早-長崎との比較では前年同期の1.9倍、新型コロナウイルス禍前の2018年とほぼ同水準になっている。平均乗車率は33%だが、九州新幹線(博多-鹿児島中央)の利用がコロナ禍前の7~8割程度の回復にとどまっており、古宮洋二社長は西九州新幹線の滑り出しを「順調」と表現してきた。
 開業後、沿線5市の交流人口は他地域と比べて活性化した。九州経済調査協会(九経調)によると、スマートフォンの位置情報データで来訪者数を算出する「おでかけ指数」は、開業後5カ月間の長崎市は前年同期比42%増、佐賀県武雄市は同47%増。九州全体と比べ2割ほど増加幅が大きかった。宿泊施設の稼働状況を示す指数も、昨年11~12月は佐賀県が全国1位、本県が3~4位だった。

西九州新幹線開業前後のおでかけ指数の推移

 ただ沿線自治体間で活性化の程度に差が出ている。武雄市と、初めてJR駅ができた佐賀県嬉野市のおでかけ指数は、開業2カ月目以降も好調に推移。一方の長崎、諫早、大村3市はペースダウンが目立った。
 武雄、嬉野両市の担当者は共に、開業前後のメディア露出によるPR効果を口にする。開業から年末にかけて、両市内の宿泊施設は空室がほぼない状況が続いた。武雄市観光協会は「これまで福岡からの来訪が中心だったが、開業後は長崎や首都圏からが増えた。今後は周辺地域と連携した周遊プランをさらに磨き上げたい」と意欲を話す。
 長崎市も県外からの来訪者数は増加傾向だが、顕著ではない。長崎国際観光コンベンション協会によると、インターネットで「長崎 観光」と検索された件数は、開業後に急増したが、新型コロナ対策の全国旅行支援や「ながさき大くんち展」とも時期が重なったこともあって、同協会は「新幹線だけの効果というわけではない」と冷静に受け止める。
 ある旅行代理店は「修学旅行などの団体利用では(西九州新幹線を)敬遠する顧客もいる」と明かす。その理由として、博多-長崎が直通ではなく、途中で在来線特急と乗り継ぐ「リレー方式」の手間を挙げる。

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