「すべては子どもたちのために」 笹田健一 長崎県協会理事長 フェンシング選抜大会・島原誘致に尽力

試合を終えて一人一人にアドバイスを送る諫早高の笹田監督=諫早市、諫早商高体育館

 フェンシングの第47回全国選抜大会が24~26日、長崎県島原市の島原復興アリーナで行われる。長崎県での開催は2013年以来、10年ぶり2度目。大会の誘致に尽力した県フェンシング協会理事長で諫早高フェンシング部の笹田健一監督(43)は「すべては子どもたちの成長のために」と、一緒に動いてくれる仲間たちに感謝しながら、大会の成功を誓っている。
 福岡県出身。高校から競技を始め、全国高校選抜大会で頂点に立った。卒業後は日体大でインカレ王者に輝き、サーブルで日本代表入り。03年に長崎県で教員に採用された。あれから20年-。自ら県代表として国体などで活躍すると同時に、諫早商高をインターハイ準Vに導くなど、県フェンシング界の発展に選手、指導者の両面から力を注いできた。
 選抜大会は西、中、東地区の持ち回りで、今年は青森県が開催予定地だったが、大学の先輩から「スタッフ数や環境面の整備が進んでおらず厳しい」と相談された。これを受けて、笹田理事長は自ら手を挙げた。「長崎でやらせてほしい」
 21年の東京五輪直前に日本代表合宿を島原市で受け入れた実績から、やれるという自信はあった。当時はコロナ禍の真っただ中で、海外遠征どころか練習も満足にできなかったころ。代表コーチの後輩からの「合宿を長崎で受け入れてもらえませんか」という打診を、何とかしてやりたいという一心で引き受けた。結果、教え子が勤めるホテルや島原市の協力を得て、合宿は無事終了。代表は男子エペ団体で金メダルを獲得した。
 「この経験を生かしたい」。笹田理事長は県協会関係者の説得から始めた。「単独県開催の大変さは分かっている。最初は難色を示した人もいた」。でも、開催県は出場枠が増えるなど、多くの子どもたちが全国の強さを肌で感じることができる絶好の機会。「少しだけ大人が頑張りませんか」と頭を下げて回った。その後は教え子たちも含めて、県協会が総動員で準備に奔走。「子どもから大人までオール長崎でやりますよ」
 これまで開催地は1年交代だったが、行政のサポートなどもあり、島原開催は今年から異例の3年連続となった。これも笹田理事長の狙い通り。インターハイはフルーレだけの大会だが、選抜大会はフルーレ、エペ、サーブルの全3種目が実施され、その開催意義が高まっている。全国大会の開催で県内の認知度が上がり、競技人口が増え、強化にもつながる。将来的に長崎を「フェンシングの聖地」にしたい。そんな思いがこの大会には詰まっている。
 「長崎県の選手が地元開催の全国大会で優勝。そして日本代表から五輪選手にまで上り詰めて、メダルを取ったら最高ですよね」
 大きな夢に向けて、今春、その一歩目を踏み出す。

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