開幕戦でチームを激励。Honda RBPTとしての勝利は「さらなるモチベーション」/渡辺康治HRC社長インタビュー

 ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長が、2023年シーズンのF1開幕戦バーレーンGPを訪れた。HRCがレッドブルとアルファタウリにパワーユニット(PU)を供給するのは2025年までとなっており、両者に残された時間は今年を含めあと3シーズンだ。渡辺社長はバーレーンGPを訪問した目的やレッドブル首脳陣とのコミュニケーション、さらにはコンストラクター名に『Honda』が復活した経緯などについて語った。

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──前戦バーレーンGPでは現場を訪問されましたが、視察の目的はなんだったんでしょうか?

渡辺康治HRC社長(以下、渡辺社長):特別な理由はなく、パートナーを組んでいるチームが開幕戦を迎えるので、激励に来たということです。昨年も何度か来ていますし、今年はもう少し回数が増えるかもしれません。

──レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表やヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)とは、どんなコミュニケーションを?

渡辺社長:「今年もきちんと供給してくれてありがとう」と。そして、「ライバルとの競争力を踏まえながら、今後も一緒にやっていきましょう」ということを確認しました。

──すでに昨年の8月に、2025年までレッドブルへパワーユニットを供給するという契約は発表しています。それ以外に何か話し合うことはあるのですか。

渡辺社長:契約の話以外にも、一緒に戦っているので、戦略的な面でどうしていくのかベストなのかを定期的に会ってすり合わせしていくということです。

2023年F1第1戦バーレーンGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

──今年からコンストラクター名に『Honda』が復活しましたが、その経緯は?

渡辺社長:やっていることは2022年も2023年も同じなんですが、2022年にレッドブルにパワーユニットを供給すると決めた段階では『2022年だけ』しか決まっていなかった。それが昨年の夏に『2025年まで』と契約が延長されたので、これから2025年まではホンダとレッドブルが一緒にやっていくということで、こういう名前の変更となりました。

──レッドブルまたはアルファタウリが勝てば、Honda RBPTとしての勝利となります。そのことはどう受けて止めていますか?

渡辺社長:自分たちが日々努力をして仕事している中で、『Honda』または『HRC』という名前がF1活動を通じて世界に発信できるということは、我々のさらなるモチベーションになります。それが結果的に質の高いパワーユニットを安定的に供給することとなり、勝ちにつながると思っています。したがって、我々としてはとてもうれしいし、やりがいを感じています。

──今シーズンのレッドブルとの目標の設定は?

渡辺社長:2025年までは強い絆を保ちながら、チャンピオンを狙っていきましょうということを確認しあっています。

──4月末に定年退職される浅木泰昭さんに代わって、HRCの四輪レース開発部部長となる武石伊久雄さんはどのような経歴の方ですか。

渡辺社長:本田技術研究所の先進パワーユニット・エネルギー研究所の所長です。

バーレーンGPのグリッドを訪れた渡辺社長(写真左)と浅木氏(写真中央)

──最後に聞きにくいことをあえて質問します。2026年にF1に復帰するかどうかは決まっていないということですが、そもそもホンダは2021年限りで撤退しているはずなのに、いまも実際にはF1活動を続けていることを、一般のファンはどう受け止めればいいのでしょうか。

渡辺社長:一般の人たちから見たら、非常にわかりづらい状況であることはわかっています。すべての状況を説明すれば、わかってくれるとは思いますが、すべての人がその状況を知っているわけではないですから、そういう意味では結果としてわかりにくい状況となっていることに関しては、少し反省もしているし、申し訳ないと思っています。ただ、これだけはわかってほしいのですが、我々がいまF1活動を続けているのは、あくまでレッドブル側からの要請であって、レッドブルとアルファタウリがF1活動を続けるために迷惑をかけたくなかったからです。さらにパワーユニットの開発が2025年まで凍結されたので、彼らとの関係も延びたということを理解していただきたいです。したがって、いまもなおF1活動をしていることに対してお詫びするつもりはありません。あくまで、わかりにくい状況を招き、かつそのことに対する説明不足があったとしたら、その件について申し訳ない、と。

──ホンダの社内の理解はいかがですか。

渡辺社長:社員のなかに詳しい事情を知らない人はいるので、そういう人たちからも、「なんでF1をやっているの?」と言われるので、説明不足だと認識しています。

──少なくとも、三部敏宏社長は理解していますよね?

渡辺社長:もちろんです。

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