諫干即時開門第2、3陣訴訟 湾内の漁業被害が争点 28日控訴審判決

漁業者と国の主な主張

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防閉め切りで湾内に漁業被害が生じたとして、本県の漁業者26人が国に即時開門を求めた第2、3陣訴訟の控訴審は28日、福岡高裁(森冨義明裁判長)で判決が言い渡される。
 第1陣訴訟で最高裁が2019年、漁業者の上告を棄却。開門を命じた10年の確定判決の執行力排除を国が求めた請求異議訴訟でも最高裁は今月、漁業者の上告を退けた。司法判断が「非開門」で統一する中での初めての関連訴訟判決。1陣の大半、請求異議訴訟の全員が諫早湾外の漁業者だったのに対し、2陣は堤防で閉め切られた湾内の漁業者が争い、湾内の漁業被害をどう見るかが最大の争点になっている。
 一審長崎地裁は閉め切りが湾内の潮流速の低下、成層化(水温や塩分濃度などの不均一化)の進行といった環境変化の一因としたものの、寄与の程度は大きくないと指摘。環境変化が原告らの漁場環境を悪化させたとはいえず、「漁業行使権が侵害されているとは認められない」と結論付けた。
 二審で漁業者側は底生生物学を専門とする識者らを証人に立て、魚類の産卵場や成育場が失われたことを証言してもらうなど立証を補充。国は「科学的な合理性・妥当性に乏しい」などと反論した。判決では因果関係をどう見るかに加え、事業化に伴って締結した漁業補償契約の効力など、一審が判断しなかった点への見解が示されるのかもポイントだ。
 一方、漁業者側には厳しい判決が予想される中、焦点は和解協議の行方に移っている。漁業者側は国との話し合いでの解決を求め、国も和解を目指すことが「最良の方策」としているが、「非開門が前提」との姿勢を崩してこなかった。請求異議訴訟差し戻し控訴審で福岡高裁は前提条件なしの和解協議を呼びかけたが、国は「開門の余地を残した協議の席には着けない」とかたくなに拒んだ経緯がある。今回、地域の対立や分断を解消し、真の解決を図るための話し合い実現に寄与する内容になるのかも注目点といえる。

© 株式会社長崎新聞社