KTMのミラー、”想定外”のタイムで初日総合トップ。「1分37秒7が出るとは」/第1戦ポルトガルGP

 3月24日、MotoGP開幕戦ポルトガルGPがアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベでスタートした。初日のプラクティス2は2度の赤旗中断が発生するセッションとなったが、そのなかでトップタイムを記録したのは、レッドブルKTMファクトリー・レーシングのジャック・ミラーだ。

 初日のプラクティス2は、2度の赤旗が提示されるセッションとなった。序盤の開始13分すぎには「技術的な問題」のために赤旗中断。約30分の中断ののち、セッション再開となる。その後、終盤の残り時間14分を切ったところでポル・エスパルガロ(GASGASファクトリー・レーシング・テック3)が10コーナーでハイサイドを喫して転倒したために赤旗中断となった。エスパルガロはその後、救急車で運び出された。MotoGP.comによれば、重度の脊髄外傷と肺挫傷があるとのことで、エスパルガロはファロの病院に運ばれ、さらなる検査を受けたという。

 セッションの終盤には、エスパルガロだけではなくミゲール・オリベイラ(クリプトデータRNF・MotoGPチーム)やラウル・フェルナンデス(クリプトデータRNF・MotoGPチーム)、セッション再開後もルカ・マリーニ(ムーニーVR46レーシング・チーム)、そしてマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)といったライダーの転倒が相次いでいた。最初の赤旗中断でセッション終盤は気温が下がる夕方の時間帯に入っており、それでもこのセッションで予選Q2へのダイレクト進出が決まるためアタックしなければならないなど、いくつかのコンディションが絡み合ったのかもしれない。

 こうした状況のなかで、残り時間8分、2022年チャンピオン、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)がトップに立った。今季も盤石の強さかと思われたバニャイアだが、その後、5コーナーでスローダウン。そして残り時間3分で、ミラーがトップタイムをたたき出したのだった。

 このときミラーが記録した1分37秒709は、これまでのオールタイム・ラップ・レコード1分38秒725を1秒以上更新するものだった。さらに加えると、14番手のマルケスまでがこれまでのオールタイム・ラップ・レコードを更新している。大幅にタイムが更新されたセッションでもあったということだ。

 さて、誤解を恐れずに言えば、ミラーが、KTMがトップに立つことを予想していた者は少なかったのではないかと思う。ミラーというライダーに関してはドゥカティからKTMへ乗り換えたばかりだし、KTMに関しては、少なくともオフシーズンのテストを見る限りは上位につけるドゥカティやアプリリアの後塵を拝している印象だった。

 この日、セッションを終えたミラー自身、このタイムは「想定外」だったそうだ。

「今日は1分37秒7を出すなんて思っていなかった。僕の今日の目標としてはトップ10に入ることだったんだ。そしてそれを、かなり余裕をもって達成した」

「新しいエンジン、シャシーで大きな進化を遂げた。それからエレクトロニクスなどの面でフィロソフィーを変更したことで、大きく前進したんだ。コースに出るたびに、セッションのたびに、このバイクをどんどん自分のものにしていけている気がしているんだ」

「それに、KTMの強みである進入を生かし始めている。このバイクはすごく、フロントからのフィーリングがあるんだ。ものすごくタイヤを感じられるからだ」

 じつは、ミラーもあわや転倒、というシーンが何度かあったらしい。しかし、フロントの限界がしっかりと伝わることで、回避することができたという。

「今日、何度かあったんだけど、僕のひじを見てもらえればわかるように、クラッシュをなんとか回避したというわけなんだ。なんというか、バイクがすごくフィーリングをくれるんだよね。それで僕はクラッシュをまぬがれることができたんだ」

 ミラーはマシンの改善した部分について「全部だよ」と述べている。

「言ったように、エンジン……今はビッグ・バン・エンジンだけど、それによってバイクのグリップをキープすることができているし、パワーカーブもすごくいい。エンジンのパワーは比較的いいよ。もちろん、ドゥカティはものすごく速い。でも今日、スリップストリームを使ったら、1台のドゥカティを抜くことができた。期待していなかったからよかったよ」

 だが、ミラーは土曜日に控える、今季からスタートするスプリントレースについては慎重な姿勢を見せている。

「(今日の目標であるトップ10入りについては達成したが)明日はどうだろうな。スプリントレースはフルアタックになるだろうね」

 ポルトガルGPのスプリントレースは、12周で行われる。初日をレコードブレイクのタイムでトップで終えたミラーにとっても、そしてもちろんどのライダーにとっても未知数のレースだ。まずは重要性を増したグリッドポジションに向け、予選をどう戦うかということになるだろう。

2023年はドゥカティからKTMに移籍。初日をいい形で終えられた

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