<社説>那覇空港内にカッター 原因究明 再発防止徹底を

 那覇空港の危険物等所持制限区域内にある全日空(ANA)のラウンジで、長さ十数センチほどのカッターナイフが見つかった。これによって、空港の保安検査場全3カ所が約1時間半にわたり閉鎖され、那覇空港を発着する少なくとも68便、乗客約1万3千人に影響が出た。 昨年4月にも那覇空港で同様の事案があった。ANAは今回の事案と昨年の事案に関する再発防止策について「保安事象により、回答は控える」としている。

 保安上の理由から再発防止策を公表できないのは理解できる。しかし、同様の事案が2度も起きたことは看過できない。利用者の信頼を得るためにも何らかの説明が必要ではないか。ANAだけでなく那覇空港事務所など関係機関は今回の事態を重く受け止め、原因究明と再発防止を徹底してほしい。

 一方、航空便利用者も機内に持ち込んではいけない物への認識を深めてほしい。1本のカッターナイフが数十便の欠航や遅延を招く。安全確保と定時運行のため、利用者も協力しなければならない。航空各社も利用者に対する広報活動に力を入れてほしい。

 豊見城署や那覇空港事務所によると今回、カッターナイフは一般的な事務用でラウンジ内の喫煙台の上に放置された状態で発見された。その後の影響は大きく、航空各社で最大約2時間半の遅延や欠航が生じた。既に保安検査を通過した制限区域内にいた旅客らを対象に再検査が実施された。安全確保上、必要な措置とはいえ、空港ビル内は一時、混乱を極めた。

 昨年4月の事案では、乗客がANAのスイートラウンジにカッターナイフを持ち込み放置されていた。その際も全保安検査場が約1時間半閉鎖され、8便の遅れで旅客926人に影響が出ている。

 前回から1年もたたないうちに同様の事案が起きたのは残念である。那覇空港事務所は昨年、ANAに対し、再発防止策の指導と助言をしていた。今回の事案についても同事務所は「重く受け止めている」とし、航空各社を含む那覇空港関係機関で事案の情報を共有し、再発防止に努めたいとしている。それを言葉だけのものにしてはならない。

 那覇空港では2013年にも乗客がはさみを持ち込み、保安検査場の一時閉鎖と再検査が実施されている。そもそも繰り返されてはならない事案だ。なぜ防げないのか、空港関係機関は危機感をもって再発防止に臨むべきだ。

 県によると、2月の入域観光客数は約60万人に達しており、新型コロナ感染拡大前を上回り過去最多だった。沖縄の基幹産業である観光業を回復・発展させるためにも那覇空港と航空路線の円滑な運用は欠かせない。最優先されるべきは安全性だが、定時性も追求しなければならない。双方を担保する保安検査のシステム構築が急務だ。

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