謎の圧力により香港で上映禁止!?「くまプー」モチーフの異色ホラー映画『Winnie the Pooh: Blood and Honey』はどんな内容?

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愛くるしいルックスと独特な癒しオーラで世界中の人々を魅了し続けている「くまのプーさん」。そんな“プーさん像”を全力で覆すホラー映画『Winnie the Pooh: Blood and Honey(原題)』が公開前から物議を醸していた……が、さらに思わぬ方向(国)から横槍が入ったようだ。

「くまプー」ホラーの気になる内容

「くまのプーさん」は、もともとA・A・ミルンによる1926年発表の児童小説がベースで、それに独特な絵をつけてキャッチーな感じにしたディ○ニー版が、現在我々がイメージする“プーさん像”と言えるだろう。しかし『Winnie the Pooh: Blood and Honey』は、撮影こそ原作版「くまプー」の舞台となったと言われる英イーストサセックス郊外にあるアッシュダウンの森とその周辺で行われているものの、結果的に出来上がったのは全力のホラー映画だった。

気になるのはそのストーリーだが、本作における“プーさん”はとにかく手のつけられないほど凶悪・凶暴なキャラクターで、人間を見つけては狩り、殺戮と暴虐の限りを尽くすのだという。ただ、これだけでは「ただの凶暴化したクマの話じゃねえか」というツッコミもごもっともなのだが、ちゃんと(?)「くまプー」要素もあるにはある。

実は本作に登場するプーさんは、もともと人間に飼われていたのだが、その飼い主というのがディ○ニー版でもおなじみの少年、クリストファー・ロビンなのだ。しかし大きく異なるのは、このロビンがなかなかのクソ野郎で、プーさんが成長するにつれて放置気味になり、やがてまともな食べ物さえ与えないネグレクト状態になったのだという。そのためプーさんは、ブタのピグレットらと共にやむを得ず森での“自活”を選んだ……という、なかなか気の毒な話なのである。

フリー素材になったプーさんと某国からの圧力(疑惑)

と、そんなこんなで相棒ピグレットと共に、凶暴なハンターと化したプーさんが人間相手に無双しまくる(と思われる)『Winnie the Pooh: Blood and Honey』。しかし、多くの人の脳裏には「そもそも、こんなヤバい作品がなぜ許可されたのか?」という疑問が浮かぶことだろう。

実は、A・A・ミルンによる原作版「くまプー」は2022年1月にパブリックドメイン(著作権切れ)となったため、これまでのような制約がなくなったのである。つまり『Winnie the Pooh: Blood and Honey』のようにディ○ニー風味が皆無な「くまプー」であれば、スプラッター映画でもなんでも基本やりたい放題してOK、ということなのだ。

……ところが先日、本作が公開予定だった香港とマカオで、突然「上映中止」がアナウンスされるという騒動が起こった。劇場側から理由の説明はなかったようだが、ネット上では中国当局による圧力ではないか? と噂されている。つまり、以前から「プーさんに似てる!」とネタにされていた“国家主席”への過剰な忖度というわけだ。

この話の怖いところは、たかだか“プーさん似”という、人によっては喜びそうな、気にもしないようなネタすらビタイチ許されないというディストピアじみた事実であり、ホラー云々を余裕で上回る“人間の怖さ”によって、「逆にプロモーションになるし~」みたいな旨味も削がれてしまったことではないだろうか。

はたして日本での劇場公開/配信はあるのか? なんとなく気にしておきたい作品になったことは確かだ。

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