メルセデスF1のテクニカルディレクター「マシンコンセプトの変更に伴う作業は全エリアにおよぶ」

 メルセデスF1チームは、2023年型マシンW14のデザインコンセプトを変更するという大きな仕事に取り組んでいる。テクニカルディレクターを務めるマイク・エリオットは、マシンの改善を行うにあたり、あらゆる部分を分析し、使えるツールをすべて駆使して臨むと述べている。

 メルセデスF1チーム代表のトト・ウォルフはすでに、W14の設計コンセプトを誤ったと認めている。2021年まで8年連続チャンピオンという偉業を成し遂げてきたメルセデスだが、W14には根本的な欠陥があり、コンセプトを変えない限り、タイトルを争えるようにはならないと、ウォルフは示唆した。

 ブラックリーのメルセデス本部では緊急会議が開かれ、方向転換を行い、今後数カ月の間に新たな方向性で開発を進めていくべく、総合的な計画が入念に練られた。

 エリオットは、2023年型マシンのコンセプト変更に伴う作業は、ゼロサイドポッドを用いた昨年のマシンから引き継いだデザイン上の特徴を見直し、サイドポッド形状を変更することだけにとどまらないと説明した。

2023年F1第1戦バーレーンGP メルセデスF1のテクニカルディレクター、マイク・エリオット

 エリオットは、メルセデスがYouTubeチャンネルでレース後に公開した動画のなかで、コンセプト変更とはどういうことなのかという問いに対し、「簡単な答えは、人によってさまざまだということだ」と答えた。

「バーレーンの後で、我々は望むポジションにいないことを受け入れなければならなかった。そのため我々のマシンを構成するすべてのものを見直し、異なるやり方とさらなるパフォーマンスを引き出す方法を模索しなければならなかった。なぜならトップ集団に追いつくには、乗り越えなければならない大きなギャップが存在するからだ」

「そのためエンジニアたちは見落としたことはないかと、空力や、サイドポッドとフロアのジオメトリのようなマシン形状を確認するのに忙しい」

「また、シミュレーションの分野でも、正しいことを目標にしているか、適切な方向へエアロダイナミクスをプッシュしているかということを確認している」

「機械的なセットアップについても、見落としていることはないか調べている。パフォーマンスを追加するためにマシンに投入できることは他にないだろうか、と。そうしたことをできるだけ早く行おうとしている。先頭集団に戻りたいからだ」

「先頭集団で戦いたい。そのためには望むポジションに自分たちがいないことを受け入れるしかない。そしてそこに戻るために懸命に戦って作業をするのだ」

2023年F1第1戦バーレーンGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)

■気持ちが折れることなく、努力し続けているメルセデスのフタッフたち

 メルセデスの苦境は、チームのクルーやブラックリーのファクトリーフロアで仕事をする全員に大きな失望を与えた。しかしエリオットによると、落胆に沈んだのは束の間のことで、今では全員がエネルギーに満ちあふれて奮い立ち、メルセデスの運命を好転させると決意を固めたという。

「バーレーンは実態調査の機会だった。自分たちのポジションを見出し、競争力がないことが分かったので非常に落胆した。チーム全体にとって残念なことだった」とエリオットは語った。

「しかしそれを乗り越え、自分たちはそれに対して何をするのかということに変えていかなければならない。ある種のエネルギーをいかに注ぎ込むか、我々にはどういった能力があるかということだ。自分たちをどうやって前進させるか? いかにして戦いの場に戻るのか?」

「そして実際にファクトリーを歩き回ったが、そこには非常に大きなエネルギーがあった。膨大な作業が進められており、すでに一部の開発は結果が見え始めている。それは我々をタイトル争いに戻すことになるだろう」

「我々にできることは、ただプッシュを続けることだ。チームのなかにその姿勢が見られて本当にうれしい」

■「次戦オーストラリアでも小さな一歩を踏み出したい」とエリオット

 来週メルボルンで開催されるオーストラリアGPという次の仕事を見据え、エリオットはメルセデスがアルバートパークで小さな前進を遂げることを期待している。

「まず、現時点での最大の目標は学び続けることだ。まだ2レースしか終わっていない。そこからトレンドを構築することは本当に難しい」

「コースの実際の特性として、オーストラリアはおそらく(フロントタイヤに厳しい)フロント・リミテッドで、バーレーンよりはジェッダに近いだろう」

「また小さな一歩を踏み出し、もう少し競争力を高め、長期的に前進するために助けとなる学びを見つけられることを期待しよう」

023年F1第2戦サウジアラビアGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)とメカニックたち

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