投資家が見落としがちな【日経平均】が上昇しても持ち株が上がらない要因

証券用語で「騰落レシオ」と呼ばれる指標があります。騰落レシオとは、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率から、市場の過熱感を表すテクニカル指標です。相場は常に上下に動いていますが、しばしば「買われすぎ」または「売られすぎ」の様相を呈しています。

騰落レシオは、相場環境が日々どちらに振れているのかを大まかに把握できるので、『相場の体温計』とも呼ばれています。相場の転換点を予測するにも役立ちます。計算方法は以下のとおりです。

騰落レシオ = 値上がり銘柄数 ÷ 値下がり銘柄数 × 100(%)


上昇し続けた騰落レシオ

騰落レシオが100%を上回ると値上がり銘柄数が、100%を下回ると値下がり銘柄数が多いことを示します。一般的に120%以上になると「買われすぎ」、70%以下になると「売られすぎ」と判断されます。比較的短期間の相場傾向は「6日・10日」、中期的な相場傾向は「20日・25日」がそれぞれ示しています。

「25日騰落レシオ」は、投資家から一番注目されています。騰落レシオは120%近くになったからといって、必ずしもすぐに株価が下落するわけでないですし、70%近くになっても、すぐに株価が上昇するわけではありません。

例えば今年、2023年は3月上旬まで日本株は非常に強い動きをしていました。少し振り返ってみましょう。1月27日(金)に25日騰落レシオは122.7%になりました。一般的な見方をすれば先述のとおり「買われすぎ」となりそろそろ過熱感が冷めてくる時期です。しかし、その後も25日騰落レシオは下がることなく、5営業日(1月27日(金)~2月2日(木))を120%超えでキープしました。

その後4営業日(2月3日(金)~8日(水))は110%台になるも、また盛り返し9営業日(2月9日(木)~21日(火))を平均123%近辺で停滞しました。2月20日(月)には137%になりました。結局3月13日(月)まで過熱感を帯びたまま推移し、実に31日間(営業日)もの期間、110%を下回ることはありませんでした。ここまで上昇し続けるのはとても珍しいことですが、120%台をつけた途端、そろそろ相場全体が下がるだろう……と憶測で「売り」を仕掛けたりすると痛い目にあってしまう場面です。

もう一つの指標「NT倍率」

証券用語でもう一つ、NT倍率という指標があります。

以前、この連載でも解説しましたが、NT倍率とは日経平均株価をTOPIXで割った数値のことで、2つの指数の相対的な強さを表します。両指数の頭文字(日経平均株価はN、TOPIXはT)から「NT倍率」と呼ばれ、最近の標準は12倍から14倍程度となっています。日経平均株価の上昇率の方がTOPIXの上昇率よりも高いときにNT倍率は高くなり、日経平均株価の上昇率がTOPIXの上昇率よりも低いときにNT倍率は低くなります。

日経平均株価とは、日本経済新聞社がプライム市場に上場する約2,000銘柄のうちから、市場流動性(売買の活発さや安定度など)の高い225銘柄を選定し、その株価をもとに算出する指数です。一方TOPIXとは日本の株式市場を広範に網羅するとともに、投資対象としての機能性を有するマーケット・ベンチマークです。

NT倍率が高い時は輸出関連やハイテクなどの株価の高い銘柄(値がさ株)が上昇しやすい傾向があり、逆にNT倍率が低い時には銀行・電力・不動産・外食・建設・倉庫・小売などの内需関連が上昇しやすい傾向があります。日本市場は海外投資家の影響で日経平均先物に連動する為、相場の上昇局面ではTOPIXより日経平均株価の方が早く上昇しやすいです。

セミナーなどで日経平均は上昇しているが、持ち株は全く上がっていないとの質問を聞きます。それは、日経平均とTOPIXで構成銘柄などが違う為です。騰落レシオやNT倍率から全体相場の雰囲気を知る事をオススメします。

相場の世界は常々変化の繰り返しで、暴落時など過去と酷似している状況に出くわしても、再度同じ相場になるとは限りません。3月10日(金)に突然耳に入った米国のシリコンバレー銀行の金融破綻は、正に前代未聞のスピードで起こり、今後のマーケットへの影響は未だ推し量ることはできません。30年間株式相場を見続けている私でも、このスピードでの破綻は経験した事がありません。

少しでもリスクを減らして相場に向かうには、あらゆるニュースや指標に目を配り、真摯に向き合うことが一番の近道だと個人的には思っています。

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