迷いと悟りの世界 独自の仏画に 笠岡・法華寺天井画 泉谷さん制作

「蓮華鳳凰図」を制作した泉谷さん(右)と井口副住職

 現代人の姿を羊に投影した表現で知られる洋画家の泉谷淑夫さん(70)=岡山大名誉教授、総社市=が、笠岡市神島の法華寺に奉納する一対の天井画を制作した。仏法の守護神とされる龍(りゅう)、平和を象徴する鳳凰(ほうおう)を主題にしつつ、羊を加えて自身のテーマも追求した独自の仏画に仕上げている。

 法華寺は日蓮宗で、宗祖・日蓮(1222~82年)の生誕800年を記念し、天井画の制作を計画。井口寛昭副住職(42)が岡山大時代の恩師の泉谷さんに依頼した。2020年に下絵に取りかかり、1月に完成させた。

 「龍神雷光図」は噴煙が覆う宇宙空間に虹色に輝く龍がうねり、周囲に羊やロケットが浮かぶ。対になる「蓮華鳳凰図」は、緑豊かな楽園でくつろぐ羊を見守るように鳳凰が舞う。各縦182センチ、横234センチ。経年によるゆがみなどを防ぐため特注の木製パネルに描いた。

 穏やかな極楽浄土の鳳凰図に対し、雷光図は人工的な力を暗喩(あんゆ)するロケットに龍神が怒る不穏な世界を表している。「仏教の迷いと悟りの世界を想起させるなど、思った以上に教義的なイメージが盛り込まれていて驚いた」と井口副住職。

 宗教画は初めてという泉谷さんは「自分なりの龍や鳳凰を描くことにこだわった。新しいモチーフへの挑戦を通し、画家としての可能性も広げられた」と話している。

 作品は岡山市北区天神町、岡山県天神山文化プラザで5月30日~6月4日に開く泉谷さんの回顧展で披露。来春、同寺本堂の天井に設置する。

「龍神雷光図」

© 株式会社山陽新聞社