「BリーグU15女子チャンピオンシップ」に見るBユース女子発展の可能性

3月4、5日にかけて神奈川県・箱根の星槎レイクアリーナ箱根にて「不二家 PRESENTS B.LEAGUE U15 WOMEN'S CHAMPIONSHIP 2023」が開催された。

U15カテゴリーでは夏の全中、年始のJr.ウインターカップと全国ジュニアクラブゲームス(全クラ)、そして毎年3月末に開催されるBユース男子の「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP」が年間の主要タイトルとなるが、女子のBユースクラブに絞ると全国大会はJr.ウインターカップと全クラの2大会のみ。それ以前に県内外での公式戦自体が極めて少ないのが現状だった。

今大会は、そんなBユースの女子勢に公式戦で対戦する機会を創出することが最大の目的。川崎ブレイブサンダースが中心となって、現時点でU15女子のユースチームを保有する12クラブ中9クラブと開催地である神奈川県内から3チームがオブザーブとして集結した。

初日にフルゲームの予選リーグを2試合、2日目に初日の結果を踏まえた順位リーグを行い優勝を決めるフォーマット(別途、7分一本勝負の交流戦が複数あり)で、初代チャンピオンに輝いたのは福島ファイヤーボンズU15。今大会のMVPに選ばれたエースガードの#1齋藤凌花を中心にアグレッシブなディフェンスからアップテンポに攻め込むスタイルで栄冠を手にした。

その福島U15をはじめ、2日目の1〜3位リーグを戦ったのはいずれも東北勢の秋田ノーザンハピネッツU15(準優勝)と山形ワイヴァンズU15(3位)。試合後にそれぞれのチームのヘッドコーチ、神尾隼人HC(福島U15)、内村祥也HC(秋田U15)、尺野将太HC(山形U15)にチームの現状や選手たちの進路、目指すBユース女子のあり方について話を聞いた。

\--{試合機会の創出がBユース女子の価値を高める}-- まず、3者それぞれが口をそろえたのは大会開催への感謝。前述したとおりBユース女子のカテゴリーは公式戦自体が少なく、映像配信もほぼない。内村HCは「4、5年前に発足した当初はJr.ウインターカップすらなかったので、『ユースでの活動は次の3年間のためにある3年間』という位置付けで選手たちにも活動してもらっていました。人として、選手としての成長を常に大事にしてやっていた」とこれまでの活動を振り返っており、スキルや人間性を育むことに焦点を当てることはできても、実戦経験を積む機会はかなり限定的だった。

県によっては「山形は秋から冬にかけてU14のリーグ戦をやっていて、JBAで登録している中学校とクラブチームが出られるんです。あと山形はクラブリーグがあるので、これも秋を中心に8試合ぐらいをクラブチーム同士で戦っています」(尺野HC)と徐々に試合環境の整備ができつつあるところもあるが、まだまだこれからといったところ。

予選リーグのU15川崎戦での劇的勝利に歓喜する山形U15の選手たち

だからこそ、今大会は「子どもたちの中で(Bユースで活動するための)一つの目標ができたことがすごくありがたい」(神尾HC)ものだったのである。

有望な選手がなかなかスポットライトを浴びられない現状は選手たちの進路にも関わってくる。もちろん、よりハイレベルな環境を求めていても、強豪校から推薦をもらって進学できる選手は全国でもほんのひと握りで、仮に実力があっても日の目を見ない選手も多い。

ただ、中学校や町クラブと比較すると、現時点でBユース女子に与えられたチャンスはより少ないと言えるだろう。もちろん、県内の高校生を相手に練習試合を行ったりカップ戦に参加したりと試合経験も積んではいるが、単純に「大会が少ない=人の目に留まる回数も少ない」という事実は、志を高く持つ選手にとっては進路選択の難しさとなっている。 \--{見られる機会の増加が才能を評価してもらう近道に}--

見られる機会の増加が才能を評価してもらう近道に

3クラブのヘッドコーチへの取材から、現状はコーチ陣がハイライト集を作成して売り込んだり、つながりのある高校に対してアプローチするというのがBユース女子の主な進学への道となっている。大会が少ない以上、自発的にアクションを起こすことがバスケットボールで進学するという意味ではほぼ唯一の手段ということだ。(もちろん一般受験で進学する選択もある)

大会MVPを受賞した福島U15#1齋藤凌花は4月から宮城県の強豪校に進学する

「選手の育成という面では親御さんも子どもたちも本気なので、それにふさわしくあるためにコーチも熱量は大切にしています。それが崩れてしまってはお金を払ってでも来てくれている親御さんと子どもたちが求めていることと違ってしまいます。高校のカテゴリーに進んだときにどう生き残っていけるのかを大切に指導していて、仲間とどれだけ助け合って戦えるのかというところは絶対に譲りたくありません」と内村HC。

神尾HCも「選手の多くが高校、大学と見据えて、中には日本代表になりたいという意思を持った子もいます。中学だけで結果を出すよりも先々も見据えて、その子の将来のためになるような指導を心がけています。中学3年間で優勝するためだけではなく、選手それぞれが高校生になってもプレーできるように育てていければなと思っています」と言う。

秋田U15#3嶋森羽奏(175cm)はまだ中学2年生ながらオールラウンドなスキルを発揮。大会ベスト5にも選ばれた

両HCの言葉のように、今大会に参加した選手たちの中にも高校のカテゴリーで十分に通用し得るスキルを持った選手は非常に多かった印象だ。だからこそ、大会に参加し目に留まるチャンスが増えれば選手たちの可能性はさらに広がっていくに違いない。Bユース男子では徐々にU18カテゴリーも整備され始め、ユース育成枠を利用してU18以下のカテゴリーからBリーグデビューする選手も現れ始めた。

そうした発展を受けて尺野HCはこんな思いを口にする。「今回、こういう機会を作ってもらえてすごい良かったと思います。今はBリーグが(女子を含めた)U15のユースチームを保有していますが、Wリーグがもっと盛り上がってきたら女子のユースを持つチームが出てくるかもしれません。そうなれば、U15の女子ユースにも(U18より)先ができてくるかもしれない。そういう未来に向けた取っかかりとして、この大会ですごく良い場を提供してもらえたなと思います」

まだまだ発展途上なBユース女子。例えば第2回大会には高校の指導者を招待したり、よりオープンな大会にできるような施策が打てれば大会自体の価値向上、さらにはBユース女子の可能性を広げることにつながるはずだ。

現時点ではチームによる実力差や育成の体制差は見受けられるものの、大会を通してみると白熱した試合展開も多く、特に優勝争いの行方はハイレベルなものだった。それだけに、今大会が継続的に開催される大会となって、世に浸透していくことを期待したい。

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