ちさまひ再び! 髙石あかり&伊澤彩織が語る『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』 アクションと笑いに哀愁プラスの“エモい”続編

髙石あかり 伊澤彩織

2021年7月に公開され、驚異的なロングランヒットを記録したアクションコメディ『ベイビーわるきゅーれ』から1年と数ヶ月、待望の続編『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が、ついに公開となった。

プロの殺し屋として“普通の”社会生活との両立に苦労していたあの元女子高生コンビは、今回どんな成長(と殺しっぷり)を見せてくれるのか? そして2人を狙う新たな敵の存在とは……?

主人公ちさと&まひろを演じた髙石あかりと伊澤彩織が、さらに進化したアクションや互いの関係性がにじみ出る演技、共演者・スタッフとの撮影秘話までたっぷり語ってくれた。

「まったく違う2つの要素がすごく良いバランスだった」

―おふたりとも前作『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)が映画初主演と、まさに当たり役となったシリーズですが、前作のロングランヒットの理由は何だと思いますか?

髙石:伊澤さんが演じたまひろのギャップかな(笑)。ゆるっとした日常生活を描いていて……殺し屋の日常生活ってなんだ? って感じですけど、皆さんと同じように生活しているよっていう、阪元(裕吾)監督のオリジナリティ、脚本の面白さかなと思っています。前作では特に人の輪に馴染めていなかったまひろだけど、そんなかわいくてどこか憎めなくて、毎日「うまくいかないなあ」って悩んでる女の子が最後に戦ったら……かっこいい!

伊澤:うれしい(笑)。

髙石:何だこのアクションは!? っていうギャップに多くの方が“やられた”んだろうなと思いますし、私もその中の一人です。

伊澤:真逆に見える対照的な2人のバディものっていうところで引っかかってくれた方も多いと思います。あかりちゃんがすごくハイテンションな女の子ちさとを演じて、まひろが逆にローで。しかも殺し屋の話なのに、なぜか共感できるっていう。

髙石:「共感」っていう言葉はたくさんいただきましたよね。

伊澤:「わかる~!」と思える日常のあるあるも多かった。

髙石:「続きが観たい」とか。絶妙なグダグダ感と本格的なアクションっていう、まったく違う2つの要素がすごく良いバランスだったので。

伊澤:色んな表情を見せてくれるあかりちゃんの虜になった方も多いと思います。

「一緒にいるだけで“ちさまひ”になれる」

―今回、演技面やアクション面など1作目の経験が活きたものの中で、特に大きかったのはどんな部分でしょう?

髙石:仲の良さ、でしょうか?(笑)。伊澤さんと、より仲良くなれました。

伊澤:えへへ(笑)。そうですね、キャストもスタッフも、前作よりチーム感が増して。ひとつひとつのシーンに対してより濃く話ができるようになりました。『ある用務員』(2020年)で女子高校生の殺し屋コンビ・リカとシホ役であかりちゃんと初めて会ったときは、シーン毎に細かい話はできなかったよね。

髙石:はじめましてでしたたもんね。「じゃあやってみますか……」みたいな(笑)。

伊澤:3作品一緒に過ごしていく中で、どんどんパートナーになっていきました。今では良い相談相手にもなってもらっています。

―撮影中のやり取りを含めてスムーズになったというのは、お互いのキャラクターが1作目で固まったことも大きかったのでしょうか。

伊澤:それもあるのかな?

髙石:ちさまひ(ちさと&まひろ)は私たちの当て書きだったので、役を作らず、比較的自然に演じるのが『わるきゅーれ』の役作りというか。それは前作から感じていて、今回『2』の本読みでは、もうスッと「まひろが隣にいる、ということは私はちさとだ」って無意識に入れました。以前、伊澤さんがTwitterに2人でハンバーガーを食べている動画を投稿したんですけど、そしたら「ちさまひだ!」「本物だ!」ってコメントがありました。

伊澤:あれは映画館で、上映開始5分前くらいにハンバーガーが出来上がって……。

髙石:「急げ~!」って(笑)。

伊澤:ちょうど『2』の撮影中だったんですよ。でも一緒にいるだけでちさまひになれるっていう部分はあるよね。

―今回も2人の自然なやり取りが印象的ですが、やはりアドリブ多めなのでしょうか?

伊澤:何回かはあるかな?

髙石:前作なんて、ほとんどなかったですよね。

―なんと、それは意外でした。

伊澤:「アドリブに見えた」って言ってもらえるシーンほど、阪元監督の脚本に書いてあるセリフを話しているシーンだったりしましたね。今回は、監督から「ここはアドリブで会話してほしい」というオーダーがあったりしました。

「前作は強い相手に挑む挑戦者、今回は迎え撃つ側」

―本作ではプロの殺し屋を志望する兄弟、ゆうり(丞威)&まこと(濱田龍臣)の参加によって、物語が多面的になり深みが増したように感じました。また丞威さんとのバトルでは重さも加わりましたが、前作よりも“見せる”ことを重視したのでしょうか?

伊澤:そうですね、ラストのタイマンバトルで一番違う部分としては、前作では私が強い相手に挑む立場だったのが、今回は挑戦者を迎え撃つ側になったことです。アクション監督の園村(健介)さんたちと話していたのは、どうすればまひろのほうが“強者”に見えるか? と。

実際に戦ったら丞威くんのほうが勝てる肉体を持っていると思うんですけど、まひろのほうが強く見せるためには軸をブレさせないとか、フェイントを多めにして翻弄する感じだったり。ゆうりとまひろが感情でぶつかり合うというのも鍵だったので、アクションシーン中の心情の変化を意識しました。

―髙石さんは前作で、伊澤さんのアクションのすごさに思わず泣きそうになったそうですが、今回は?

髙石:今回は……笑いました!(笑)。私は前作のラストのタイマンバトルの撮影の現場にはいられなくて、試写で初めて観たんです。それまでアクションにあまり触れてこなかったので、こんなものがあるのか!? と驚きましたし、「ただ殴ってるだけじゃないんだ、感情が見え隠れして、荒々しい泥臭さも派手な部分もあって面白いなあ……」って、気づいたらウルッとなってたんです。だから『2』では、もうアクション撮影をウッキウキで楽しみにしていて(笑)。

でも『1』を超えてほしいっていう思いは全然なくて、ただただ「伊澤さんを観たい!」「あのアクションがくる!!」っていうのが、楽しみで仕方なくて。だから予告映像でも使われている、丞威さんと伊澤さんが銃を撃って周りながら戦うシーンが始まった瞬間に、「……きたな」と(笑)。2人の努力を見ていたので、もう恋するというか。2人のアクション練習も皆さんにも見てほしいくらいです。2人がやりたかったものが形になっているという喜びもありますし、ただただ見ていて楽しくて釘付けになります。

「監督はずっと『ベイビーわるきゅーれ3』の話をしてます(笑)」

―死体処理業者の田坂を演じる水石亜飛夢さんのダメなバイトリーダーのようなキャラクターは、新規ファンがつきそうですよね。あのチームによるダベりシーンも増強されていました。

髙石:亜飛夢さんの一人喋りは全部アドリブです(笑)。

伊澤:カメラが回っている間、後ろで「すごい……」って言いながら見てました(笑)。

―田坂とその部下・宮内(中井友望)のコンビに殺し屋組織のマネージャー・須佐野(飛永翼[ラバーガール])を加えた3人のスピンオフも観てみたいですね。

伊澤:今回は2人組の関係性も見どころですね。「ちさと・まひろ:ゆうり・まこと:田坂・宮内」っていう2ペアが3つ。

髙石:田坂・宮内コンビは、映画終盤では須佐野さんを入れた3人組になって、素敵なファミリーだなと思いました。

伊澤:撮影中に「須佐野さんだったらどんなペアがいいかな」って話してたんです。

髙石:勝手に妄想してました(笑)。

伊澤:例えば小さい女の子に「すさの~ すさの~」とか言われたりして、『レオン』みたいな関係性になる相手がいたら良いよねって。でも阪元監督にそう言ったら「須佐野さんは独り」って(笑)。

髙石:(ビジョンが)あるんでしょうね、きっと(笑)。

―『ベイビーわるきゅーれ』シリーズにはお色気シーンもなければ過剰にグロいシーンもなく、かつ映画として非常にバランスが良く、エログロに頼らなくても胸を張って世界に出せる日本映画だと思います。だからこそ続いてほしいですし、実際に続けられるような終わり方をしていますよね?

伊澤:監督も私たちも、ずっと『3』の話をしてますね(笑)。

髙石:『ベイビーわるきゅーれ50』みたいな話もしてました(笑)。「2人がおばあちゃんになったら……」って。やる気満々です(笑)。

伊澤:ね、ぜひやらせていただきたいです。

「今回もめちゃくちゃ食べこぼしてます!」

―では、お互いの思う本作の見どころは?

伊澤:私は“将棋”ですね。ちさとさんの将棋のシーン。あれはすごいですよ……。

髙石:あはは(笑)。

伊澤:今回は、2人でいるシーンばかりなんです。ただ、唯一私がいないところでやってるのが将棋っていう(笑)。だから余計に、撮影中にモニターを見ていて「髙石あかり、すごいな」って思わせてくれるシーンでした。表情管理が最高で、めちゃくちゃ笑いました。

―たしかに今回は、ちさとのダメな部分を見せる描写も多いですね。

伊澤:それは監督が前作の脚本段階で言ってました。「『1』はまひろが成長する話で、『2』ではちさとが成長する」って。

髙石:……ちさと、成長してます!?(笑)。

伊澤:成長してるはず(笑)。「ちさとが(世間に)揉まれる話」とも言ってた。

髙石:あの、私、食べこぼす役じゃないですか?(笑)。前作ではペットボトルから水が溢れたりとか、いろんなシーンで“奇跡”が起きていて。それは今回も結構あったんですが、本編を観ても気づかなかったんです。でも、実際はめちゃくちゃこぼしてたんです! 飲み物をこぼしてしまうシーンの後、ご飯を食べるシーンでも……。

伊澤:ご飯こぼしながらレモン牛乳こぼしてたよね(笑)。

―食べこぼすのかなと気にしながら観ていたので「あ、またこぼした」とは思いましたが、そこは気づきませんでした!

髙石:食べたはずのものが、そのままここ(足元)に落ちてて……。“意外としっかり者”っていうイメージでいきたいのに、全部うまくいかない! みたいな。

伊澤:わざとだと思ってた(笑)。私は生卵を拳で割るのに苦戦して、助監督さんが練習用の卵をくれたんです。力の入れ具合がわかってOKをもらった後、私が練習で無駄にした生卵を助監督さんが「飲みます!」ってグイッと(笑)。こんな形の「スタッフが美味しくいただきました」があるのかと感動しました。

髙石:今回のまひろ、パワー系なんですよね、結構(笑)。

「『ベイビーわるきゅーれ』に恩返しがしたい」「アクションに興味を持つ入り口になれれば」

―伊澤さんは『ジョン・ウィック』新作のアクション部に参加されましたし、髙石さんは2023年すでに公開された出演映画が3作目です。今後の展望は?

髙石:色んな方に「『わるきゅーれ』見たよ」「面白かったよ」って言っていただくたびに、“いい作品”に出会えるのはすごいことなんだなって、強く感じていて。本当に幸せ者だなと思っているので、『ベイビーわるきゅーれ』に恩返しがしたいです。演技の幅を広げたりだとか、真逆の役を演じるだとか、たくさんの役目があると思っています。よりお芝居に深みを出せるように、ちさと“じゃない”自分をたくさん見ていただいて、カメレオン俳優じゃないですけど、“透明”みたいな、そういう役者になりたいです。

伊澤:すばらしい……。日本でこれだけ話題になるミニシアター出身のアクション映画って、あまりなかったと思うんです。そういう意味でもすごくありがたいですし、スタントや裏方をやってきた身としては、アクションに興味を持ってもらえる入り口になれれば嬉しいです。

撮影:落合由夏

『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』は2023年3月24日(金)より新宿ピカデリーほか公開中

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