世界一ホットなオンナは世界一立派なオカン! セックステープ流出だけじゃない本当の素顔 Netflix『パメラ・アンダーソン、ラブ・ストーリー』

Netflixドキュメンタリー『パメラ・アンダーソン、ラブ・ストーリー』独占配信中

世界一のセクシーアイコン誕生秘話

キミはパメラ・アンダーソンを知っているか? この名に反応するのは、おそらく30代後半以上ではないだろうか。

ドラマ『ベイウォッチ』(1989~2001年)や映画『バーブ・ワイヤー/ブロンド美女戦記』(1996年)に出演。私生活ではモトリー・クルーのドラマー、トミー・リーやキッド・ロックと結婚~離婚を経験するなど、主に90年代に活躍した女優だ。

パメラはカナダ・レディスミス出身。1989年のある日、友人とフットボールの試合を見に行った時、試合中にスタジアムの大きなスクリーンに彼女の姿が映し出されると、その美しさからフィールドに呼ばれ、観客から大声援を受ける。

その後、ビール会社とのCM契約を結ぶと一躍人気が爆発。彼女の評判は国境を越えて、なんとプレイボーイ誌に招かれて表紙を飾るのだった。

悪夢の始まり「セックステープ流出」

欧米人が考える“エロいブロンド美女”そのものである彼女の人気は留まるところを知らず、人気ドラマ『ベイウォッチ』への出演でハリウッドスターの仲間入りを果たす。

文字通り裸一貫で国を飛び出した彼女は私生活も絶好調、数多くのスターと恋愛を楽しむ中でトミー・リーと出会う。出会ってから交際4日で結婚した二人は、ハリウッドを代表するカップルとしてマスコミの標的になった。

そしてある日、二人が密かに撮っていたセックステープが何者かに盗まれる。当時普及し始めたインターネットの影響もあり、その映像は世界中に流出してしまった。

普段から酒、ドラッグ、女、ケンカと常に話題を振りまいていたトミーに関しては「トミー・リーはトミー・リーだった」と特に何の影響もなかったようだが、パメラの方は屈辱的な仕打ちを受け続ける。

今では考えられないが、テレビではテープの内容でいじられて、裁判でもセクハラまがいの質問を受ける日々。念願だった主演作『バーブ・ワイヤー』も裏側でごたごたがあり、ラジー賞を獲得。彼女の人気は失速していった。

当時の様子は『パム&トミー』(2022年)としてドラマ化され、リリー・ジェームズとセバスチャン・スタンによる完コピっぷりも話題となったが、このドラマは脚色し過ぎで、二人の四半世紀以上前の傷をえぐるような内容だった(モトリー・クルーの大ファンの俺としてはきちんと全話鑑賞したが、何よりモトリー・クルーの描写が適当過ぎて観終わる頃にはどんどんテンションが下がっていった)。

「スタローンは『一番目の彼女になれ』と」

ドキュメンタリー『パメラ・アンダーソン、ラブ・ストーリー』は、パメラ本人が子供の頃から書き続けてきた日記や手紙、ビデオをもとに半生を振り返る内容で、Netflixにて独占配信されている。

正直、本作を観る前はそのルックスと、セレブと結婚・離婚を繰り返す様子に「体でのし上がったとんでもないオンナ」という印象だったが、それを覆すに充分な内容だった。

現在はカナダの実家に帰り、山と海に囲まれた街で静かな生活を送っているパメラ。55歳という年齢に相応しく老けており、しわも隠していない彼女は、穏やかに過去を振り返る。

豊胸? しないといけないかなと思ってした。正直に話したら「そういうことは言うものじゃない」と怒られた。

たくさんの人とデートした。シルヴェスター・スタローンは「一番目の彼女になれ」と。二番目がいるなんてお断りよ。

こんなふうに茶目っ気たっぷりに話しながらも、ベビーシッターによる性的虐待、母にDVを続ける父親など、暗い幼少期も明かす。

セックステープについては「人生を壊された」「(ドラマについて)なぜ人の人生をまた壊そうとするのか」と、インタビューを中断するほど彼女の人生に暗い影を落としたことがわかる。

騒動後も「注目されるために撮影したのでは」「大金を貰ったのでは?」とメディアで書かれたり、息子が学校でいじめられるきっかけになるなど、その後も苦しめられた様子だ。ちなみに、この件では1セントも受け取っていないと強く否定している。

また、「情熱的に生きたいので恋愛は好きだが、父に暴力を振るわれ続ける母を見て、結婚はダメだと思ったらすぐに別れている」「動物には癒され続けてきたから保護活動を行っている」「(胸を指して)自分に注目される武器があるのなら最大限うまく使わないと」といった発言からは、軸をしっかり持った人物だということ、これまでメディアを騒がせた行動にも確固たる信念があったことがわかる。

また、動物保護活動の一環で広告でヌードになって注目を集めるきっかけにしたり、「嫌な思いもしたがおかげで良いこともたくさんあった」と肯定しているところからも、その人柄がうかがえる。

トミーのスキャンダルは基本的に10対0で本人が悪い

本作でもっとも感動したのは息子二人との関係だ。兄ブランドンと弟ディランは思わず笑ってしまうくらい父トミー・リーに似ているのだが、めちゃくちゃまともに育っており、母親想いだ。

兄弟は「(両親のおかげで)生まれてずっと注目されてきたから平穏に生きたい」とボヤキながらも、「他人が(セックステープで)利益を得ている中、母は1セントも受け取らず、家族を守り続けて自身のキャリアは失われていった」「常に自分のことより家族や友達を優先する人だった」と冷静に振り返っている。

また、兄ブランドンが「あのドラマ(『パム&トミー』)が注目されてるけど、絶対に観ないようにしろよ。弟にも観るなと伝えた」と気遣いの電話をかけるなど、家族想いなところもしっかり受け継がれているようだ。

前述の通り、自分はモトリー・クルーの大ファンなので本作に限らず普段からSNSや海外のニュースも追っているが、ブランドンとディランがスキャンダルも起こさず母との関係が良好なのはマジと断言できる。

スターの家に生まれ、スキャンダルに振り回され続けても二人が立派な青年に育っているのは、パメラが母親として素晴らしかったという何よりの証拠だろう。

※なお父トミー・リーについては「再婚で父親が何度も変わったが、本当の父親はトミーだけ」と話しつつも、数年前に泥酔したトミーを止めるためにボコボコに殴り、SNSで「都合の良い時だけ父親ヅラするな! 参観日とか一度も来なかったくせに!!」とブチ切れていたあたり、色々と苦労してそうだった。ちなみにトミーのスキャンダルは基本的に10対0でトミーが悪いことがほとんどだ。

誰よりもセクシーなオンナであり、誰よりも愛に溢れたオカン

本作終盤、ブロードウェイミュージカル「シカゴ」に抜擢されて絶賛されるパメラが映し出される。セックスアピールばかりで話題になった彼女がその演技力で評価されるのはもちろん、「誰もが想像できないことに挑戦して成功させた。カッコいい」「母がようやく誰かのためではなく、自分の人生を歩んでいる」という息子たちのコメントも泣ける。

「人生で耐えてきた痛みは芸術の刺激剤になる。全ての経験に感謝し、誰のことも責めない」と言うパメラ。「シカゴ」公演の翌日、当たり前のように家事をする背中に母親の強さを感じた。

そして「息子も成人したし、今後のことは何もわからない……。来週にはわかるかな」と笑うのだった。

誰よりもセクシーなオンナであり、誰よりも愛に溢れたオカン。これからのパメラ・アンダーソンのキャリアに期待だ。

――最後にトミー・リーの近況を。

2022年にモトリー・クルーが復活。大成功するが、泥酔して自身の性器をSNSに投稿。直後のライブのMCで「俺は泥酔して世界に俺のムスコを見せちまった! これまで俺はたくさんの女の子におっぱいを見せてくれと頼んだが、これからは平等にしたい。男たち、さぁ出すんだ、お前のホットドッグを全世界に見せつけろ!!」と絶叫。

「(嫌がる男性ファンに)嫁がダメってか! じゃあ俺が出してやるよ!!」と自身のパンツから出したのは、トミーが飼っている子犬だった。

色々あり過ぎてどこから整理していけばいいかわからないこの事件に、世界中が「トミー・リーはトミー・リーだった」とコメントしている。

文:デッドプー太郎

Netflixドキュメンタリー『パメラ・アンダーソン、ラブ・ストーリー』独占配信中

© ディスカバリー・ジャパン株式会社