小学生の交通事故36.2%は「飛び出し」が原因 “魔の7歳”を守る「交通ルール」の伝え方

「令和4年交通安全白書」によれば、平成29年から令和3年に交通事故に遭った“歩行中”の小学生の死者・重傷者数は2522人。そのうちの627人が小学1年生だったが、亡くなった被害児童の数を見ると6年生の10倍にも上っており、「魔の7歳」とも呼ばれている。

3月20日の午後4時ごろに、千葉市稲毛区の交差点で自転車に乗って横断していた7歳の女児がトラックにはねられる事故のニュースがあったばかりだ。女児は頭の骨を折るなどの重傷を負っているという。

この事故のように、小学生が事故に遭遇する時間帯の割合は、主に放課後の午後2時~5時頃に集中している。通行目的別では「下校中」が一番多く、「私用」「遊戯」と続く。親の“お迎え”やバス送迎がある幼稚園・保育園とは異なり、小学校では子ども同士、ひとりの行動も多くなることも、事故に遭遇する割合が高くなる原因のひとつだろう。

交通安全白書「小学生の歩行中・自転車乗用中の時間帯別死者重傷者数(平成29年~令和3年合計)」より

要注意の行動は「飛び出し」

埼玉県では子どもが交通事故に遭いやすい理由について、「子どもの特性」に基づき次のように説明している。

  • 一つのものに注意が向くと、周りのものが目に入らなくなる
  • 状況に応じた適切な判断ができにくい
  • 気分によって行動が変わる
  • 大人の真似をする
  • 物の陰で遊ぶ傾向がある
  • あいまいな言葉はよく理解できない

(出典:埼玉県 県民生活部 防犯・交通安全課)

具体的には、「ボールを追いかけて道路に飛び出す」「信号が青になると一目散に走り出す」などの事例があるようだ。

前出の統計でも、小学生の交通事故死者・重傷者のうち36.2%は「飛び出し」が原因ということがわかっている。全年齢を対象とした場合「飛び出し」が原因の事故は全体の4%にとどまっていることからも、小学生の事故割合の多さがわかる。

交通安全白書「歩行中(第1・第2当事者)の法令違反別死者重傷者数(平成29年~令和3年合計)」より

飛び出し事故の場合、子どもであっても特に6歳以上からは「危険を予測する判断能力がある」と見なされ、被害者にも一定の過失が認められることも多い。交通安全はもちろん、親として子どもに「飛び出し」の危険性を伝えておく必要があるだろう。

子どもに伝えるべきこと

前出の埼玉県の説明では、子どもは「危ないよ」「気をつけて」といった注意では「なぜ危ないのか」が理解ができないことがあるといい、伝え方にも工夫が必要だ。

政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201804/1.html)では、「交差点では左右から曲がってくる車があるから危ない」、「曲がり角では急に飛び出してくる車があるから気を付けて」など、子どもに教えるべき交通ルールを具体的に紹介している。

また、「通学路や公園など子どもの行動範囲を一緒に歩きながら安全な歩き方を身に付けさせる」といった親子で行う近所の危険な場所のチェック方法も紹介されている。

“7歳”に特化したハザードマップ

近所の危険な場所を探す際に役立てたいのが「ハザードマップ」(自治体によっては「ヒートマップ」)だ。

警視庁をはじめ全国の警察では、事故が起きた地点を地図上に表示する交通事故マップを公開している。また、民間機関でも「HONDA」や「こくみん共済 coop(全労済)」が、独自のハザードマップを開発・公開しており、事故情報だけでなく、潜在的な“危険箇所”の情報提供も呼びかけられている。

「こくみん共済 coop(全労済)」が公開している「私のまちの7才の交通安全ハザードマップ」は、その名の通り“7歳”に特化したハザードマップだ。地域によっては、6~8歳の子どもが事故に遭った地点に絞って確認することができる。

こくみん共済 coop〈全労済〉「私のまちの7才の交通安全ハザードマップ」プレスリリースより

今年4月からは、およそ96万人(※) の子どもたちが小学校に入学し、「魔の7歳」リスクを抱えながらそれぞれ通学することになる。

幼少期はたくさんの成功や失敗を繰り返し成長していくが、交通事故はやり直しがきかない。入学式を前に、ハザードマップを活用しながら、身の回りに潜む“交通事故リスク”を子どもとともに学ぶ時間を作るのも、大人の役目のひとつとなるかもしれない。

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