ホンダに乗る18歳の有望株がオープニング制圧。トヨタも表彰台デビュー/TCRサウスアメリカ開幕戦

 世界で展開される地域選手権のうち、創設3年目と比較的新しいTCRサウスアメリカ・シリーズの2023年シーズンが3月24〜26日に開幕。アルゼンチンはコルドバに位置するアウトドローモ・オスカー・カバレンで争われた各ヒートでは、同国のトップカテゴリーであるTC2000(旧スーパーTC2000)でも頭角を表す18歳の新鋭、イグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が今季オープニングを制し、対照的に続くヒートでは57歳の大ベテラン、ウォルター・ヘルナンデス(PMOモータースポーツ/リンク&コー03 TCR)が勝利。そして注目を集めたTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)製の新型モデル『トヨタ・カローラGRS TCR』の本格デビュー戦は、セカンドヒートで2位表彰台を獲得している。

 昨年末には26台の年間エントリーが見込まれたシリーズは、開幕のレースウイークを前に21台がグリッドに並ぶことが確定。当初の予定よりわずかに減となったものの、それでも昨年対比では3台増加とTCRの盛況ぶりを示す台数となった。

「我々もこの状況に非常に満足しており、今季の開幕に大きな期待を寄せている」と語るのは、シリーズ代表を務めるフェデリコ・プンテリ。

「この地域でTCRのコンセプトを確立できた最初の年になるはずで、その前段階となる2022年は力強い成長を遂げ、2023年はより多くのクルマとより多くのドライバーが、将来に向けカテゴリーの骨組みをより強固なものとし、大きな期待を生み出すシーズンになるだろう。またカレンダーには2戦の『TCRワールドツアー』が組み込まれていることもうれしく、誇りに思っている」

 こうして始まった週末は、金曜に75分間のフリープラクティスが実施され、各ドライバーが新しく導入されたクムホタイヤの感触を初めて確かめるなか、昨季もタイトル争いを展開したファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が期待の高まるトップタイムをマークする。

 明けた土曜は30分×2回のFPを経て予選開始となったが、コルドバ地域の停電が影響してセッションがわずかにディレイ。これでトヨタ陣営のリズムが狂ったか、ホセ-マニュエル・サパーグ(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)やアダルベルト・バプティスタ(コブラ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)らが相次いでコースオフを喫する。

金曜FPでは昨季もタイトル争いを展開したファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が期待の高まるトップタイムをマークする
しかしR1開始直後に、ベルナルド・ラヴァー(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)とファビアン・シャナントゥオーニ(Paladini Racing/トヨタ・カローラGRS TCR)がまさかの同士討ち
TC2000ではルノーに乗るイグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が今季オープニングを制した
R2はファビオ・カサグランデ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がリバースポールからスタート

■レース1ではトヨタ陣営が同士討ち。モンテネグロが攻防戦を制す

 最終的にQ1とQ2の双方を制圧したラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が今季最初のポールポジションを射止め、フロントロウ2番手にモンテネグロ、トヨタ勢最上位はベルナルド・ラヴァー(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)が1.1秒遅れの4番手となり、ファビアン・シャナントゥオーニ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が同1.4秒遅れの5番手で続いた。

 明けた日曜現地午前9時開始のレース1では、スタートのトラクション勝負でモンテネグロのホンダが先行したものの、その直後にトヨタ陣営でまさかの同士討ちが発生。ラヴァーと絡んだシャナントゥオーニがコースから弾き出され、早くもセーフティカー(SC)が導入される。

 4周後のリスタートで首位を奪還したポールシッターのレイスはその後もリードを堅持したが、執拗にリヤバンパーに喰らい付く18歳の猛攻を凌ぐことができず。12周目にはお互いにコンタクトを繰り返し、ボディワークの一部を飛ばす攻防劇でホンダがオーバーテイクを決め、モンテネグロが逆転で今季オープニングヒートを制覇。2位レイスに続き、最後の表彰台となる3位にはその僚友ガリッド・オスマン(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が入った。

 続いて予選トップ10リバースで開始された正午過ぎのレース2は、もうひとりのシビック使いファビオ・カサグランデ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が逆ポールからスタートを切るも、2周目にアウト側から仕掛けたレイスと接触。これで2台は最後尾に下がってしまう。

 首位を引き継いだフロントロウ発進の57歳エルナンデスは、残り2分強で他車のパンクにより導入されたSCでレース最終盤に後続パックとの接近戦を強いられたものの、トヨタのシャナントゥオーニ、ホンダのモンテネグロを抑え切り、見事に開幕勝利を手にした。

「とてもうれしいし、チームに感謝している。彼らは素晴らしいクルマを与えてくれて、多くのことを助けてくれたからね」と、今季限りでの現役引退を表明して臨んでいるエルナンデス。

 最初の週末を終え、優勝と3位表彰台を獲得したモンテネグロが77ポイントで首位に立ったTCRサウスアメリカ・シリーズ。続く第2戦は引き続きアルゼンチンが舞台となり、サンタフェにある英雄ファン-マヌエル・ファンジオの名を冠したトラックで4月14~16日に争われる。

ホセ-マニュエル・サパーグ(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)はR2で8位に
開幕直前に最後のシートを獲得したSCBストックカー・ブラジル参戦のラファエル鈴木(PMO モータースポーツ/リンク&コー03 TCR)は、R2で4位を記録した
R2で2位表彰台を獲得したファビアン・シャナントゥオーニ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)
57歳の大ベテラン、ウォルター・ヘルナンデス(PMOモータースポーツ/リンク&コー03 TCR)がR2を制した

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