茨城・笠間市立病院 「受胎前ケア」外来再開 妊娠見据え健康づくり 担当医、受診呼びかけ

妊娠に向けたカウンセリングを行う稲葉崇医師=笠間市南友部の笠間市立病院

妊娠・出産をより健康な状態で迎えられるよう、女性やカップルの体づくりを指導する「プレコンセプション(受胎前)ケア」の専門外来が、茨城県笠間市南友部の笠間市立病院で再開した。コロナ禍で2020年度途中からほぼ休止状態だったが、今年初めに対処方針が変更された。担当の医師は「地域の医療機関として、保健師や管理栄養士と連携したケアが当センターの特徴。妊娠を前向きに考えている方や健康な体づくりを目指している方はぜひ受診してほしい」と呼びかけている。

コンセプションとは英語で「受胎」で、プレコンセプションは「妊娠前」を意味する。プレコンセプションケアとは、将来の妊娠を視野に入れて健康づくりに向き合うことで、さまざまな視点から現在の健康状態をチェック(検診)し、日々の生活や健康について、医師や保健師、管理栄養士らが診察やカウンセリングを行う。

市は、広く子育て支援の一つとして、19年度にプレコンセプションケア検診への助成を始めた。内容は血液検査(風疹・B型肝炎などの感染症検査、葉酸・鉄などの栄養評価含む)をはじめ、検査データを基に医師らによるカウンセリングなどとなっている。

地域医療センター内にある市立病院で、プレコンセプションケア外来を担当するのが稲葉崇(たかし)医師(35)。総合診療医として、特定の臓器や疾患に限定することなく幅広い視野で患者を診察。筑波大では助教を務め、地域総合診療医学の授業を受け持つ。

稲葉医師はプレコンセプションケアについて「不妊治療とは違い、妊娠・出産をより健康な状態で迎えることを目指したもの。妊娠に気付く頃には、既に胎児の体の基礎が出来上がっているので、妊娠前からのケアが重要になる」と説明。市内高校で実施した啓発活動を踏まえ、「今後は地元企業とタイアップして、福利厚生の一環としてプレコンセプションケアを広めていきたい」と意欲を示す。

カウンセリングでは、主に適正体重の維持、禁煙や控酒(こうしゅ)、赤ちゃんの成長に不可欠な栄養素「葉酸」の積極的な摂取などを指導する。禁煙や控酒に関しては病院内の専門外来と連携で効果を高めているという。また、同センターに所属する保健師や管理栄養士が加わって、がん検診情報などの提供や生活習慣の指導も行い、カウンセリングの幅を広げている。

同センターによると、受診者は30代の女性や夫婦を中心に、結婚の予定に関係なく独身女性などが外来を訪れている。妊娠の実績は、19年度が5人、20年度が4人、21年度が5人となっている。

プレコンセプションケア検診は通常、女性が2万1千円、男性が1万7千円かかるが、同市は市内在住の女性を対象に5千円で受けられるよう助成。ただ、助成は1回目のみで、2回目以降は通常の料金負担となる。

市立病院の経営管理課は「子育て支援の入り口として、プレコンセプションケアを通じ、より望ましい出産を迎えられるようにしていきたい」としている。

笠間市立病院(電)0296(77)0034。

★地域医療センターかさま
2018年4月にオープン。笠間市立病院、保健センター、地域包括支援センター、病児保育室を併設した複合施設で、地域完結型の保健・医療・福祉の包括ケアを推進している。

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