<金口木舌>種も環境も大切

 今年も人事異動の季節が来た。4月を控え、気もそぞろな人も多いのでは。当方も異動を前に、大いにドキドキ、ややワクワクといったところ

▼同名のベストセラーから来たと思われるが、「置かれた場所で咲きなさい」という言葉を時折耳にする。異動する当人の心意気としては共感できるが、組織側が言うのには反感を覚える人もいよう。花を立派に咲かせたいなら、置く場所にも気を使ってほしくなる

▼社内異動は万国共通ではない。雇用に際し職務内容を限定することが多い欧米などでは、本人の意思確認や事前の合意形成が求められることが一般的で、強制的な日本方式とは異なる

▼とは言え、何事にも一長一短はある。日本は社内で人を再配置することで雇用を維持している側面がある。近くにある未知の「天職」に出合うチャンスにもなろう

▼時に人生を左右する人事異動。神のみ業(わざ)ではなく人間のやることだ。大輪の花を咲かせるために、個人のハートという種と、組織の環境という肥料の双方を、人知で整えることはできるはずだ。

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