「外海からの移住者の墓」 発見の波佐見焼などで特定 五島・平蔵のキリシタン墓碑群 鎮西学院大研究グループ

専門家が調査を進めた旧木ノ口潜伏キリシタン墓所=五島市平蔵町

 鎮西学院大の加藤久雄教授(人類学)らの研究グループが、長崎県五島市平蔵町のキリシタン墓碑群「旧木ノ口潜伏キリシタン墓所」で実施していた調査結果をまとめた。18世紀末に大村藩領の長崎市外海地区から五島列島に移住した初期の潜伏キリシタンと子孫の墓である可能性が高いという。
 墓周辺で見つかった陶磁器が、最も古いもので18世紀後半の波佐見焼だったことなどで特定。同時期にこの地域に移住者があったとする記録を裏付け、墓碑数も81基と確認した。

旧木ノ口潜伏キリシタン墓所の調査成果を報告する加藤教授=五島市池田町、福江文化会館

 加藤教授は「潜伏キリシタン墓は、教会墓地などへ改葬した事例が多い。このような形で残っている例は五島列島にはほぼない」と、価値を説明した。今後、報告書を出版する。
 加藤教授らは、同市の潜伏キリシタンの末裔(まつえい)、木口榮さん(75)の案内で複数の石積み(墓碑)を確認したのを機に2013年度から本格調査を実施。墓碑は約250平方メートルの範囲内にあり、墓の形はキリシタン特有の長方形の石を地面に伏せた長墓(ながばか)ではなく、正方形の平面形態。取り締まりが厳しかった大村藩時代の墓制を受け継いだとみられる。
 調査は現状変更をしない「非破壊調査」で実施。詳細に記録するため、全ての墓碑の3次元の空間図面を作成し、遺物も全て位置記録を残した。調査内容は19日、五島文化協会が市内で開いた報告会で発表した。


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