うざい…いじめられた中3あり得ない卒業 校長は紛失、重大事態だが中3に聞き取りせず さらに驚きの数々が

蓮田市役所=埼玉県蓮田市黒浜

 埼玉県蓮田市の市立中学校で、女子生徒が中学1年時に受けたいじめが置き去りにされたまま、15日に卒業した。市と市教委はいじめ防止対策推進法に基づき、いじめを「重大事態」と認めたが、女子生徒から話を聞くことはなかった。市教委は22日、事案について議会に報告。生徒は「結局先生たちは理解しようとしない。中学生生活をやり直したい」と学校や市、市教委の対応に不満を述べた。

■蹴られ、制服荒らされ、黒板に落書き

 女子生徒は2020年4月に入学。複数の同級生から繰り返しいじめを受けた。生徒によると、面と向かって「うざい、いい気になるな」など言われた。生徒は2回にわたり蹴られ、バッグの制服を荒らされ、黒板に落書きをされ、上履きを隠されるなど、被害に遭ったという。

 「学校に近づくにつれ、胸が痛くなった」。12月ごろから欠席が目立ち、翌年1月、医療機関でいじめを原因とする起立性調節障害の診断を受けた。頭痛や吐き気、食欲不振が続き、症状は悪化した。不安障害の診断も受けた。

 それでも生徒は学校に向かった。教室に入れず、校内の相談室と仲の良い先輩がいた部活動に参加した。2年生になり、新学期を迎えたが、いじめは続いた。

 市教委の調査で、学校側が生徒に相談室を利用しないよう促したり、問題が解決するまで生徒が部活に参加しないよう保護者に求めていたことが分かった。新しい校長が、前任から引き継いだいじめを巡る書面を紛失していたことも判明した。

 女子生徒は「ベッドの上で悲しい、死にたいと思った。学校には敵しかいなかった」と当時を振り返る。保護者は生徒が自死について考えたことも学校に伝えた。

 女子生徒はその後卒業までフリースクールに通った。保護者が抗議し何とか部活動には参加した。女子生徒は中学校への登校にこだわった理由について、「しっかり中学生をやりたかった」と答えた。

 卒業式には参加したが、いじめは解決しなかった。同級生と仲良く卒業することを願ったがかなわなかった。生徒は「最後は(同級生の)誰かが声をかけてくれると期待したがなかった。良い卒業式にならなかった。もう一度中学生をやり直したい」と語った。

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