生活保護、引き下げ「取り消し」命令 受給する男性が涙「天国の仲間、喜んでいるはず」判決まで歩んだ8年

さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 生活保護費の基準額が引き下げられたのは憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害するとして、埼玉県内に住む生活保護受給者25人が国や県などを相手取り、引き下げ処分取り下げや国家賠償を求めた訴訟の判決が22日、さいたま地裁(倉沢守春裁判長)であった。倉沢裁判長は生活保護支給額の引き下げ処分について、一部原告を除いて取り消すよう命じた一方、国家賠償については棄却した。

 判決理由で倉沢裁判長は、ゆがみ調整については格差を是正するというゆがみ調整の趣旨と相いれない面があると指摘。この処理を行った具体的な理由も示されておらず、「厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱か濫用に当たる」と述べた。一方、デフレ調整の手法は一般的な統計学の方法に沿ったもので「妥当な処理と評価できる」などとした。

■涙ぐむ原告「勝てて良かった」

 29日午後、さいたま市浦和区内で開かれた記者会見で、原告の1人である見沼区の男性(56)は「勝てて良かった」と涙ぐんだ。統合失調症を患っている男性は18~19年前、障害年金を利用しながら働き始めたが、それだけでは生活が厳しく、生活保護を受給した。

 「障害があっても安心して生活ができる世の中であってほしい」との思いから原告になった男性。判決までに約8年かかった。「亡くなった仲間もいた。仲間も天国で喜んでくれていると思う」と語り、「政治的な解決でもいいので、早く決着がついてほしい」と話した。

 原告弁護団の小林哲彦弁護士は、勝訴であるとしつつ、「デフレ調整の問題を一切認めなかったのは残念な判決。判決の中身としては大きな問題があると言わざるを得ない」と言及。「控訴するかは原告らと相談して決めたい」とした。

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