「子ども予算」で見る危機意識「高岡発ニッポン再興」その63

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・高岡市は、「人口減少緊急事態宣言」を発動すべき。

・全国の自治体の児童福祉費の伸びは43%。対して高岡市は6%。

・市の予算が増加したのは好ましいが、人口減少に対してより危機感を抱くべき。

今の国会では「子ども予算」が焦点となっています。岸田総理は倍増にしたいと打ち出しています。全国の自治体はこぞって、力を入れています。明石市はこの10年で、子ども予算を2倍以上にし、話題となっています。

高岡市では、出生数は2年連続でわずかにプラスに転じていますが、それでも1000人ほどの低水準。我が会派、「高岡愛」では、人口減少緊急事態宣言を発動すべきだと主張しています。予算の使い方を大きく変更するには、危機感を共有すべきだと考えているからです。

そもそも「子ども予算」とは何でしょうか。一般に「児童福祉費」と呼ばれるものです。児童手当、保育所の整備、さらには子ども医療費の補助、出生祝い金などがあげられます。

数字を見れば、各自治体の本気度が見えます。日本経済新聞は先日、全国1741市町村の児童福祉費について、2021年度と2016年度を比較しました。

それによれば、全体の96%で増えています。ほとんどの自治体で5年前に比べて増やしているのは、無理もないことです。ただ、驚いたのは、増加率です。実に43%です。

幼児保育の無償化などなどが影響したそうですが、それでも、突出した伸びです。各市町村の力を入れ方は鮮明です。あの手この手で、政策を打ち出し、なかには、2倍、3倍に増やしたところもあります。

例えば、奈良県川上村児童福祉費を2.2倍にしました。目を引くのは、子どもへの祝い金です。生まれたとき、そして1歳、2歳の誕生日にそれぞれ10万円支給します。つまり、合計30万円の祝い金です。

また、高校生への月5000円の子育て応援手当などを導入しました。保育料も2歳児まで無償にしました。保育士は、国の配置基準の1.5倍を確保しました。出産から高校まで幅広く支援しています。

きっかけは、危機感でした。いわゆる2040年までに市町村の半分は消滅するといった増田リポートで、川上村はランキングでワースト2位になったのです。

衝撃を受けた栗山忠昭村長が少子化対策の強化に乗り出し、次々に政策を打ち出したのです。住まい、仕事、子育て・教育環境などを充実し、移住者を狙いました。その結果、14歳以下の数は、26%増え、72人となったのです。

さて高岡市。2021年度は109億6000万円。2016年度の103億4500万円に比べて、増えていますが、増加率は6%です。全国平均の43%に比べると、まだまだ低いですね。もともと高岡市では、児童福祉費のウェートが大きかったので、それほど増額にならなかったという指摘もあります。

ちなみに2022年度は、107億9800万円。前の年度に比べ1億6000万円ほど減っています。23度予算は、112億6000万円。増えた理由は、子どもの医療費助成の対象を18歳までに拡大したことや、保育士の就労支援を実施したためです。

子ども予算が増えているのは、好ましい展開ですが、私はもっと危機感をもたなければならないと思っています。

我が会派「高岡愛」では、嶋川武秀元市議が不妊治療の制度拡充を訴え、実現しましたが、まだまだ、手を緩めてはいけません。歴史上経験のない少子高齢化の波です。

今後も、子ども政策について、積極的に政策提言をしていきます。

トップ写真:赤ちゃんを高く抱いている両親 出典:maruco / Getty Images

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