高野寛×坂本美雨 高橋幸宏さんの音楽、思い出を語る「手を止めず、作り続けて前に進んでいく人」「みんなをつなぐムードメーカー」

アーティストの坂本美雨がお届けするTOKYO FMのラジオ番組「坂本美雨のディアフレンズ」(毎週月曜~木曜11:00~11:30)。3月16日(木)の放送は、ミュージシャン・高野寛さんがゲストに登場。この日の放送は「ディアフレンズ」特別編。2023年1月11日に逝去された高橋幸宏さんを偲んで、2人が敬愛する幸宏さんの音楽やファッション、人柄など、幸宏さんとの思い出を語り合いました。

坂本美雨、高野寛さん

◆音楽への道を導いてくれた存在

坂本:昨年9月に高野さんと、幸宏さんの音楽活動50周年記念ライブ「LOVE TOGETHER 愛こそすべて」について、この番組「ディアフレンズ」でもお話させていただきました。そのときは、高野さんの幸宏さんとの深いご縁についていろいろと伺いました。(幸宏さんが、高野さんの)デビューのきっかけをくれたんですよね。「歌ってみたほうがいいんじゃない?」と。

高野:そう。自分の歌に全然自信がなかったけれど、幸宏さんが背中を押してくれました。

坂本:それから幸宏さんが高野さんのプロデュースをされて、近年の音楽活動に至るまで、ずっと一緒に音楽をやってこられましたね。

高野:そうなんですよね。そんな関係で歩いてきたミュージシャンって、ほかにはいないので、(心に)ぽっかり穴があいた感じがいまだにあります。

坂本:そうですよね。高橋幸宏さんは2023年1月11日に他界されました。今日は高橋幸宏さんチルドレンの私たちが、幸宏さんの音楽を振り返ります。

細野晴臣さんは、追悼文に「人生は1冊の本のようだ」と書かれていました。幸宏さんという本のページを、一緒にめくっていきたいと思います。

◆Y.M.O.内でムードメーカーだった幸宏さん

坂本:幸宏さんは、本当にいろんなバンドをやられていて、次から次へとやりたいことがあったんだなと改めて思いました。

高野:本当に(音楽を)作り続けた人ですよね。

坂本:行き詰まっているところを見たことはありますか?

高野:音楽性について「どうしたらいいのかな」って話をするときはありましたが、そこで手を止めない人でしたね。とにかく作り続けて前に進んでいく。(僕も)それはすごく影響を受けているかもしれないですね。

坂本:先が見えなくても、とにかく手を止めない。そこからいつか開けてくる瞬間があるのかな。

高野:そうかもしれないですね。

坂本:(幸宏さんが)「曲が作れない」って言って、頭を抱えているところが想像できなくて(笑)。

高野:1人で集中するよりは、みんなでワイワイやるのが好きな人でもありました。バンドをたくさん組んでいたのも、そういう表れだったのかもしれないね。そういった意味では、すごくプロデューサー気質が強くて、みんなを適材適所に配置して、自分のイメージを形にしていくタイプでもあるのかも。

坂本:みんなをつなげる役……Y.M.O.でも、細野さんと坂本龍一とのバランスを取るような役どころでした。

高野:ムードメーカーですよね。

◆心に残り続ける幸宏さんからの言葉

坂本:高野さんにとって、個人的な幸宏さんの存在はどんなものでしたか?

高野:出会ってから最初の10年間ぐらいは、大ファンだったので本当に緊張していました。いつも気をつけしながらしゃべっている感じで(笑)。表面的には普通を装うのですが、やっぱり(幸宏さんを前にすると)同じようには話せないというか。

坂本:緊張が解け始めたきっかけはあったのでしょうか?

高野:自分が(音楽を)10年、15年と続けるようになって、“ミュージシャンとして、幸宏さんと同じ土俵に立ってやってきた”という気持ちに、だんだんとなれたからですね。(2007年に結成された幸宏さんたちとのバンド)pupaの頃に、やっと変な緊張がなくなった。随分と遅いけどね。

坂本:へええ!

高野:美雨さんも同じ印象だと思うんだけど、幸宏さんは優しいよね。

坂本:本当に優しいです。

高野:「相変わらずさ」という僕の曲があるんだけど、それを(幸宏さんが)すごく褒めてくれて。その頃だったと思うんだけど、「僕は高野くんのファンだから」と言ってくれたんですよ。あれはうれしかったなあ。

坂本:そういう、ご褒美のような言葉を不意にくれる人ですよね。

高野:最初は憧れの、雲の上にいる人だった幸宏さんから「ファンだから」と言ってもらえたときは、本当にジーンとしました。

◆いつも自分のファッションスタイルを貫いていた

坂本:幸宏さんはいつもおしゃれで、ご自身のファッションブランドも立ち上げていらっしゃって、ご自身はずっと革靴でドラムを叩いていましたね。

高野:そうそう(笑)。他のドラマーからしたら驚愕のエピソードだと思うんですよ。絶対に叩きにくいし。幸宏さんは、それを何十年も続けてきたので、「むしろ普通の靴だと叩きにくい」みたいなことも言っていましたね。革靴ってわりと滑るじゃない? だから、ちょっと滑らせ気味に踏んでいたのかなって気がする。

坂本:独自のスタイル! Y.M.O.も、ファッションの面で幸宏さんが引っ張っていましたが、あそこまで注目されたのは、その部分もありますよね。

高野:あとは、坂本さんのファーストアルバムのコーディネートをしたりとかね。

坂本:そうなんですか!?

高野:『千のナイフ』のジャケット写真は、幸宏さんの私物のアルマーニを貸してあげたって話ですよ!

坂本:知りませんでした(笑)!

高野:スタイリストが幸宏さんだったそうです。

坂本:父も信頼していたんですね。

高野:全幅の信頼を寄せていたんでしょうね。

坂本:pupa(のスタイリングも)も幸宏さんがされていたのですか?

高野:「ユニフォームを作ろう!」ということで、ファーストのときにアーミールックな感じで作りましたね。「やっぱりバンドはユニフォームだよな」と言っていました(笑)。それがY.M.O.みたいで、ちょっとうれしかったです。

坂本:幸宏さんはファッションの人だから形式美も大切にしていたと思うのですが、本当はもっと、幸宏さんのカッコつけていないところも見たいとは思っていました。

高野:幸宏さんは、“カッコつけていないところがない人”なんです。プライベートでも何度かご一緒させてもらって沖縄旅行とかも行ったことがあるのですが、そういうときは、“リゾートルック”のコーディネートをしている。きれいなデッキシューズを履いてね。

坂本:すごい! ジャージとかは持っていなかったんですかね?

高野:持っていないと思うよ。(どんなシーンのコーディネートでも)「幸宏さんだから」で、まったく無理なく成立していましたね。

*  

TOKYO FM / JFN38局ネットにて、高橋幸宏さんの追悼特別番組「サラヴァ、高橋幸宏~感謝を込めて音楽を」が放送されます(3月31日(金)23:00〜23:55/出演者:坂本美雨)。

<番組概要>
番組名:坂本美雨のディアフレンズ
放送エリア:TOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネット
放送日時:毎週月曜~木曜11:00~11:30
パーソナリティ:坂本美雨
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/dear/

© ジグノシステムジャパン株式会社