【寄稿】スマパチ直前(WEB版)/POKKA吉田

本稿を書いているのは3月14日。あまり定着した印象はないがホワイトデーの日でありマスク着用個人判断二日目。またこの日はガーシー議員の懲罰委員会の日でもある。参院懲罰委は72年ぶりに除名を全会一致で決定。翌15日の参院本会議で除名の見込みということだから、本稿が読まれている頃にはガーシー氏はただの暴露系演者に戻っているはずだ。

なんとなくだが、この数か月、ときの経過のはやさを感じることが多い。今からちょうど一年前の昨年3月15日はお台場ヒルトンで全日本遊技産業政治連盟の記者会見があり、連盟が木村よしおさんを応援することを正式に公表した。ここから昨年の参院選までは私は木村よしおさん応援を最優先にしての活動をしている。

選挙が終わり木村よしおさんが次々点で惜敗となったあとは、スマート遊技機を推進していく側として、これまた最優先にしつつ活動を続けてきた。先行して導入されたスマスロの結果に安堵しつつ、ユニット争奪戦で先行導入ができなかった店が多かったことに対して残念な気持ちももちつつ、年末までを過ごしていたように思う。

そして昨年から今年にかけてのこの一年間にホール店舗数がものすごく減少していることが徐々にわかっていく。昨年末で全日遊連加盟店舗数は6,857店舗。これはものすごく少ない数字という印象を持つ人が多いだろう。

設置台数がざっくりぱちんこ200万台、パチスロ120万台というのも強い印象を持つ数字だ。今は一年間に設置台数を何回転も入替するケースの方が珍しいくらいだろうから、母数の減少はやはり遊技機流通台数に影響することになる。特に需要が偏る傾向が強い現行規則機だから、特定機種の中古相場が暴騰し、それ以外の扱いが難しい、その特定機種をホールに導入する前に判断できるかどうか、判断できたとして台数を確保できるかどうか、という競争が今のホール間競争の実態だろう。

ところで、これはぱちんこの落ち幅が大きいからなのか、パチスロの復調幅が大きいからなのか、それは法人ごとのケースバイケースだろうが、昨年末から現在くらいまでの遊技機市場の現場感は、明らかに「パチスロ優位」「ぱちんこ苦戦」である。

ここで昨年のスマスロ導入前夜を振り返る。この頃、市場を牽引していた6.5号機は犬夜叉と新鬼武者。カバネリはそれに続き、という感じであった。まだ犬夜叉のインパクトが強く「スマスロはさらに性能優位なら大注目」という感じの需要の強さだったと思う。

実際にユニット争奪戦を経てスマスロ導入がはじまったとき、既に6.5号機市場は犬夜叉が失墜しカバネリが先頭を走っていた。これにジャグ系などのノーマル系があって、メダルのパチスロ市場はそれなりに安定でき、スマスロがさらに活況にしてくれる、というような期待感の12月頃だった。

そしてその頃のホールの期待はたぶんゴジエヴァだったように思う。導入直後は好調にも見えたが気が付けば勢いが失墜し、評価は確定的に「咆哮に劣る」ということになった。あの特徴的な筐体(特にハンドル)のまま、評価が分かれたことによって、ぱちんこ市場に対しての不安が少し増した気がしている。基本的に昨年は「咆哮とRe:ゼロ」という市場だった。それよりも古いユニコーンは善戦していたが2機種を超える新機種が一つもなく今年を迎えたわけだ。現在、ぱちんこの新台としては大海5の評価が高いことが目立つくらいであり、「P機に不安はない」「問題はパチスロの業績」というここ数年の暗黙の了解は、既になくなっているように思う。

だから、スマパチがはじまることは意味がある。まだ完全に不安を払拭できたとはいい難かったパチスロ島にとって、スマスロが間違いなく好影響をもたらし、6.5号機もカバネリ、あるいは沖ドキと、好調な機種が登場する可能性をはっきり感じることができるようになってきた。そこにスマスロで北斗、銭形、ゴブリン、ソードアートオンラインなどが控えており、メダルでもハーデスが控えている。今のところ大海5だけ(他に台頭しそうな気配が少しは…)、という新機種状況のぱちんこだからこそ、タイミングは重要になる。

聖闘士星矢とルパンは早い段階でアナウンスされていたが、そこに仕置人が続くことになった。伝え聞くところによると、スマスロの引き合いの強さもあり、スマパチの本格導入開始もあり、さらには2月後半から急激に注目されている仕置人があって、ユニットも遊技機もまだまだ需要に供給が追い付かない状況になっている、という話である。これは争奪戦に敗れてしまうところにはとても苦しい状況ではあるが、昨年のスマスロ導入後の6.5号機市場を振り返っても、市場が良くなってきている傾向は確認できる。スマパチが市場を牽引するような結果を見せてくれれば、P機市場も良化する、という想定もしやすくなるのではないだろうか。

まだまだ、低貸島や甘系、ノーマル系のスマート遊技機化にはものすごく長い時間を要することだろう。そもそもまだまだユニットも台数も取り合いのご時世である現在、「スマパチ初の甘デジ、羽根モノ」とか「スマパチ初のノーマル機」とか、販売するメーカーすら少ない(というか現在はない)わけである。いずれはスマート化してもらいたいこういうカテゴリだが、それにしても主流(AT機、349+c時短系)のカテゴリよりも型式数が圧倒的に少なくなるのは誰もが予想できることだ。

しかも、全国ほとんどの店にとって、低貸島や通常貸でも甘やノーマル系の島は「バラエティ化」か「海、ジャグ系」である。販売型式数が「とても多い」状態じゃなければバラエティ化は難しいし、海とジャグに至っては、現在P機、メダルの6号機としても普通に好調であるシリーズであり、まだスマート化していないわけだ。こういう機種「群」が大量にスマート化した「ときに」低貸島や甘系、ノーマル系の島のスマート化も実現できるだろう。それは今年か?と聴かれれば「否」となるし、それはかなりの年数を要するというのは誰もが想像できるのではないだろうか。

であれば、復調気配漂うパチスロのさらなる復調はもちろん、ぱちんこもスマパチきっかけでもいいので復調を目指し、スマート市場も既存機市場も活況を取り戻していくというシナリオを業界は目指したいところ。設置台数減少、つまり母数減少のトレンドである今、同じ集客力でも平均的集客力は強くなるはずである。市場良化に必要な「本当の集客力向上(遊技人口増、新規、スリープ層獲得増)」をどこかで伴えば、そこから本当に成長トレンドまで夢ではない。

ということをスマパチ登場前夜に考えている。かくいう私も脳梗塞を患って現在2か月弱。まだまだタイピングに不安はあるが、リハビリに励んで少しずつ左手の機能等を回復させている。「もう3月か」と感じることができるくらいには、回復しているような気がしている。しかし、これは本音であるが、私としては遊技機市場の回復の速度が私の回復の速度を上回ってほしいくらいである。

とまれ、スマパチ本格導入スタートで遊技機市場全体が良化する方向に向かってほしいと願う。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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