「顔」を動かせば気持ち良く振り切れてスライスも解消

スライスとダフリに悩む受講者のスイングをモーションキャプチャで分析

ゴルフスイングの基本としてよく耳にする“頭を動かさない”こと。しかし、頭を動かさないように意識すると、スイングがどんどん窮屈になって球は全然つかまらず、フォローでは左腕が詰まって気持ち良く振り抜けなくなります。それは、頭を動かさないという教えに、大きな誤解があるからです。今回は、そんな誤解をしてしまった受講者のスイングを、ワンポイントのみで一気に解消します。

今回の受講者は…

「最近ゴルフを始めたばかりですが、なかなか球がつかまらずに悩んでいます。頭を動かさないように意識したり、ダウンスイングでフェースが開かないように、早くリリースしようと努めていますが、スライスが直らないばかりか、大きくダフったりもしています…」(佐藤さん ゴルフ歴8カ月、平均スコア110前後)

インパクト時の軌道に対してフェース面が7度以上開いている

ドライバーのインパクトの瞬間のヘッド軌道は2度インサイドアウト、2度アッパブローで理想的です。初心者にありがちなアウトサイドイン軌道には陥っていませんね。しかし、このスイング軌道に対して、フェース面は6度から8度も開いていて、飛球線方向に対して、なんと80ydも右に曲がることがありました。フェースが大きく開く原因はどこにあるのでしょうか?

ハーフバックやトップでのフェースの開き具合は問題なし

インパクトでフェースが開く大半の原因は、テークバックの時点でフェースが大きく開いてしまうケースが多いものです。しかし佐藤さんの場合、フェースの開きがハーフバックで27度、トップで39度という数値で、プロと比較しても大きく開いているわけではありません。しかし、モーションキャプチャを使って左手首の角度のデータを追うことで、ようやくどこで開いているのかが分かりました。

手首の動きをデータ化。切り返し直後に左手首が大きく甲側に折れる(黒線=受講者、赤線=森田理香子プロ)

左手首のヒンジ角度(手のひらや甲側に動く角度)に注目すると、プロ(グラフの赤線)とは大きく異なる動きになっています。トップまではプロと同様に、グラフのプラス方向となる手のひら側へ手首が曲がって行きますが、切り返し直後から、いきなり甲側に折れ曲がってしまいます。左手首が甲側に折れることによって、フェースが大きく開いていたのです。プロのグラフに注目してほしいのですが、スイングを通じて左手首はインパクトまで手のひら側へと角度を増していて、甲側に大きく折れることは一度もありません。

“顔を動かす”だけでスイングが劇的に改善

顔が少し回って軸が保たれる森田理香子プロ(左)と、顔が動かず軸が左に傾く受講者(右)

では、なぜ切り返し直後に左手首が折れてしまうのでしょうか? その根本的な原因は、トップで左足に体重が乗ってしまうリバース体重にあります。プロのトップを見ると、アドレス時から頭が半個分くらい右に動いているように見えますが、首の後ろ側の軸がキープされています。一方、佐藤さんの場合は頭が全く動かず、首の後ろ側の軸が左に傾くことでトップに向かって逆体重になっていきます。

逆体重の影響で伸び上がり、左手首が甲側に折れてしまう

頭を動かさないようにすると、ほとんど全ての人は顔を正面に向けたまま動かさないようにしてしまいます。そうすると、テークバックで左肩が落ちて胸が回らず、トップでは左足体重になってしまうのです。ダウンスイングでは、逆に右肩を落とすようなスイングになり、ダフることが多くなるので、伸び上がってボールに合わせるようになります。佐藤さんのように切り返し直後に左手首が甲側に折れ曲がるのは珍しいケースですが、逆体重の反動や、左手首を折ってなんとか球をつかまえようとしていることによるものです。

帽子のつばを意識するだけですべてが解消

つまり、根本的な原因は左手首ではなく、体の回転が悪いことにあります。帽子を被ってテークバックしてみましょう。テークバックの初動で帽子のつばを少し右に向けることだけ意識してください。レッスンはそれだけです。帽子のつばを右に向けると、当然、顔が右を向き、首の後ろの軸が保たれて、胸がしっかりと回るようになります。逆体重が解消するので、切り返しの反動で左手首が甲側に折れる問題も、あっさり解消してしまいます。

顔を少し回すことで大きく実感できるのは、フォローで気持ちよく振り抜けることです。今までは、左右の肩が上下するだけで、胸がしっかりと回っていなかったため、フォローで腕の抜けるスペースがなく、詰まった感じがあったと思います。顔を回すだけで胸が十分に回り、これまでの気持ち悪さも一気に解消します。

それでは、最後に今回のレッスンを動画でおさらいしましょう。

動画:頭を動かさないとスライスする!?【サイエンスフィット】動画はオリジナルサイトでご覧ください

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