TX、茨城県内延伸 「土浦方面」採択 第三者委、知事に提言 効果や費用評価

大井川和彦知事(左)に提言書を手渡す第三者委員会の岡本直久委員長=県庁

つくばエクスプレス(TX)の茨城県内延伸候補を絞り込む第三者委員会は31日、4方面のうち「土浦方面」を延伸先とする提言書をまとめ、大井川和彦知事に提出した。提言書では延伸の効果や費用などから最善と評価。JR常磐線土浦駅への接続が最良として、東京圏からの新たな人流、県北・県央地域との経済圏形成につながると提言した。県はパブリックコメント(意見公募)を行い、6月末をめどに決定する。

県は2050年ごろの構想を示す総合計画の中で、県内TX延伸先として、①筑波山方面②水戸方面③茨城空港方面④土浦方面-の4方面案を明示。有識者による第三者委が昨年12月以降、需要や事業費の予測調査などを基に計4回の会合で協議してきた。

提言書では、土浦方面の延伸が「効果と費用のバランスなどを考慮して最善と判断した」と評価。他の3方面に比べ、最短でコストも最少となるほか、JR常磐線へ接続することで「茨城空港や水戸方面への延伸で期待される効果が得られる」とした。

東京圏からの人流創出の視点から、居住人口の増加や沿線開発、企業誘致による移住促進が期待できると指摘。常磐線との接続により、水戸駅からつくば駅までの時間短縮に大きな効果があるとし、両地域を一体化する大都市経済圏が形成できると評価した。

土浦方面に絞った上で、常磐線の接続先として、土浦駅と神立駅を比較した。概算事業費は神立駅の方が抑えられる一方、土浦駅の方が収支採算性などで優位性が認められると位置付けた。

提言を受け、大井川知事は「周辺自治体の理解は大きな課題で、一つ一つ克服していく」と説明。第三者委の委員長、岡本直久筑波大教授は「延伸の実現には(自動車から)公共交通志向の生活スタイルへの転換が求められる」と話した。

延伸候補の絞り込みは、県が本年度予算に調査検討事業費1800万円を初めて計上し、動き出した。

県によると、土浦駅に延伸した場合の概算事業費は、4方面の中で最も低い約1400億円。建設費を除いた採算性も4方面の中で最も高いものの年3億円の赤字となり、実現には課題も多い。

県交通政策課は「需要増や費用削減の方策について、さらに調査を進めたい」とした。

■TX県内延伸 提言書のポイント
・土浦方面は常磐線接続コストが最少。他方面の延伸効果も考慮すると、土浦以外での接続は現実的ではない。単年度収支も4方面の中で最良
・土浦方面で常磐線に接続すれば、茨城空港や水戸方面延伸に期待される効果も得られる
・水戸方面は既存公共交通の輸送人員に与える影響が極めて大きい
・県勢発展を考える上で茨城空港の将来性を考慮すべきだが、期待される将来の姿と現況とのギャップが大きい
・筑波山方面は沿線開発が期待できるが、常磐線のリダンダンシー(補完性)に寄与するとは言えず効果は限定的

© 株式会社茨城新聞社