「この10年間で日本ほど成長したチームはない」元ポルトガル代表フィーゴが、カタールW杯の森保Jを高評価。「もっと好きになった」【インタビュー後編】

元ポルトガル代表のルイス・フィーゴは、カタールW杯で日本代表を注目していたという。そしてグループリーグでドイツとスペインを下した戦いぶりを見て、「スター選手はいないが、グループの力が日本の武器だった。次のワールドアップでも決勝トーナメントに進むだろうね」と賛辞を贈っている。【インタビュー後編】

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――日本が良かったと言っていましたが、もう少し詳しく教えてくれますか?

日本はグループリーグで最高のパフォーマンスを見せた。フランスもイングランドいいプレーをしていたが、大会に新しい風をもたらしたのは日本だった。素晴らしい日本の選手たちを世界がよく知らなかったことは罪であるとも思ったね。私は日本の文化も食べ物も、サッカーも好きなんだ。

だから今回、いくつかのチームとともに、日本に注目していた。前半と後半でまるで違うサッカーを仕掛けてくる監督の戦略はとくに気に入ったよ。後半に見せる勝利への執念が心に響いた。まさに戦士だった。日本は今大会に確かな足跡を残したし、いまでは世界中のメディアもサッカーファンも日本の選手を知っているはずさ。

――日本代表で印象的だった選手はいますか?

何人もいるよ。キーパーのゴンダ(権田修一)はすごく良かった。それからキャプテンのヨシダ(吉田麻也)はポジショニングが素晴らしく、ベテランとしてチームをよく統率していたね。それからドウアン(堂安律)、マエダ(前田大然)、カマダ(鎌田大地)も気に入った。あまりプレー時間はなかったがミナミノ(南野拓実)もね。

スター選手はいないが、グループの力が日本の武器だった。次のワールドアップでも、決勝トーナメントに進むだろうね。この10年間で日本ほど成長を遂げたチームは他にないだろう。

――今大会でとくに気になった選手は?

オランダのコディ・ガクポ、イングランドのジュード・ベリンガム、マーカス・ラッシュフォードには明るい未来が待っているね。それからアメリカのティモシー・ウェア、アルゼンチンにもフリアン・アルバレスを筆頭に優秀な選手が何人もいた。

フランスはポール・ポグバ、エヌゴロ・カンテを欠いていたが、無名だった若手が多く活躍したね。ランダル・コロ・ミュアニ、それからリリアン・テュラムの息子マルキュス。彼らは大きなサプライズだった。

我らがポルトガルはゴンサロ・ラモス、ジョアン・フェリックス、ラファエウ・レオンと誰もが素晴らしかった。スペインはあまり先に進めなかったから、ペドリ、ガビ、アンス・ファティらの活躍を見る機会が少なかったのは残念だったな。

――サッカーの世界的な普及についてはどう考えていますか?

カタールでのワールドカップはとても大事なことを教えてくれた。サッカーはヨーロッパや南米だけのものではないということだ。アジアやアフリカの国も強くなっていて、サッカー界はその潮流を無視すべきではない。

今回の決勝はヨーロッパ対南米だったが、その形が変わる日も遠くないだろう。サッカーはより大きく世界中を巻き込んで広がっていっている、これは素晴らしいことだ。

――最後の質問です。親日家として、日本で仕事をしたいと思ったことはありますか?

ジーコのように、日本で仕事をしていた人たちから多くの話を聞いているよ。スぺイン、ブラジル以外で最も親しみを感じる国だし、さっきも言ったように、私は日本の文化や食が大好きなんだ。

だからいつか、私の経験が日本サッカーの力になればいいと思っている。ワールドカップでずっと応援していたし、もっと好きになったと言ってもいいだろうね。日本は世界のサッカーの中心にどんどん近づいてきている。この先のワールドカップでも、素晴らしい結果を出してほしいと願っているよ。

※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年1月19日号より転載・加筆。

インタビュー●リカルド・セティオン

翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】

リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ。ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとして中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガなどとの親交も厚い。スポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。

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