76年愛されたパン店が閉店 店主、高齢化で決意 那須

多くのファンが詰めかけたますやパン店

 【那須】終戦直後から76年間、地元をはじめ多くのファンに愛され続けた寺子丙のパン店「ますやパン店」が31日、惜しまれながら閉店した。コーヒーの生地を練り込んだパンにマーガリンとフロストシュガーが塗られた「マーブルパン」が有名で、県内外からたくさんの人が買い求めた。店は2代目店主の相馬信男(そうまのぶお)さん(73)と妻恵子(けいこ)さん(69)が切り盛りしてきたが、高齢化のため店を閉める決断をした。

 相馬さんの父博守(ひろし)さんが1947年に店を開いたのが始まり。その背中を見て育った相馬さんは高校卒業後、都内の製菓学校で勉強し、家業を手伝うようになった。ヒット商品のマーブルパンは、相馬さんが約45年前に考案。製粉会社の技術講習会で習ったマーブルパンを「焼き上がりも香りが出るようコーヒー粉にこだわり、パンになじむマーガリンも探した」と改良し、売り出した。

 高校生の頃からファンという高久甲、主婦花塚小百合(はなつかさゆり)さん(70)は「ここのパンはすごく懐かしい味で、他にない」と話す。

 「作ったパンを『おいしい』と食べてもらえるのが何よりうれしい」。そう語る相馬さんだったが、「自分も妻もいい歳。第二の人生を歩んでみたい」と、約55年間のパン職人人生に区切りを付けることにした。

 最終日となった31日は午前5時15分ごろから店の外に客が並びはじめ、正午ごろには全てのパンが売り切れた。

 客からたくさんの感謝の花束と手紙を受け取った相馬さんは「いろんな人の支えがあったからここまで来られた。一言では言い尽くせないけど、お客さんには長年愛してくれてありがとうと伝えたい」とファンに別れと感謝の思いを伝えた。

© 株式会社下野新聞社