SVBショックは本当に収束したのか−−投資家がリスクオフで取るべき戦略とは?

リスクオフとは、金融市場での投資家の態度や状況を表す言葉で、市場参加者が安全な資産に投資をシフトすることを指します。リスクオフの状況で投資家は、株式や高利回りの債券、新興市場通貨など高いリスクを伴う資産を避け、米国債や日本国債、金などより安全な資産に資金を移動させます。

リスクオフの動きは、株式市場や為替市場に大きな影響を与えることがあります。

先月3月10日(金)のシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻に始まった、金融システムへの懸念に伴う下落は「SVBショック」とも呼ばれていますが、株式が売られた一方で、「有事の安全資産」とも呼ばれる金や、銀行をはじめとした現行の金融システムへの不安からビットコインなどが買われてリスクオフの流れとなりました。

株式投資の観点から簡単にまとめると、リスクオフは株安、逆にリスクオンは株高の傾向が強いということです。

投資のリスクをチャンスに変えるためにすべきこととしては、リスクオフがなぜ起きたかを把握することと、株式投資であるならば、その際にチャンスがあると考えられるセクターや銘柄をおさえておくことが必要だと考えます。


リスクオフが起こる4つの要因

まずリスクオフが起こる理由は様々ですが、主な要因には以下が挙げられます。

(1)経済不安
世界経済や特定の国家経済が減速したり、不確実性が高まったりすると、投資家はリスクの高い資産から安全な資産へのシフトを始めます。

(2)政治的緊張
戦争、テロ事件、政治的不安定さなど、国際情勢や国内情勢が悪化すると、投資家はリスクを避ける傾向があります。

(3)金融危機
金融機関の破綻や債務危機が起こると、投資家は安全性の高い資産への投資を求めます。

(4)自然災害やパンデミック
地震、洪水、パンデミックなど、自然災害や大規模な病気の蔓延が経済活動に影響を与えると、投資家はリスクを避ける傾向があります。

リスクオフは、市場のリスク回避の度合いを把握する、重要な指標となります。では具体的に、リスクオフにつながるような、中長期的に株式投資のテーマとなるリスクがどのようなものがあるのか考えてみましょう。

まず、政治的緊張ともいえる地政学的リスクです。戦争や紛争、テロリズム、政治的不安定性など、国際情勢の変化が市場に影響を与えることがあります。地政学リスクが高まる際に上昇しやすいセクターとしては、一般的に防衛関連やゴールド関連の企業が挙げられます。

防衛関連企業は、地政学的な緊張が高まることで、防衛装備や軍事技術の需要が増加し、業績が上昇することが期待されるためです。航空機や艦船、兵器などの製造・開発を行っている企業などがそれにあたります。日本の防衛関連銘柄の代表格としては三菱重工業(7011)、細谷火工(4274)、石川製作所(6208)、豊和工業(6203)などが挙げられます。

ゴールド関連企業は、地政学的リスクが高まる際に、安全資産として金が買われることが一般的であり、金の価格が上昇することが予想されます。これにより金関連のETFや投資信託のほか、金の採掘や販売を行っている企業の業績や株価が上昇する可能性があります。ETFではSPDRゴールド・シェアーズ(1326)、NEXT FUNDS 金価格連動型上場投資信託(1328)などが挙げられます。

また経済不安や金融危機に関わるリスクは、投資家としてはおささえておかなければいけないものだといえるでしょう。

4つの相場サイクルの特徴

世界的な金利の上昇、通貨政策の変更、財政政策の変化など、政府や中央銀行の政策変更が市場に影響を与えることがあります。株式相場には金融相場、業績相場、逆金融相場、逆業績相場という主に4つの大きな相場局面のサイクルがあり、それをおささえておくことで、経済政策や金融政策の変化によるリスクを把握して投資に活かすことができます。

画像:筆者作成

金融相場、業績相場が株価が上昇しやすく、逆金融相場、逆業績相場は下落しやすいということを覚えておきましょう。

金融相場・業績相場

まず株価上昇局面といえる金融相場、業績相場について。

金融相場では、政府や中央銀行が金融緩和や公共投資などの対策を行うことでリスクオンの流れとなり、株式市場は全体として上昇しやすくなります。株式だけではなく、リスク資産は上昇しやすく、株式では特に景気敏感セクター、成長株、不動産セクター、自動車や建設業など設備投資を行いやすいサイクリカルなセクターといった、金利が低くなることで恩恵を受ける銘柄を中心に選ぶとよいのではないでしょうか。

業績相場は、政府や中央銀行の金融政策の効果が出てきて企業業績がよくなってくることから割高感が薄れ、株価がさらに上がる傾向となります。企業業績が主導する相場です。好景気となってきて、インフレが意識されるのもこの業績相場です。

逆金融相場・逆業績相場

そして株価下落局面といえる逆金融相場、逆業績相場について。

逆金融相場では、業績相場が続くとインフレやバブルの懸念などから、政府や中央銀行が利上げなど金融引き締め政策をします。直近では2022年にアメリカが引き締めを開始したため、逆金融相場入りしたと考えています。景気や企業業績の先行きが悪化することで、株価が下落することが想定される局面です。

逆業績相場では、政府や中央銀行の金融引き締め政策で企業業績が悪化し、景気も後退します。企業業績が悪く、景気も悪いため、投資家心理も冷え込んで株価も下がります。中長期的に見ると、優良な企業の株式や不動産株の、買いの仕込み場であるともいえるでしょう。

ほかに個別株では企業の業績悪化やスキャンダル、不正行為などが明るみに出ることもリスクといえます。該当企業の株価だけではなく、関連業界全体の株価に影響を与えることがあります。

長い目で見れば、新技術の登場や既存技術の陳腐化など、テクノロジーの変化で業界の勢力図が変化し、投資家が予想外のリターンや損失を被ることや、気候変動、環境破壊、人権問題、格差拡大などの問題が、企業の業績や評価に影響を与えることも考えられます。脱炭素関連銘柄などもチェックしておくとよいかもしれません。

加えて人口動態の変化、高齢化、少子化などが、経済成長や消費者行動に影響を与えることもあるでしょう。これは以前、2025年問題として関連銘柄も含めて解説させていただきました。

自然災害やパンデミックのリスクは、突発的に来るので読めないものですし、個人的にはまずは株式の中長期的な目線でのポジションは、すぐに手仕舞うこととしています。東日本大地震や新型コロナでも大きく下落をしましたが、まずはポジションをなくしてから、このリスクが長期化するのかどうか、どのような銘柄に好影響、悪影響があるのか考えて、改めて投資をするというのでもよいのではないでしょうか。

最後に、今回リスクオフを取り上げたのはSVBショックで「リスクオフ」という言葉が増えたからです。欧米の金融システムへの懸念が一段と後退したことで、足元では金利もVIX指数も落ち着いてきているようで、SVBショックは収束したように見えます。

ただSVBショックの株価の値動きが「パリバショック」に似ているという話題も出ているようです。パリバショックとは、2007年8月9日(木)に仏大手金融機関BNPパリバグループが、投資ファンドの解約を凍結することを発表したことに端を発した下落です。

これが後にリーマン・ブラザーズの経営破綻につながるわけですが、2007年の時点ではECBやFRBが危機対応をしたことでS&P 500は持ち直します。しかし、その約1年後の2008年9月15日(月)にリーマン・ブラザーズの破綻というショックが起き、世界的に株価が下落したことは皆様ご存じの通りです。

TradingViewより

同じようにSVBショックのあと、半年か1年くらい経って大きな下落が来る可能性があるかもしれないなと感じています。相場サイクルだと逆業績相場ともいえるなかで、これからリスクオフが来る可能性があることを心に留めておいていただくだけでも、皆様のお役に立つかもしれません。

TradingViewより

もしまた大きな株式市場のショックが来るようであれば、そこは大きな資産形成の買いのチャンスとなるかもしれませんね。

3月27日週「相場の値動き」おさらい

3月31日(金)の日経平均は、前日比258円55銭高の2万8,041円48銭と反発。2万8,000円台を回復してきました。為替が円安方向に動いたことも追い風となったようです。

先週末3月24日(金)の日経平均株価は2万7,385円25銭でしたので、週間では600円超の上昇となっています。シリコンバレー銀行(SVB)を米東部ノースカロライナ州地盤の銀行持ち株会社であるファースト・シチズンズ・バンクシェアーズグループが買収することで合意したと発表したことが買い安心感につながったようです。

ファースト・シチズンズはSVBの約720億ドルの資産を、165億ドルの割引価格で購入すると報じられています。米金融システム不安が後退したことで、3月10日(金)のSVBショック以前の相場、つまりインフレ関連指標と金融政策に市場の関心は戻っているようです。

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