県議選、9選挙区で「無風」 20人が無投票当選

和歌山県議選の選挙区〈総定数42〉

 和歌山県議選(14選挙区、定数42)は3月31日告示され、9選挙区で計20人(47.6%)が無投票当選した。現定数となった2011年以降、最多。有権者は投票機会が、当選者もアピールの場が失われ、嘆きの声も聞こえる。

 無投票になったのは田辺市(定数3)、日高郡(3)、東牟婁郡(2)、海南市・海草郡(3)、橋本市(3)、岩出市(2)、有田市(1)、伊都郡(1)、有田郡(2)の9選挙区。19年の前回選は7選挙区で14人(33.3%)だった。

 田辺市は2回連続の無投票。選挙事務所で祝福を受けた自民現職で4期目の鈴木太雄氏(52)は「みんなで得た勝利」とあいさつし、支援者と喜びを分かち合った。取材に対し「後援会活動を通じ、さまざまな要望を聞くとともに、政策を訴えてきた」と選挙のある、なしにかかわらず真摯(しんし)に活動してきたと話した。

 一度も審判を受けないまま2期目に入る自民現職の鈴木徳久氏(63)は「無投票だけに責任を感じるし、無言の重みがある」と語る。陣営関係者の男性(75)は「うれしい半面、4年間の仕事がどれだけ支持されているか分かりにくい。本人の励みという意味でも、選挙はある方がいい。県内で立候補者が少ないのは寂しい傾向だ」と話した。

 立憲現職で4期目の谷口和樹氏(51)は「県下全体で無投票が多い現状は変えていくべきだ。今後、人口も減少する。全県1区制も考えないといけない時期に来ている。若い人がもっと出やすくなるだろうし、定数削減もやりやすくなる」との考えを示した。

■政治離れ心配

 有権者もさまざまな思いを抱えている。同市湊の小売業女性(72)は「選挙がないと政治への関心が薄れる。以前、地方選挙の手伝いをしたことがあるが、いろいろなことに関心が生まれた。無投票は無関心を生み、さらに立候補者がいなくなる悪循環に陥るのではないか」と心配する。

 同市新庄町の飲食業男性(58)は「県政への疑問や意見をぶつける場でもある選挙がないのは残念。地元のためにという人がもっと出てきてもいい。ただ、市議選には多くの候補が出ており、県議が重要と思われていないからだとしたら問題はより深刻だ。県議はもっと活動を見せるべきだ」と指摘した。

■当選した皆さん

 (氏名、投票日現在の満年齢、党派、現新別、当選回数の順。党派は自=自民、立=立憲民主、維=日本維新の会の公認を示し、無=無所属)

【田辺市】定数3 鈴木 太雄 52 自現(4) 鈴木 徳久 63 自現(2) 谷口 和樹 51 立現(4)

【日高郡】定数3 冨安 民浩 75 自現(9) 坂本  登 76 自現(7) 玄素 彰人 49 自現(2)

【東牟婁郡】定数2 佐藤 武治 68 自現(2) 谷  洋一 74 自現(8)

【海南市・海草郡】定数3 藤山 将材 47 自現(6) 中西  徹 50 無現(2) 尾崎 要二 70 自現(10)

【橋本市】定数3 岩田 弘彦 63 自現(4) 中本 浩精 61 自現(4) 小西 政宏 36 維新(1)

【岩出市】定数2 北山 慎一 48 自現(2) 川畑 哲哉 45 自現(3)

【有田市】定数1 玉木 久登 58 自現(3)

【伊都郡】定数1 堀  龍雄 71 自現(3)

【有田郡】定数2 吉井 和視 71 自現(9) 山家 敏宏 49 自現(2)

■西牟婁、新宮は選挙戦

 全14選挙区で立候補者は49人。選挙戦となったのは西牟婁郡(定数2)、新宮市(1)、和歌山市(15)、紀の川市(3)、御坊市(1)の5選挙区。西牟婁郡は現職2、新顔1の三つどもえ、新宮市は現職、新顔の一騎打ちとなった。投開票は9日。

 西牟婁郡で立候補したのは新顔で自民推薦の三栖拓也氏(36)と自民現職の秋月史成氏(54)、共産現職の高田由一氏(59)。現職に新顔が挑む構図だが、党派では自民、共産で分け合っている議席を自民系で独占するか、共産が死守するかも争点となっている。

 新宮市は元新宮市議で無所属新顔の上田勝之氏(57)と自民現職の浜口太史氏(56)による一騎打ち。選挙戦は12年ぶり。

 御坊市は前回と同じ顔ぶれによる現職と元職の一騎打ち。現職が議席を死守するか、元職が返り咲くか注目されている。

 和歌山市は現職12、新顔6。紀の川市は現職2、新顔2で12年ぶりの選挙戦。

2011年以降の各選挙区の無投票状況

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