かつてリヴァプールやマンチェスター・シティでプレーした元ウェールズ代表FWクレイグ・ベラミー。
43歳になった彼は、ヴァンサン・コンパニ監督が率いる英2部バーンリーでアシスタントコーチを務めている。
そんなベラミーは今年2月に破産を宣告されたのだが、『Daily Mail』のインタビューで、赤裸々な告白を行った。
現在はマンチェスター北部の質素なアパートに暮らしているが、そこは彼の持家ではなく、バーンリーが彼のために借りた借家。破産者であるベラミーには財産はなく、車もない。
ギャンブルもやらなかった彼の唯一の贅沢は、高級時計のコレクションだったが、それもひとつ以外はもう手元にはない。
4つの高級時計は宝石商が保有していたはずだったが、その宝石商は事業清算で警察の証人保護プログラムに入り、連絡がとれないために回収不可能。
破産は不動産投資の失敗などのせいだが、シエラレオネで設立した学校、カーディフで支払った見知らぬ人の葬儀代、リオで資金援助したファヴェーラの子供たちの教育費、離婚調停、甘やかした友人、裏切った友人、彼を惑わして騙したアドバイザー、実家の損失など…その債務額は140万ポンド(2.3億円)にもなっていたという。
そんなベラミーは、カーディフの苛烈なエリアで育ち、非行を繰り返した後に15歳で家を出た。
その後、サッカー選手として成功すると、わけのわからない大金を稼ぐようになったが、財務管理を任せていた人物に“食いもの”にされたようだ。元アドバイザーのひとりは警察の捜査対処になったが、起訴は公益に反するとして3年後に不起訴が決まった。
この5~6年は死刑囚として生きてきた。ドアが開いて、 『今日がその日だ』と誰かから言われるのを待っていた。
何も楽しみがないような感覚さ。せっかく稼いだお金も、住宅ローンだって組めない。経済的に未来がない。
そのことに傷つく。何も持てない。何もかもがなくなってしまった。
人生は保留されたままだ。俺は脱税者ではないが、大甘だったので、HMRC(英歳入税関庁)からしばらくの間、未納税のせいで追われた。
今まで持っていたものはすべて奪われた。アドバイザーを間違えると、すべてが流出し、なくなっていく。
破産すれば安心という境地にまで至った。つまり、俺は再び生きることができる。
酒やギャンブルやドラッグに全財産を費やしたと思う人もいるだろう。そんなことはない。
パブには行かないし、幼い頃からドラッグに手を出したこともない。ギャンブルもしない。一度たりともね。俺にとっては意味不明なことさ。
でも、残念ながら、人に賭けたことはあるんだ。
選手たちに警告したい。全てをチェックしろ。アドバイザーたちが法に則っているかを。そうしていなければ、「ワイルドウエスト」だ。
セカンドオピニオンを得るのと同じように独立した人間だちに監査してもらえ。
俺は何もかもやってもらえる時代の選手として育った。全ての請求書。どこでプレーしていても、クラブが全部やってくれた。
それは間違っている。それだとあまりに脆弱になる。
(所属)クラブはいつかはなくなってしまうので、選手が自分で責任を持つことはいいことさ。
引退してもまだ若い。そうなった時に誰が金を払ってくれるのか。サバイバル術を学ばなくてはいけない。現実世界を生きなくてはいけない。
ノリッジでプレーし始めた若手時代、一番怖いのは金だった。いつも警戒していた。
大金はあるがキャリアはないという結末にはなりたくなかった。キャリアを続けられるなら、金なんてくれてやると。
金は悪だと思ってた。ハングリーさを失くすほどまで気をそらされる。トップになりたいという野心まで削がれると。
自分が追い求めたものは、誰もが成功と感じるものではなかった。そういうものは追い求めなかった。
いいものをもつことは素敵だが、意味はない。そのために目を覚ますことはない。いいものを追い求めるために起きるのではない。
自分が金を持っていると思ったことはないんだ。いいものを手にできたが、そこに興奮はなかった。
実際には(金は)人に利用される嫌なものだと感じていた。
どこに行っても、吹っ掛けられる。どこにいっても、ぼったくられる。
人々はこう思ってるのさ。『関係ねぇ、彼はたんまり持ってるんだから、気付かねぇだろ』ってね。歩く現金自動支払機だと思われてる。
助けを求められた時に断るのに罪悪感を感じていたので、断ることは一切しなかった。
いま彼らから呼び出されることはない。連絡もない。立ち直るのを助けた人間もいるし、一緒に暮らしてたやつもいる。で、そいつにぼったくられた。親友だったのにね。
いまじゃ正気とは思えないが、サッカー選手になるのに必死だったガキには、この考えは理にかなっているように思えた。
自分はサッカー選手のキャリアに集中して、金のことは信頼する人間に任せるってね。
俺はこう言っていたんだ。『俺がサッカーをやめる時まで、サッカーは俺に任せろ。他はあんたに任せる』と。で、それはうまくいかなかった。俺にとってはね。
サッカー選手はもっとよくものを知るべきだと言われるが、なぜもっとよく知らなければならないのか。
俺は15歳で学校を辞めた。自分は世間知らずでバカな人間だと思った。
酒もギャンブルもやりたくなかったが、もし、そうやってお金を失ったのなら、もっと自分に優しくなれるかもしれない。自分でやったことなら、すぐに修正しようと取りかかることができたはずさ。
そのせいで人を信じられない。誰かを信用したとたんに、こんなことになる。
心の底では、正しくないとわかっていたのに、それに立ち向かいたくなかった。どう向き合えばいいのかわからなかった。『もし、ここで間違っていたら、もうお手上げだ』と思っていた。
コーチとして何をやっているのかわかっているのは幸運だ。サッカー的には問題ない。
でも、もしそうでなかったらと想像してみてくれ。もし、サッカーに関わりたくないと思っていたなら。どこに行けばいいのか、何ができるのか、どんな人生を送れるのか。
暗い憂鬱な気分になって、自殺願望を持ち始めたら、その時が来る。
現役引退を楽しむべきだった。これまでの怪我や仕事は...何のために?信頼していた人間に、あんなことをされるためにか?
暗い考えがかなりよぎった。でも、自分で病気になっているのだから、怒りは捨てなければいけないと気づいた。
決して酒に溺れなかったこと、俺にとてもよくしてくれる親しい友人に恵まれたことには感謝している。
そこにヴァンサン(コンパニ)が突然現れた。俺はまだ健康状態が良くなかったので、他のことを引き受ける用意ができていなかった。
暗い考えや暗い瞬間がよぎると悪くなるときがある。準備ができていなかった、まずは自分自身を管理することを学ばなければいけなかったからね。
立ち上がって、仕事を続けなければならないことは分かっていた。
進み続け、働き続ければ、きっと大丈夫。仕事を続け、それに徹すれば、何か素晴らしいことが起こると。
俺はそれを信じ込んで、自分を洗脳した。いまバーンリーにいて、自分の好きなこと、得意なことを仕事にできていることが、どれだけ幸運なことなのかは分かっている。
そして、今、チームはリーグのトップに立っていて、俺は自分の仕事を愛している。すべての後に、素晴らしいことが起こっているんだ。
現在、バーンリーは2部で首位に立っている。
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ただ、コンパニはトッテナムの新監督候補になっており、彼がいなくなった場合、鬱を抱えているベラミーがどうなってしまうのかは少し心配だ。