「育休で収入が減る中始まるローン返済や増える教育費…マネープランをどうする?」30代夫婦の不安

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、35歳、公務員の女性。子どもが産まれて育休を取得予定の相談者。今後、収入が減る中で、住宅ローン返済や教育費の負担が増えることに不安を感じています。新NISA制度にも興味がありますが、マネープランをどうする? FPの高山一惠氏がお答えします。


35歳、公務員です。夫(36歳)も公務員です。子どもが産まれ、私が育休を取得するため、少なくとも今後2年は無収入となります。

貯蓄はある程度あるものの、これから住宅ローンの返済や、子育てが始まります。数年先に車の買い替えも控えています。来年からつみたてNISAの内容も変わるため興味を持っているのですが、投資に回せる金額はどのくらいか知りたいです。

どのようにマネープランを立てればよいでしょうか。

【相談者プロフィール】

・女性、35歳、公務員(年収600万ほど)

・夫、36歳、公務員(年収600万ほど) ・子ども1人

・住居の形態:持ち家(戸建て、東海地方)

・毎月の世帯の手取り金額:60万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:220万円

・毎月の世帯の支出の目安:約36万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万円

・食費:5万円

・水道光熱費:3万円

・保険料:4万円

・通信費:2万5,000円

・車両費:3万円

・お小遣い:6万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:15万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:180万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,600万円

・現在の投資総額:200万円

・現在の負債総額:住宅ローン4,000万円(変動金利0.5%、返済期間35年。借り入れしたばかり)

・退職金有あり。金額は不明

高山:ご相談ありがとうございます。ご夫婦で公務員として働かれていて、妻であるご相談者さんが育休を取得されるとのこと。貯蓄はある程度あるものの、育休を取得する間の2年間は無収入になるので、貯蓄や投資の計画、家計の状況について心配なご様子ですね。まずは、育休中の収入と支出の状況から確認していきましょう。

「育児休業手当金」はどらくらいもらえる?

ご相談者さんが育児休業を取得されるとのことですが、公務員の場合の育児休業について確認しておきましょう。

民間企業の場合、育休期間は原則として1年間としている企業が多いですが、公務員の場合は、3年間取得できることになっていますね。

公務員の方が育休を取得する場合、育休中のお給料は基本的に無給になります。ただし、所属している公務員共済組合から取得日数に応じて、「育児休業手当金」を受け取ることができます。

受け取れる金額は、育児休業開始から180日間は、1日につき標準報酬日額(標準報酬月額の1/22)の67%の金額が支給され、181日から365日までは、1日につき標準報酬日額(標準報酬月額の1/22)の50%の金額が支給されます。

基本的に育児手当が支給されるのは、育休後1年間で、その後は、無給になります。今回のご相談者さんのケースでも、2年間は、無給になるとのこと。

その後は、復職することを前提にすると、まずは、無収入となる2年間の家計の状況を把握しておくことが必要です。

育休中の収入と支出を確認

2年間の無収入の期間は、夫の収入のみで生活することになるため、プロフィールから夫の収入を確認していきましょう。

【夫の収入】
毎月の手取り収入:30万円
年間の手取りボーナス:110万円

続いて、生活費についても確認しましょう。
【生活費】
毎月の生活費:36万円
年間の臨時出費:30万円

記載はありませんが、家計の落とし穴として、冠婚葬祭費や家電の買い替え、帰省費用などの臨時出費があります。仮にここでは年間30万円としておきます。

また、現在の生活費を見直すこともあると思いますが、一方で、お子さんにかかる費用が増えることもあると思いますので、ひとまず、現状の生活費36万円で試算することにします。

そうすると、ざっくりとですが、1年間の夫の手取り収入が470万円、1年間の生活費が462万円になります。ですから、ご相談者さんが2年間無収入でも、生活費については夫の収入だけでやりくりできることになりますね。

2024年から拡充するNISA制度

前記の試算からすると、貯蓄をする余裕はほとんどないようです。ご相談者さんもこの点が気になっているのではないでしょうか。

また、2024年から新しいNISA制度がスタートする予定となっていますが、そちらも気になっているようですね。

2024年からNISA制度は、大幅に拡充されます。制度は恒久化され、非課税期間も無期限に。投資できる年間の上限金額も成長投資枠で年間240万円、つみたて投資枠で年間120万円になる予定です。新しいNISA制度では、成長投資枠、つみたて投資枠の両制度の併用もできますので、最大で年間360万円まで非課税で投資することができます。

新しいNISA制度は、一般の方が資産形成をする上ではぜひ活用していただきたい制度です。とはいえ、ご相談者さんが無収入である2年間は、家計に余裕がないので、投資をするとなると、現在の貯蓄から資金を捻出することになりそうですね。そこで、現在の貯蓄からどれくらいの金額を投資に回せるのかを把握することが大切です。

投資に回せる資金を把握するために、目的別にお金を分ける

どれくらいの金額を投資に回せるのかを把握するためには、お金を目的別に分けて考えることが必要です。

まず、お金を「日々出入りするお金」「3〜5年以内に使い道が決まっているお金」「10年以上使わない将来のためのお金」に分けてみましょう。

日々出入りするお金とは、もしもの場合に備えるお金や日常生活費です。もしもの場合に備えて、生活費の6カ月〜1年分は確保しておきましょう。生活費の1年分の貯蓄があると、急な病気やケガで働けなくなったり、リストラや転職など人生の転機が起こったりしてもあわてなくてすみます。ご相談者さんの場合、生活費の1年分以上の貯蓄ができているので安心ですね。

それぞれの分け方は?

「日々出入りするお金」は出し入れしやすい普通預金口座で貯めておくとよいでしょう。

次に、車の買い替えなど、「3〜5年以内に使い道が決まっているお金」についてです。実際に使うのは3〜5年後なので、使うまでに時間はありますが、使う時に元本が割れていると困りますから、普通預金よりも少し利回りがよく安全性が高いという視点で金融商品を探しましょう。定期預金や個人向け国債、個人向け社債などが選択肢としてあげられるでしょう。

教育資金や老後資金など、「10年以上使わない将来のためのお金」は、使うまでに時間の余裕があるので、元本が割れる可能性はあるけれど、大きく増える可能性がある投資商品で運用すると良いでしょう。

つまり、全体の貯蓄額から「日々出入りするお金」と「3年〜5年以内に使い道が決まっているお金」を差し引くと投資に回せる金額が見えてきます。

将来の家計の状況をイメージするために、教育資金・老後資金の把握を!

ご相談者さんがお仕事に復帰された後は、毎月の収入から貯蓄や投資に回す余裕もでてくると思いますが、どれくらいの金額を貯蓄や投資に回せるかは、「人生の3大資金」の影響を大きく受けます。

「人生の3大資金」とは、住宅資金・教育資金・老後資金のことですが、既に住宅は購入されているので、教育資金と老後資金について把握しておきましょう。

まず教育費についてです。出産時や子どもが小さいうちは、そんなにお金はかかりませんが、子どもが成長するにつれてお金のかかり方は加速します。

とはいえ、ひとくちにお金がかかるといっても、子どもの進学コースによってもかかるお金は全く違います。

参考までに幼稚園から大学まで、オール公立の場合には、子ども1人につき約1,000万円ですが、オール私立の場合には、子ども1人につき約2,500万円程度かかります。

教育費はどうやって貯めていけばよい?

教育費準備の考え方として、子どもが高校を卒業するまでの学費は家計からやりくりし、大学の学費は、子どもが18歳になるまでに、300〜500万円を準備するというのが基本です。

子どもが0歳から15歳まで支給される「児童手当」を使わずに貯めると、子どもが15歳の時に、約200万円貯まります。児童手当とは別に子どもが0歳の時から18歳まで毎月1万5,000円貯めると、324万円になります。児童手当と合計すると、524万円になりますので、大学の学費はクリアできます。

小学校は多くの家庭で公立に通うケースが多いようですが、仮に公立の小学校に通う場合には、大学の資金のために貯蓄しつつ、家計から教育費として月額2〜3万円程度の支出が目安になります。中学校、高校も子どもが公立に通う場合には、家計から教育費として月額3〜4万円程度の支出が目安になります。

中学校、高校と子どもが私立に通う場合には、大学の資金のために貯蓄しつつ、家計から教育費として月額10万円程度を捻出することができるかどうかが私立に通うことができるかどうかの目安になります。

ただし、一定の条件を満たせば、私立高校、公立高校どちらに進学する場合でも助成制度があります。子どもの進学にまつわる助成制度なども調べておくと良いでしょう。

老後資金についても考えておこう

老後資金はどうでしょう。

総務省家計調査報告2019年(2020年以降はコロナの影響があっため)のデータを用いて試算すると、老後の夫婦2人の生活費(持ち家の場合)は、公的年金だけでは賄えず、毎月3万3,000円程度不足するとのこと。

仮に90歳まで生きるとすると、現在は一般的には65歳から年金を受け取るので、老後は25年間あります。ですから、老後資金として準備しておきたい金額は、不足金額×12カ月×25年間で計算することができ、計算すると、990万円となります。

ただし、上記の不足金額は、持ち家を前提とした衣食住の基本生活費の金額なので、老後も賃貸で暮らすといったケースや旅行に行く、孫に小遣いをあげる、おいしいものを食べにいくといった、ゆとりある老後を送りたいと思った場合には、不足金額は10万円以上になります。加えて、高齢になると病気や介護になる可能性が高くなりますので、それらの費用も加味する必要があります。

とはいえ、ご夫婦ともに公務員なので、一般の方よりも年金が手厚い、退職金もきちんと支給されることが考えられます。お時間のある時に、年金定期便などを参考に、ご自身のケースで、老後の費用についても試算しておくと良いでしょう。

教育資金や老後資金といった大きな金額がかかる費用を把握しておくと、将来の家計の状況がイメージしやすくなります。お時間のある時に、ぜひ試算してみてくださいね。

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