ギタリスト・井上銘、生誕100周年を迎えたウェス・モンゴメリーの魅力を語る

モダン・ジャズ・ギターの巨匠ウェス・モンゴメリー(1923-1968)。今年3月6日に生誕100周年を迎え、彼が遺した名盤のリイシューやベスト・アルバム、ムック本のリリースが目白押しで、再評価の機運が高まっています。
わずか45年の短い生涯ながら、現代まで連なる後進ギタリストに影響を与え続けるその偉大な魅力を、人気ジャズ・ギタリストの井上銘さんが紹介します。

少しでもジャズ・ギターに興味を持った方なら誰しもが必ず耳にするであろう圧倒的なレジェンド。僕がジャズに興味を持った15歳の時にわりとすぐ巡り合ったのが、彼の代表作『Full House』です。

1960年代初頭にカリフォルニアのジャズクラブでライヴ録音されたこのアルバムは、当時のジャズの雰囲気が真空パックされたようなスモーキーな薫りで満ち溢れています。ポジティヴな空気で絶好調といった感じのバンド・サウンドと、熱く音楽を求める満員(Full House)のオーディエンスの声援から、この日の演奏はきっと本人たちにとっても特別な夜であったのだろうと想像することができます。

<YouTube:Full House (Live)

時代が変わり、テクノロジーが発展してもこういった生の音楽の『いい瞬間』というのは今も昔も変わらず普遍的に存在していて、その尊さに世界中のミュージシャンは生きる希望を見出しているのかもしれません。

ジャズはそれぞれのプレイヤーの瞬間的な判断の折り重ねで進んでいく側面の強い音楽であるので、ありのままの人となりや美意識が見えやすいところが面白いところだなと僕は思っています。

ウェス・モンゴメリーに関して言うと、僕は彼がいつもどこまでも自然体に演奏するところへ強い憧れを抱くのです。音楽をやればやるほど分かるような気がするのですが、音楽に対して自然体に向き合うというのはなかなか簡単なことではありません。そこには人間的な強さが必要になる気がするからです。自然体で力みがなく、仲間を活かすスペースと愛。自分自身を誇張しない自然体なウェスの音からは、彼がこの世界を深く理解している強い人であったのだろうと想像することができます。

柔らかくて温かい素朴な音色、どこまでメロディックなインプロヴィゼーション、ワクワクさせてくれる優しくて分厚いリズム、圧や壁を感じさせないアンサンブル・スタンス。彼がどういうことを美しいと思って生きていたのか。勝手に想像して今日も勝手に憧れるのです。

(文:井上 銘)
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■リリース情報

ウェス・モンゴメリー生誕100周年記念コレクション
リヴァーサイド~ヴァーヴ~A&Mに残したリーダー作を高音質UHQCD仕様で一挙リイシュー。
NOW ON SALE
各\1,980(tax in)
https://store.universal-music.co.jp/artist/wes-montgomery/

ザ・ウェス・モンゴメリー・トリオ+2 (UCCO-40050)
インクレディブル・ジャズ・ギター (UCCO-40051)
ムーヴィン・アロング+2 (UCCO-40052)
ソー・マッチ・ギター! (UCCO-40053)
フル・ハウス+3 (UCCO-40054)
ギター・オン・ザ・ゴー+2 (UCCO-40055)
フュージョン!+3 (UCCO-40056)
ボス・ギター+2 (UCCO-40057)
ポートレイト・オブ・ウェス+4 (UCCO-40058)
ムーヴィン・ウェス (UCCU-41011)
バンピン+3 (UCCU-41012)
ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー (UCCU-41013)
ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド (UCCU-41014)
テキーラ (UCCU-41015)
夢のカリフォルニア+1 (UCCU-41016)
ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー (UCCU-41017)
ジャスト・ウォーキン (UCCU-41018)
ア・デイ・イン・ザ・ライフ (UCCU-41019)
ダウン・ヒア・オン・ザ・グラウンド (UCCU-41020)
ロード・ソング (UCCU-41021)

『Guitar magazine Archives Vol.6 ウェス・モンゴメリー』
(リットーミュージック)

ギター・マガジン40年分のウェス・モンゴメリー記事をまとめた総集版ムック
2023年4月17日(月)発売 \3,000(税抜)
https://guitarmagazine.jp/?p=254545

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