【F1オーストラリアGP決勝の要点】レースペースに苦しみつつも“9番目”のマシンで奮闘した角田。今季初入賞も笑顔なし

 今季の角田裕毅(アルファタウリ)は開幕2戦ともに11位完走と、入賞に届かないレースが続いていた。そして今回の第3戦も、チェッカー1周前の時点で11番手。またもノーポイントで終わるかと思われた。ところが4番手カルロス・サインツ(フェラーリ)に土壇場で5秒ペナルティが科され、角田は10位に繰り上がり、今季初入賞を果たした。

 しかしレース直後の代表インタビューに英語で答える角田に、笑顔はなかった。

「赤旗がなければ、僕は5位でした。事故が起きたのは僕の後ろでしたし、ピエール(・ガスリー/アルピーヌ)を抜いて5番手に上がってました。なのにその順位が取り消された。悲しいとしかいえないです」

 レース終盤、ケビン・マグヌッセン(ハース)のクラッシュで56周目に赤旗中断。この時点で14番手だった角田は、リスタートを完璧に決め、前方のクラッシュも巧みにかわして、一気に5番手に浮上した。しかしアルピーヌ2台やランス・ストロール(アストンマーティン)の事故が重なり、再び赤旗中断に。リスタート前の順位に戻されたことで、角田の奮闘は水の泡となった。

「最終的に10位に入って、今季初ポイントが獲れた。チームのために、それはよかったと思います。でもすごく残念だし、欲求不満が溜まっていますね」

 角田がそこまで悔しがるのは、5位を逃したせいだけではない。レースペースが、とにかく遅すぎたのだ。前日の予選Q2ではランダムな重量測定に引っかかり、予定した回数のアタックをこなせなかった。にもかかわらず12番グリッドを獲得。しかし決勝レースでは、ライバルたちの速さにまったく対抗できなかった。

 12周目にサインツ、その2周後にランド・ノリス(マクラーレン)、23周目にセルジオ・ペレス(レッドブル)、27周目にエステバン・オコン(アルピーヌ)、そして29周目にオスカー・ピアストリ(マクラーレン)に抜かれていったのは、マシンの性能差からすれば仕方がない。しかしこの時点で既にハードタイヤは限界だったようで、アルファロメオの周冠宇、ハースのマグヌッセンにもなすすべもなく抜かれていって14番手まで後退した。レース終盤の波乱がなければ、ポイント獲得は絶望的な状況だった。

2023年F1第3戦オーストラリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 この週末、アルファタウリはフロア下のダウンフォース増大を狙ったアップデートを投入した。しかし角田はフィーリングが今ひとつだったのか、予選以降は旧型に戻していた。一方でチームメイトのニック・デ・フリースは、改良仕様で3日間を通した。しかし予選、レースともに、今回も角田を凌ぐことはできなかった。

 両ドライバーがフリー走行でレースを見据えたロングランがほとんどできなかったこと、そしてデ・フリースのF1での経験の少なさ、初めてのアルバートパークだったことを差し引いても、このアップデートは残念ながら期待したほどの効果は発揮しなかったと言えるのではないか。開幕3戦を終えて、アルファタウリはウイリアムズと並ぶ1ポイントしか獲得できず、選手権9位に沈んでいる。その結果は、チームの戦闘力をほぼ反映したものと言えるだろう。

2023年F1第3戦オーストラリアGP ニック・デ・フリース(アルファタウリ)

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