社説:電力カルテル 不祥事やまぬ関電は猛省を

 公益企業として違法行為の責任は重大である。とりわけ不祥事がやまない関西電力に向けた国民の目は極めて厳しい。企業体質を根本から改めなければ、電気料金の値上げに理解など得られまい。

 関西、中部、中国、九州の電力大手4社がカルテルを結んでいたと公正取引委員会が認定した。

 2018~20年に関西電力が3社と、それぞれ相手の区域内でのオフィスビルや工場など大口顧客に対する営業を制限することなどで合意し、独占禁止法に違反したという。

 裏で手を結び、競争を骨抜きにするのは、電力自由化の趣旨を踏みにじるものだ。電気料金の高止まりを招いたとみられ、消費者に対する裏切り以外の何物でもない。

 中部、中国、九州の3社に、過去最高となる総額約1010億円の課徴金納付を命じたのは当然である。だが中心的な役割を担った関電は処分を免れた。独禁法の課徴金減免制度に基づき、自主的な違反申告が認められたためという。

 関電は、当時の首脳陣で決定し、副社長だった森本孝前社長がカルテルを持ちかけたとしている。「主犯」が不問に付されるのはまったく不公平だ。

 森望社長は会見で「販売電力量や販売価格の最適化」が目的だったとも述べたが、あまりにも身勝手な理由であり、通じるはずがない。地域独占にしがみつく態度は、公益事業者としての自覚を疑う。

 中国電は命令の取り消しを求めて提訴を検討する一方で、社長は6月の株主総会を経て引責辞任すると発表した。課徴金がなくとも、違法行為を主導した関電の責任は免れない。

 相次ぐ不祥事で同社の信頼は地に落ちている。19年に役員らの金品受領問題が発覚し、ガバナンス(企業統治)改革に取り組むとしていた。

 それなのにカルテルだけでなく、競争相手である新電力の一般家庭契約者の氏名や電話番号を不正に閲覧し、営業に利用していたことも判明している。

 公正な競争などはなから眼中にないと思われても仕方ない。法令順守を欠いた企業体質をどう改めるのか。第三者の視点を入れて経営責任の明確化と再発防止に取り組むべきだ。

 燃料費の高騰を理由に、大手の多くは家庭向け電気料金の値上げ申請を進めている。関電はこれとは別に、送配電網の利用料に当たる「託送料金」が4月から上昇するのを受け、家庭向けを含め全ての電気料金メニューを値上げすると発表している。

 だが利用者の負担増を求める前に、これだけ不正を繰り返している企業が、公正で適切な料金設定に向けた経営努力にきちんと取り組んでいるのか、大いに疑問だ。国は値上げ申請の扱いについて、厳しい姿勢で臨まなくてはならない。

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