隔離の歴史 宿泊研修で深く学んで 長島愛生園「むつみ交流館」開館

ハンセン病関連書籍などが置かれた「むつみ交流館」の研修室

 瀬戸内市の国立ハンセン病療養所・長島愛生園は4日、ハンセン病学習などで訪れる学生や社会人らを対象にした宿泊施設「むつみ交流館」を開館した。研修用の宿泊施設はこれまでなく、長時間滞在してもらおうと新たに整備。園関係者らが現地で記念式典を開き、「隔離政策時代の遺構などを回ってもらい、人権侵害の歴史を深く学んでほしい」などと期待を寄せた。

 交流館は、病棟を改装した鉄筋コンクリート2階延べ約2200平方メートル。定員は70人で、ベッドなどを備えた宿泊用の23室に加え、ハンセン病関連書籍などがある研修室、会議室を用意した。入所者と市民の交流を目的とした「社会交流会館」として整備した。

 10人以上の団体が対象で2週間前までに予約が必要。利用は無料で、食事は各自で用意する。

 愛生園は園内の歴史館で隔離の歴史を物語る遺構を来園者に案内しているが、日帰りの見学コースには入っていないものもある。約20人が出席した開館記念式典で、山本典良園長は「隔離政策下で入所者らが通った高校跡など若い人に見学してほしい場所は多い。交流館を利用し回ってもらいたい」と話した。

 愛生園の入所者数は、国の隔離政策が廃止された1996年の668人(12月末時点)から97人(今月1日時点)に減少し、平均年齢も88.3歳。入所者が園外に出向く講演は年々難しくなってきている。入所者自治会の中尾伸治会長(88)は「泊まってもらうことで、隔離の島で私たちがどう生きてきたか想像してもらえれば」と語った。

「むつみ交流館」の前でテープカットする関係者ら
ベッドなどが置かれ、来園者が宿泊できる「むつみ交流館」の部屋の一つ
「むつみ交流館」の会議室

© 株式会社山陽新聞社