国益確保のためのツールか人道支援か? 政府開発援助(ODA)の今後のあり方を問う

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、今後の“ODAのあり方”について視聴者を交えて議論しました。

◆ODAの大綱が改定…ODAは国益確保のためのツール

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは、主に発展途上国を対象に政府がインフラ整備や人道支援、環境保護などの活動を実施する"政府開発援助(ODA)のあり方”です。

ODAの指針を定めた「開発協力大綱」の改定に向け、会合を重ねてきた有識者懇談会の報告書が林外務大臣に提出されました。そこではODAを「国益確保のため外交の最も重要なツールのひとつ」と位置付けていて、予算は10年間という目標を設定した上で倍増させるよう提言。林大臣は「ODAをしっかり拡充し外交力強化を実現したい」としていますが、一方で本来の目的以外の用途でODAが使われることもあり、課題は山積しています。

キャスターの堀潤は、今回の改定により既存のODAのイメージは「変化していきそう」と推測。ODAの軍事化については以前から議論され、例えば日本が供与したものが相手国で適切に使われているのか疑問視されていましたが「今回は適切だったかではなく、ある意味、明確に意図を持ち、安全保障戦略のひとつとして活用されていくことが大きな変化」と堀。現状としては、日本にとってODAが必要な外交ツールのひとつであることも事実です。

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、ODAについて、まずやらなければいけないことは「対中国に対するODAの総括だと思う。そこから始まる」と話します。日本は過去40年間、中国に対してODAを行い、全ての事業が終了したのは2022年3月。「この総括をしない限りは、ODAが日本のためにどうあるべきかは、出てこない」と主張。

この意見に、堀は「重要な指摘」と大きく頷き、その上でODAに関しては他国で開発事業を行う際に誰が担うのかも大きなポイントと指摘。というのも、そこには多くの政治家や企業が関わり、大金が動くだけにビジネスチャンスでもあるからで「その開発が純粋に人道支援というだけでは語れるものではないだけに、そのありようは検証する必要がある」と加えます。

臨床心理士のみたらし加奈さんは、「外交は見せ方が大事」と自身の考えを述べます。今回の報告書ではODAを"国益確保のためのツール”と位置付けしていますが、「それを表立って言うか、あくまで人道支援の一環だと見せるかで国際社会のなかでのニュアンスも変わってくる」と案じます。

有識者報告書を読み込んだという株式会社トーチリレー代表取締役の神保拓也さんは、その報告書について「同時に、特に、並びにのオンパレード」と指摘。

そして、ODA自体に意義があるとしつつ、振り返りまでできていない日本の現状を憂慮。「経営者の腕の見せ所は限られたリソース、予算をどう分配し、そのなかでいかに効果まで出し、振り返りまでやり切るかだとすると、(日本は)結果的に振り返りができていない。対中の件も含め、やりっぱなしになっていることが全ての問題の元凶になっているのではないか」と続けると、堀は「確かにPDCAサイクルが回らない限り、本当に日本が目指している国益に鑑みた拠出の仕方というのは、成功しているのかどうかわからない」と同意します。

大空さんは、今回の報告書について「これはあくまで報告書であり、大綱ではない」と前置き、そのなかに「ロジックモデルを作るべき」と書かれていることを評します。「これまでは事業を客観的に評価するという当たり前のことをやっていなかった。少なくともインプットからアウトプットまでロジックモデルを構築していくということが今回は書かれてあり、そこは大きな一歩だと思う」と大空さん。

番組のTwitterスペースに参加していた視聴者からは「"国益のため”と大っぴらに語るのは、逆効果だと思う」、「対中ODAの総括は必要。おそらく当時は必要だったと思うが、かの国の現状を見ていると、結局ODAが今の状況を作り出した一因になっていると思う」といった意見がありました。

◆ODAの軍事化、あくまで日本は非軍事的であるべきか?

日本のODAには課題も多く、例えば2021年の実績は1兆9,339億円でしたが、国民総所得(GNI)比は国際目標の0.7%に対し、日本は0.34%。また、冒頭で堀が懸念していたように、他国軍への支援については2015年から非軍事目的に限り、軍への支援を容認となっていたものの、2022年9月、ミャンマーで日本が供与した旅客船を国軍兵士の移動・物資輸送に使用。ミャンマー国軍も軍事利用を認めています。

これに対し、みたらしさんは「"非軍事目的に限り”というニュアンスは今後もスタンスとして見せ続けてほしい」と切望。日本が供与したものが相手国で軍事利用されているのかどうか確認することは国際情勢などにより困難なことがあるのは理解しつつも「日本はあくまで"非軍事目的に限り”と示し続けることが大事だと思う」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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