【連載コラム】第6回:カージナルスの若手野手陣の層の厚さは球界屈指 IL入りのヌートバーは大ピンチ!?

10日間の故障者リスト入りしているカージナルス・ヌートバー @Getty Images

日本時間3月31日にMLBの2023年レギュラーシーズンが開幕しました。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンが優勝した直後ということもあり、大谷翔平(エンゼルス)ら日本人選手だけではなく、侍ジャパンで不動のリードオフマンを務めた「タツジ」ことラーズ・ヌートバー(カージナルス)にも大きな注目が集まっていますが、そのヌートバーは開幕戦の8回裏、四球で出塁したあとにポール・ゴールドシュミットの二塁打で三塁へ滑り込んだ際に左手親指を負傷(突き指)。開幕戦こそ途中交代することなくフル出場しましたが、続く2試合を欠場し、バットを振るとき以上にグラブをつけて捕球するときに痛みがあるということで、開幕4戦目の試合前に10日間の故障者リスト入りが発表されました。

ヌートバーの1日も早い回復を願いたいところですが、ヌートバーのチーム内での立ち位置を考えると、離脱が長引くようであれば「大ピンチ」と言えます。メジャー3年目、現在25歳のヌートバーはカージナルスでは「今後のさらなる成長が期待される若手レギュラー候補の1人」に過ぎないからです。しかもヌートバーと同世代、あるいはヌートバーより年下の若手レギュラー候補が多数おり、彼らもヌートバー以上に猛アピールを見せています。ヌートバーの離脱は短期間で済む見込みですが、故障者リスト入りしているあいだにチーム内での序列が下がるということも十分に考えられます。

レギュラー争いでも一歩抜け出ている 左)ブレンダン・ドノバン、右)ジョーダン・ウォーカー @Getty Images

さて、まずはカージナルスの野手事情を簡単に整理しておきましょう。不動のレギュラーと言えるのは捕手ウィルソン・コントレラス、一塁ゴールドシュミット、三塁ノーラン・アレナド、遊撃トミー・エドマンの4人。二塁、左翼、中堅、右翼、DHの5ポジションを20~27歳の若手選手たちが争うような状況となっています。昨季新人王投票3位、ユーティリティ部門でゴールドグラブ賞を受賞したブレンダン・ドノバン(26歳)と開幕スタメンに抜擢された超有望株のジョーダン・ウォーカー(20歳)は若手レギュラー候補のなかでも起用の優先度が高いとみられ、実質的には外野2枠+DHの合計3枠をヌートバー、タイラー・オニール(27歳)、ディラン・カールソン(24歳)、アレック・バーレソン(24歳)、ノーラン・ゴーマン(22歳)の5人が争う状況です。

ヌートバーのライバル 左からタイラー・オニール、ディラン・カールソン、アレック・バーレソン、ノーラン・ゴーマン @Getty Images

実績的には2020~21年に左翼手として2年連続でゴールドグラブ賞を受賞し、2021年に34本塁打を放ったオニールが頭一つ抜けており、コンディションに問題がなければ、正中堅手として起用されることになるでしょう。また、昨季デビューしたゴーマンはオフのスイング改良が実り、開幕カード3試合は打率.444、2本塁打、6打点、OPS1.726と絶好調。今のところ、優先的にDHのレギュラーとして起用される見込みです。よって、ヌートバーの当面のライバルはカールソンとバーレソンの2人ということになります。

カールソンはもともと球団ナンバーワン有望株として期待されていた選手。2020年のポストシーズンで4番を打ち、2021年は新人王投票3位に入りましたが、昨季の不振で評価を落としてしまいました。一方、バーレソンは昨季AAA級メンフィスで打率.331、20本塁打、87打点、OPS.904の好成績を残し、インターナショナル・リーグの首位打者に輝いた好打者。開幕2戦目からヌートバーの代役としてスタメンに抜擢され、開幕3戦目には3本の長打(二塁打2+本塁打1)を放つ猛アピールを見せました。守備走塁面ではヌートバーに軍配が上がりますが、バーレソンが打撃面で好調を維持すれば、間違いなくヌートバーにとって強力なライバルとなるでしょう。

このように、2008年から15年連続レギュラーシーズン勝ち越し、うちポストシーズン進出10度という安定した強さを誇るカージナルスでは、毎年のように熾烈なポジション争いが繰り広げられています。2026年のWBCでヌートバーが1ランクも2ランクも上の選手になって侍ジャパンに戻ってくるためには、この競争を勝ち抜くことが必要不可欠。まずは痛めた左手親指の状態を万全にすることが第一ですが、戦列復帰後のヌートバーの頑張りに期待したいと思います。

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