かきがらアグリ 野菜産地でじわり JAグループ岡山 農業活性化推進

レンコンの植え付けを前にカキ殻の土壌改良材を水田にまいて耕す十河さん=3月10日、岡山市南区西七区

 瀬戸内海のカキ殻を土作りに活用するJAグループ岡山の循環型農業プロジェクト「瀬戸内かきがらアグリ」が、岡山県内の野菜産地でじわりと広がっている。2016年に「里海米」としてコメを売り出し、SDGs(持続可能な開発目標)の実現を意識したストーリー性からヒット商品になった岡山発の“里海ブランド”。野菜にも拡大することで、県産農産物の存在感を高め、地域農業の活性化を目指す。

 かきがらアグリは、主に廃棄物として処理されているカキ殻を土壌改良材として活用し、農産物の売り上げの一部を魚のすみかとなるアマモ場の再生活動に充てる取り組み。18年のコメの生産調整(減反)廃止に伴う産地間競争の激化を見据え、JAグループがコメで事業化した。社会貢献への意識が高い外食、流通業者からの引き合いが強く、供給が追いついていない状態という。

 「里海米」のヒットを受け、JAグループは野菜産地にも協力を呼びかけた。推進母体の「瀬戸内かきがらアグリ推進協議会」の事務局・JA全農おかやまによると、岡山市南区興除地区の千両ナス、同藤田地区のリーフレタスとサニーレタス、矢掛町のタマネギなど6品目に広がっている。

 このうち、岡山市のJA岡山備南蓮根(れんこん)部会(4戸、5.5ヘクタール)は昨年に着手した。酸性に傾きがちな土壌の中和に、貝殻由来の改良材を使用していたこともあり「抵抗感なく取り組めている」と部会長の十河勇輝さん(36)。

 カキ殻にはカルシウムやミネラルが含まれ、JAグループが水稲で行った試験栽培では根張りが良くなり、倒伏被害を軽減させる効果などが確認されている。レンコンへの効果を見極める必要はあるが、十河さんは「産地として瀬戸内海の環境保全に役立てるメリットもある」と話す。

 赤磐市のJA晴れの国岡山山陽エンダイブ部会(18戸、2.5ヘクタール)では、今年から試験的に導入。土壌診断をしながら慎重に進めており、同JAの担当者は「結果が良ければ来年以降も産地を挙げて取り組みたい」とする。

 ただ、「里海野菜」のブランド化に向けた動きはこれからで、出荷もごくわずかしかない。全農おかやまは「将来的にはパッケージの統一や、市場やスーパーに価値を認めてもらうためのPR活動を行うことを検討している。コメと同様、里海野菜というSDGsを切り口にしたジャンルを切り開きたい」としている。

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