「しがらみ」と「馴れ合い」政治から決別・・・投票率を上げよう「高岡発ニッポン再興」その66

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・現在統一地方選挙の真っ只中、4月9日は投開票日。

・ある元県議は、政治家と支援者の持ちつ持たれつの関係は「不徳の共有」と新聞に投稿。

・政治の不徳を正すためにも投票率を向上させることが必要。

統一地方選挙の真っ只中、今月3日付の日本経済新聞に、松島完さんという高校教師(元地方議員)が投稿していました。この方は元長崎県議。この文章を読み、私は膝を打ちました。

コラムは「不徳の共有に波紋を起こそう」というタイトルですが、投票率のアップを呼び掛けています。まずは、生々しい記述がされています。

―我が子を公務員にしたい。我が社のために公共事業を受注したい。「何とかなりませんか」と言われると、体内がコンクリートになった気がした。県議としての11年間でたくさんの相談と向き合った。もちろん、違法行為はできない。だが、クロに近い口利きを依頼されたことは一度や二度ではない。

私は市議になって1年半。一度もそんな依頼を受けていませんが、長く県議をやると、いろいろな口利きの誘いがあるようですね。

松島さんはその上で、こう指摘します。

―法は、単純にシロかクロかで割り切れない面がある。自身の欲を満たしたい支援者と、票が欲しい政治家が、灰色の湯につかる。政治家を灰色の不徳の湯に案内するのは政治家ではない。支援者なのである。

こうした政治家と支援者の持ちつ持たれつの関係を、松島さんは「政治の不徳」「不徳の共有」と表現しています。

こうした地方政治は珍しいことではないようです。元鳥取県知事の片山善博さんは、著書「片山善博の自治体自立塾」(日本経済新聞出版社)で、知事就任直後、県議会議員の「口利き」の実態を伝えています。

県会議員が次々に知事室を訪ね、県職員採用試験受験者の名前が書いてある紙を手渡し、「よろしく」と言ってきました。人事課長によれば、「それなりの配慮」をしていたと言います。

その後、片山さんは他の部局に聞いてみると、県会議員の口利きや働きかけは多くありました。土木建設業者の格付けだったり、社会福祉法人向けの補助金だったり。「それなりの配慮」がなされていたようです。

そこで、片山さんは、口利き退治に乗り出しました。口利き案件の処理方法を決めたのです。具体的には、持ち込まれた場合、パソコン上で、文書化します。そして、その文書については、庁内ネットを通じて、上司に報告します。情報公開請求がされれば、その文書は公開の対象になります。

その結果、筋の悪い口利きはなくなり、「通学路を改修してほしいなど、筋のいい口利きが目立つようになった」としています。

透明性が公正さを担保するのです。私は青臭いと言われても、公正さこそが、地方自治の根幹だと思っています。知事や市長はもちろん、県議や市議も、政治家である限り、公正さを追求すべきです。

さて、4月9日は、富山県議会選挙の投開票日です。冒頭にご紹介した松島さんはこう指摘します。

政治家は現在、特定の密なつながりのもとに成り立つ傾向にある。これを広く薄いつながりに変えることができれば、不徳の共有に波紋を起こせる。そのためにも投票率を上げたい。

政治家は特定の人とつながっているケースが多いが、これを広く、薄いつながりに変えることが大事だとして、松島さんは投票率を上げたいと、訴えています。

松島さんがいう「不徳の共有」とは、つまり、「しがらみ」と「馴れ合い」の政治です。決別するためには、投票率を上げる必要があります。投票率こそが今回の県議選の最大の争点ですね。

トップ写真:イメージ 出典:Photo by maruco / Getty Images

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